ホンダF1プロジェクトの新井康久総責任者が、2015年前半戦を振り返り、F1への挑戦がこれほどまでに難しいとは思っていなかったと語った。しかし問題は特定できており、後半戦には競争力を強化していくことができるといういい感触を持っているという。
今季ホンダはパワーユニットマニュファクチャラーとしてF1に復帰、マクラーレンと共に頂点を目指して戦っている。しかしマクラーレン・ホンダは信頼性、パフォーマンスの両方において苦労し、前半戦10戦で2台合計でリタイアが11回、17ポイント獲得でコンストラクターズ選手権9位に沈んでいる。
しかしハンガリーGPでは他車のアクシデントやトラブルに助けられる形ではあったが、フェルナンド・アロンソ5位、ジェンソン・バトン9位と、今季初のダブル入賞を成し遂げており、ホンダは「これまでグリッド後方に甘んじてきたがトンネルの出口が見えつつある」と述べている。
「本当にタフな戦いが続きました」と新井康久総責任者はホンダF1公式サイトのインタビューにおいて前半戦を振り返った。
「ウインターテストから序盤の数戦まで多くの問題を抱えていましたが、幸いそのほとんどは解決したので、いよいよ前に進み始めることができています。後半戦は、いい戦いができる感触を得ています」
苦労したのは、トップを狙うゆえのアグレッシブなデザインによって引き起こされた熱の問題だという。
「我々のパワーユニットはコンパクトなレイアウトで、それが高い競争力につながると考えていますが、そのパッケージゆえに熱の問題に悩まされました。問題となる箇所は特定できたので、後半戦ではその解決に向けて新たなパーツを投入して出力をアップし、競争力を強化していきます」
F1への挑戦は簡単ではないと考えていたものの、想像を超えるチャレンジだったと新井総責任者は言う。
「マクラーレン・ホンダの過去の功績により、ファンの皆さんはすぐに好成績が残せると期待されていたと思います。しかし、マクラーレン・ホンダが常勝だったころからF1の世界は大きく変化しており、そう簡単に勝てるものではありません。現代のF1は、当時よりはるかに進化しており、速いマシンを作り上げるのは難しくなっています。我々も簡単ではないと予測していましたが、これほどにも難しいとは思っていませんでした」
「我々が直面している技術的なチャレンジは想像を超えていましたが、自分たちのPUの方向性には確固たる自信があります。トップチームに勝つためには、全く新しいことをしなければ実現しませんから、それを成し遂げることが我々の目標です」
具体的にどういう部分が想定外だったのかという問いに対し、新井総責任者は、ひとつのコンポーネントの不具合が他に影響してさまざまな問題を引き起こすことだったと答えた。
「PUのパッケージに関する現行の規定はとても複雑で、ひとつのコンポーネントが起こす小さな不具合が、ドミノ倒しのように連鎖して他の部分にも影響を及ぼすことが分かりました。例えば、MGU-Hからエネルギーを取り出すときです。ターボに大きな負荷がかかることで、より多くの空気を取り入れて出力を上げるというターボの本来の仕事ができなくなり、出力が減少するという事態に陥ります」
「このように、ひとつのコンポーネントが他の部分に影響を与え、その仕事を阻害するといったケースが出てしまいます。こうしたマシンをストップさせるような連鎖反応が、事前の想定や計算を超えて発生しました。難しいのは、トラック上で実際にマシンを走らせずに、正確な計算をしなければならないことです」
しかしすでに信頼性の問題は解決済みだと新井総責任者は考えており、今後は出力アップに注力、サマーブレーク後のベルギーGPで残っているトークンの一部を使った新スペックエンジンを投入するという。その後も段階的にPUをアップグレードしていき、後半戦には表彰台争いができる位置で戦うことを目指すと、新井総責任者は宣言している。