シャープの経営悪化に歯止めかからない。7月31日、シャープの高橋興三社長は今年4月から6月までの連結決算が339億円の赤字となり、今週から希望退職の募集を始めたことを記者会見で発表した。
募集の対象は国内で働く45歳から59歳までの社員で、全社員の約15%にあたる3,500人規模だ。同日放送の「ワールドビジネスサテライト」(テレビ東京)は、希望退職を迫られる中「会社に残るべきか否か」と揺れる、2人のシャープ社員に胸中をきいた。
面談する上司も苦渋「部下の顔を見れない」
大阪本社ではかん口令が敷かれているようだったが、渦中にいる40代後半のAさんと50代後半のBさんは、単独インタビューで現在の状況を明かした。
社内では6月から、45歳以上の社員を対象に直属上司との面談が行われているそうだ。会社の現況と、新しい組織編成についての説明があり、「それを踏まえて9月末日までに希望退職の募集がある。あなたはどう考えていますか」と問われる。
面接は、会社に残って欲しい人は2回ほどで終わるが、会社の評価が低い社員にはそれ以上続き、退職を拒むとさらに上の役職の人が出てきて何度も面接を重ねることになる。
実態は希望退職を促しているようなもので、中には何度も面談を受けているうちに「自分はこの会社に不要な人間だ」と失望し退職に応じてしまう人もいるようだ。
さらに「10月からあなたの仕事はない」と言われた人や、「会社にしがみついてどうするんだ?」「あなたには仕事がないんですよ」と追い込まれた人もいるという。面談をする上司も楽ではない。ある部長は、こう語ったそうだ。
「(部下の)顔を見れない。成績の優秀な人もそうでない人も、かわいい部下。つらくて仕方がない。でも会社としてやらないといけない」
リストラ対象者は「全社員一丸」を訴える
こうした社内の状況に、やはりAさんは憤りを感じているようだ。
「なぜ一部の人たちにしわ寄せがいくのか、私には理解できない。だったら全社員一丸で給与を半分にしてでも1年間頑張りましょう、と言われる方が頑張れる」
とはいえ全員が給与半分では生活が維持できず、転職可能性の高い人から先に飛び出すことは目に見えている。何しろリストラが1年で終わる保障がない。会社を存続させる目的にはそぐわない手段だろう。
Aさんは「会社がどうなるのか不安が大きく、思い切って会社を出るのもひとつの手段」と話し、Bさんも「全然違う事にチャレンジがしたい気持ちがある」と希望退職へと気持ちが傾いていることを明かす。その一方で口を揃えて会社への愛着を語っていた。
「でもこの会社が本当に好きで、愛着があって残りたい。だから迷っている」(Aさん)
「ストップをかけているのは会社への愛着ですね」(Bさん)
入社したときには「これで一生安泰」と期待したのだろうが、その当時だって「就社」の危険性は指摘されていたはずだ。会社に依存せずいつでも辞められるようにしておくことは、どこに勤めていても当たり前に必要だと改めて思った。(ライター:okei)
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