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「103万円の壁」は壊すべき?見直し議論が始まった「配偶者控除」の必要性を考える

2015年08月03日 12:41  弁護士ドットコム

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政府税制調査会が7月上旬、所得税の抜本改革の議論に着手した。低所得者や若者の税負担軽減のほか、配偶者控除の見直しも焦点とされている。来年夏に改革案の中期答申を提出し、政府は、早ければ2017年度の税制改正に答申の内容を反映させる意向という。


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配偶者控除とは、専業主婦や一定額以下の配偶者がいる家庭で、所得税や住民税が軽減される制度のこと。配偶者に所得があっても、その年の給与収入が103万円以下であれば、配偶者控除が受けられる。



しかし、控除を受けるために103万円以下となるように働く時間を制限することについて、「103万円の壁」という言葉があるなど、働く時間を制限することについて、否定的な見方もあるようだ。はたして、配偶者控除とは、いまの社会に本当に必要な制度なのだろうか?



三宅伸税理士に話を聞いた。



●配偶者控除制度はなぜうまれた?


「配偶者控除は、もともと最低限の生活を保障することを目的とした扶養控除の1つでした。扶養控除から独立したのは、事業所得者(個人事業主)の専従者給与(家族への給与を経費として認められる)との不均衡を是正するためです。



しかし現状では、配偶者控除は所得再分配機能を果たしておらず、所得の高い人(富裕層)にとって優遇的な制度となっているのではないでしょうか。本来の目的であった所得の再分配という観点からは、合理性がなくなってきています」



三宅税理士はこのように、現在の配偶者控除制度の問題点を指摘する。では、配偶者控除はいまの時代、不要といっても良いのだろうか?



「個人所得課税の機能が『財源調達機能・所得再分配機能』であると考えると、配偶者控除を一律廃止するのではなく所得制限を設け、存続させるべきだと考えます。具体的には、高額所得者は制度の適用外とし、それ以外の方々は、これまでと変わらず適用対象とすることです。



その場合、配偶者控除が適用外となる高額所得者には増税となります。その増税分を保育所設置などの子育て支援の財源にするなど、不透明な増税にならないように努めなければならないのは言うまでもありません。



また、『103万円の壁』という理由で、配偶者控除制度に反対する声もあります。しかし、働く時間を抑制しているのは、配偶者控除制度のみではなく、専業主婦を優遇する企業の配偶者手当や社会保険制度のほうが大きく影響しているとも考えられます」



三宅税理士はこのように述べていた。



【取材協力税理士】


三宅 伸 (みやけ・しん)税理士


大阪府立大学経済学部卒業。大手リース会社勤務。仕事、育児、勉強を両立しながら大阪の税理士法人に勤務。平成26年11月堂島で三宅伸税理士事務所を開業。誠実であること、素直であること、常にお客様の立場に立って考えることを大切にしております。お客様と共に成長していきたいです。


事務所名   :三宅伸税理士事務所


事務所URL:http://miyake-tax.jp


(弁護士ドットコムニュース)