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V6、20周年ベスト盤に求められたものは? セールスから見えたグループの価値

2015年08月06日 07:10  リアルサウンド

リアルサウンド

参考:2015年7月27日~2015年8月2日のCDアルバム週間ランキング(2015年8月10日付)(ORICON STYLE)


 10位圏内、ベテランのベスト盤が3枚と、レッド・ツェッペリンのリマスター2枚がランクイン。その隙間を埋めるように知名度の高くない新人がポツポツと登場している8月2週目。いよいよ、ニッパチです。


参考:V6森田剛の演技はいかにして磨かれたか? 実力派俳優となった背景を読む


 もちろんトピックがまったくないわけではない。ザ・ハイエイタスの細美武士が始めたMONOEYES(3位、34.128枚)は実力派の盟友が揃った話題の新バンド。一度聴けば必ずシンガロングできるポップ・パンク/ギターロックが満載、元エルレガーデンのファンにも響くであろう力作だが、バンドは過去にライブ経験もほとんどなく、音楽雑誌で大きな話題になっているように見えて、実際は一部のファンしか騒いでいない。というか多くの人がまだ知らないというのが現実だろう。他の新人にも同じことがいえる。


「飯田里穂(7位、10,577枚)、アニメ『ラブライブ!』で星空凜役を務めた人気声優! いよいよソロアーティストとしてデビューする話題昨!」


「れをる(9位、10,101枚)はニコ動発の次世代女性ボーカリスト。ネットではすでに話題騒然の彼女が、満を持して発表する初のフルアルバム!」


 ファンの「話題」が、音楽シーン全体でまったく「共有」されていない。細分化というよりも断絶に近い溝がある。なのにあっさりチャートに入ってしまう。こういう記録は「初の作品がトップ10入り!」と喜べるものなのか。ファンはともかく本人やスタッフにとって、どれくらい価値があるのだろうか。うーん、あまりにニッパチ感満載で余計なことを考えてしまうのだった。


 そしてベテラン勢のベストの話。まだまだ売れ続けているドリカムのベストを押さえ、今週1位はV6の『SUPER Very best』(初回生産限定A盤)だ。過去に発表した全45曲のシングルをまとめたパッケージなので、初動152,490枚という数字が「順当」なのかよくわからない。4週前に1位だったキスマイが初動30万枚だったことを思えば「微妙」とも言えるが、それでも新作ではないシングル集なのだから、うん、やっぱり「凄い」のだろう。


 いまやV6は、全員で歌って踊っている姿よりも、バラエティで「司会」イノッチを見たりドラマで「俳優」岡田准一を見ることのほうが多いグループだ。各自の活動が充実しているのだろうし、それはそれで幸せな話。2001年のベスト『very best』のジャケを見ると、金髪の森田剛を筆頭に、それぞれが「ちょい悪ストリート感」の元にまとまっているのだが、当時のV6のイメージは、もはやほとんど皆無だろう。イノッチとか、リーダーとか、特に。


 おや、と思ったのは今年5月に発表された「Timeless」。ダークスーツに身を包んだ6人がシックに踊るミディアムバラードで、これはデビュー20周年突入の第一弾シングル。いまやキャラクターも活躍場所も散らばっているV6が、「20周年」の名の下、改めてグループとしてひとつにまとまっている。しかもそこには随分オトナっぽい色気が加わっている。今回のアニバーサリーで見せたいのは(あるいはファンが見たいのは)、きっと、そういう部分なのだと思う。


 ベストの初回限定には2種類あって、B盤にはレディ・ガガの仕事で知られるRedOne提供の新曲があるが、ランクインしたのはそちらではない。作詞・V6、作曲・井ノ原快彦による新曲「~此処から~」が収録されたA盤がとにかく売れているようだ。作詞という6人の共同作業。行間に滲み出る6人だけの会話。20年を振り返りオトナになった自分たちを確認しあい、またここから始まると歌う曲が、ファンにとってどれだけの価値を持つかは想像に難くない。この一曲が付くだけで15万枚売れるのがV6。うん、凄い。(石井恵梨子)