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KANA-BOONが若手バンド勢から頭一つ抜けた理由 古賀隼斗のギター演奏から読み解く

2015年08月07日 18:31  リアルサウンド

リアルサウンド

KANA-BOON

 2014年に躍進した若手バンドの代表的存在であり、2015年になった今もステップアップを続けるKANA-BOONが、8月7日の『ミュージックステーション』に出演する。


 同バンドはこれまでも3度番組に出演し、「フルドライブ」「シルエット」「なんでもねだり」と、シングル表題曲を披露した。その都度、大きな話題を呼んできた彼らの人気の理由とは、一体何なのだろうか。


 KANA-BOONのブレイクポイントを振り返ると、まずは初の全国流通盤『僕がCDを出したら』に収録されている「ないものねだり」がシーン内でアンセム化したことが挙げられる。それに対し、一部では「誰でも気軽にノレる“四つ打ち高速ロック”」という評価もされ、実際1stフルアルバム『DOPPEL』や3rdシングル『フルドライブ』は、ライブシーンで彼らが実績を残すきっかけともなった。


 しかし、それは彼らの魅力の一面に過ぎないのではないか。筆者はこれまで、彼らがインディーズ時代に拠点としていた大阪・堺市にある三国ヶ丘FUZZでのライブから今日までを見届けているが、彼らの本質的な魅力は「メロディのセンス、特にギターリフの作り方が一級品」という点にあると考えている。


 彼らのほぼ全楽曲のイントロ部分において、古賀隼斗の印象的なギターリフによるメロディが鳴っており、それは最新曲「ダイバー」においてもそうだ。同曲はシングル表題曲としては「結晶星」や「生きてゆく」に近いミドルテンポのもので、バンドのスケールの大きさ、懐の広さを示しているが、ここでも古賀のギターリフは効果的にノスタルジックな情景を演出している。


 もちろん、バンドのフロントマンでありソングライター・谷口鮪の存在も忘れてはならない。彼の作る楽曲は、青臭さを帯びた純度の高いギターロックが多く、歌詞にもどこか成長小説的なヒロイズムを感じさせるものが多かった。“少年が大人になっていく過程”をピュアに描いているからこそ、『NARUTO -ナルト-』の主題歌起用がここまでハマっているともいえるだろう。だが、KANA-BOONは、5thシングル『シルエット』と、そこから続く2ndアルバム『TIME』を通過し、徐々に大人の風格が身についてきた。


 また、前作の『なんでもねだり』では、CMソングとしての側面を持たせつつ、ポピュラーな“KANA-BOON像”を打ち出し、幅広いリスナー層へと訴求した。楽曲も初夏の雰囲気に合わせた開放的なもので、彼らがポップスのフィールドでも勝負できることを証明してみせた意欲作でもある。そして今回の『ダイバー』は、叙情的なメロディが映画のエンドロールに相応しいものになっているし、前作の反動もあってか、楽曲に呼応するかのようにパーソナルな言及も増えた。


 ちなみに、先に挙げた「結晶星」は、バンドがインディーズ時代から温めていた大切な楽曲で、「生きてゆく」は2014年に地元大阪で開催された一大ワンマンライブ『KANA-BOON野外ワンマン ヨイサヨイサのただいまつり! in 泉大津フェニックス』に合わせてリリースと、いずれもキーポイントで発表された楽曲たちだ。今回は“初の映画主題歌”という節目であり、『ミュージックステーション』への出演、そのあとには『ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2015』『RISING SUN ROCK FESTIVAL 2015 in EZO』『SUMMER SONIC 2015』と、夏フェスのメインステージという大舞台が続くベストタイミングでもある。特に『ミュージックステーション』では、これまでアッパーな楽曲ばかりを披露してきただけに、一段と成長したKANA-BOONと同曲が、番組を通じてどのように受け止められるのか、今から楽しみでならない。


(文=中村拓海)