すべての国民に12桁の番号を割り振り社会保障・税情報をひもづける「マイナンバー制度」の導入まで、あと半年足らず。これをビジネスチャンスにしようと意気込む企業もあれば、大きな負担増になると警戒する企業もある。
7月8日放送の「ワールドビジネスサテライト」(テレビ東京)では、両者の現状を取材していた。オービックの調査によると、約7割の企業がいまだマイナンバー対策の方針を決めていないという。7月に開催された人事総務向けの展示会では、各社が「マイナンバー管理システム」の売り込みを競っていた。
貯金を丸裸にされる富裕層が「金庫」購入
マイナンバー関連のIT投資は2兆5000億円以上との試算もあり、富士通マーケティングの古瀬さんは「特需」という言葉でインタビューに答えていた。
その影響はITシステムにとどまらない。たとえば耐火金庫メーカーの日本アイ・エス・ケイは、資料を保管する金庫の需要が2割程増えると見込む。さらにマイナンバーで貯金を丸裸にされるのを嫌う富裕層の金庫購入も期待している。
一方、深い悩みを抱える企業もある。水道工事のある会社では、給与システムやセキュリティソフトを新規導入。投資額は100万円を超えた。社長はこう嘆いた。
「業界はオリンピックに向けて忙しくなっているが、まだまだ中小企業までは届いていないので、資金的には大変です」
さらに費用が掛かったのは、従業員の約半分に当たる40人を厚生年金に加入させたことだ。マイナンバーで厚生年金の未納などが明るみになり、今後未納分を請求されるリスクがあるためで、年間600万円の出費となる。
「社会保険の未納」あぶり出される?
実は従業員の半数は、日雇いや季節労働者。手取り金額を重視するあまり、厚生年金の要件を満たしても国民年金に加入していた。社長は違法状態と知りつつ人手不足を心配して、以前は従業員の希望どおりにしていたのだ。
この取り組みを後押したのが、税理士の笹川朝子さん。社会保険の未納があぶり出されることで、企業の経営に影響が出ると指摘し、こう話した。
「社会保険で資金が回らなくなり、倒産する会社も出てくると思います」
マイナンバー導入で、社会保障制度が適切に運用されるなら悪いことではない。しかし日本経済を下支えしている中小企業が踏ん張りきれずに倒産すれば、元も子もない。(ライター:okei)
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