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中国で自国産映画の興行収益が過去最高に ハリウッドでは“外国映画の上映規制”を懸念する声も

2015年08月05日 17:50  リアルサウンド

リアルサウンド

リアルサウンド映画部

 中国国内における自国映画の興行収益が7月に過去最高金額となる54.9億元(米ドル:897.5億ドル)(日本円:約1097億円)を記録したことを、中国ニュース出版テレビラジオ総局(SAPPRFT)が8月3日に発表し、アメリカの各メディアでも報じられている。昨年の7月に比べて48.9%の伸びであり、2015年2月の41億元(日本円で約817億円)より34%高い数字となっている。2014年の1年間の興行収益296億元は、8月下旬あるいは9月下旬には越える見込みだ。


参考:興行収入好調の『海街diary』は、新しいプロデューサーシップの到来を告げるか?


 米経済誌『フォーブス』の電子版では、今回の記録を受けて「ギリシア神話に出てくるヒドラのように、中国映画産業の成長は止まること(死に絶えること)を知らない。成長のペースは速くなっている」と、中国映画の急成長に驚きを示している。(参考:「Another Monster Month at China's Box Office」)


 一方、米エンタメ専門誌『バラエティ』の電子版では、中国当局が6月19日以来、上映規制を行い、自国映画の保護期間を設けていることに言及。この間、主要な外国映画は上映されなくなり、中国映画である『モンスターハント(原題)』や『パンケーキマン(原題)』、『モンキーキング(原題)』、『ヒーローイズバック(原題)』などが上映されていた。SAPPRFTフィルム局長のシャオン・ホンセン氏は 「7月の記録は、中国の映画産業におけるマイルストーンとみなされるべき。中国の映画製作者は成功している」と述べているが、ハリウッドでは上映規制に関して、中国政府が中国映画市場にゆがみをもたらしているとの見方も示しているという。(参考:「China Has Record July at the Box Office」)


 米金融サービスのHEFFXが運営する『ライブトレーディングニュース』では、中国映画成功の理由についても分析。中国では1994年からアメリカ映画を輸入し始め、中国映画が競争力をつけてきた2012年以降、海外映画と競争になることが多くなったという。そこで、中国当局は前出の上映規制のほか、“インターネットプラス”方針(インターネット関連企業への支援)を推奨。インターネットを介して資金調達を行ったり、映画会社の合併・協力を促して、業界の再編に臨んだ。実際、7月に多くの収益をあげた映画は、インターネット会社からの投資やクラウドファディングにより資金集めしたものが多い。『モンキーキング(原題)』のクレジットには、109人の子供がプロデューサーとして名前を連ねているといい、これは彼らの両親が映画マーケティングのために資金を提供したのだという。(参考:「Chinese Box Office Hit Record High In July」)


 近年ハリウッド映画が人気を博し、北米を凌ぐほどの成長市場と見られてきた中国だけに、今回の「自国映画優先政策」は世界の映画市場にも影響を及ぼしそうだ。(リアルサウンド映画部)