ミド・オハイオで開催されたベライゾン・インディカー・シリーズ第14戦。2日に行われた決勝レースは、ピットストップのタイミングが明暗を分け、グラハム・レイホール(RLLR)が地元レースで今季2勝目を飾った。インディカー100戦目となった佐藤琢磨(AJフォイト)は序盤で接触を喫しリタイアとなった。
蒸し暑さの中で切られたスタートからポールシッターのスコット・ディクソン(チップ・ガナッシ)は悠々とレースをリードしていた。しかし、彼は燃費良く走っていたことが災いし、イエローコーションのタイミングにより1回目のピットストップの後には中団に埋もれることとなった。
このコーションは佐藤琢磨(AJフォイト)とステファノ・コレッティ(KVレーシング)の接触によるものだったが、これが出される直前にピットしていた10番手スタートだったファン・パブロ・モントーヤ(チーム・ペンスキー)は、まんまとディクソンとの順位を逆転し、39周目にはトップに躍り出た。
90周のレースが50周目を迎えた時、モントーヤは今日2回目のトップに立ち、シーズン3勝目とチャンピオンシップに向けて突き進んでいるかに見えていた。ところが、レース序盤に彼に味方したフルコースコーションが、今度は逆に彼の足を引っ張ることになる。
65周目にセージ・カラム(チップ・ガナッシ・レーシング)が単独スピン。それに対応してコースがイエローになる直前、レイホールはピットに呼び入れられ、フルコースコーションとなってトップグループがピットに入ると、ステイアウトしてトップに躍り出た。ディクソンも4番手へと浮上。トップだったモントーヤは10番手以降へと後退した。
ホンダが冠スポンサーのレースで、今年のホンダ勢で最も活躍しているレイホールが優勝。しかも、2位には最終5戦にホンダのサポートで出場しているジャスティン・ウィルソン(アンドレッティ・オートスポート)が入賞し、ホンダ勢は今季2回目となる1-2フィニッシュを達成した。
レイホールの勝利は作戦と好判断、そして幸運だけで実現されたのではない。ゴールを前にしたバトルで彼は1分6秒台のハイペースをキープ。2位に3秒以上の差をつけ、その差がゼロになるイエローが出されても、そこからのリスタートで再び後続を突き放してみせた。しかも、ゴールまで7周で切られたリスタート時、レイホールにはプッシュ・トゥ・パスがもう一度も残されておらず、ウィルソンには2回もあったが、レイホールはトップを死守した。
「このレースはレイホール家にとって特別なんだ」とウイナーとなったグラハムは語った。ミドオハイオ・スポーツカー・コースを造ったのはジム・トゥルーマン。彼はトゥルースポーツというインディカー・チームを率いていたが、ボビー・レイホールを走らせていたのが彼らだった。トゥルーマンから受け継がれたチームとして、レイホール・レターマン・ラニガン・レーシングの本拠地は今もコロンバスに起かれている。グレアムはオハイオ州コロンバスで生まれ育ったのだ。
「もし、これから僕が多くのインディーカーでの勝利を飾る事になったとして、ミド・オハイオでのインディカー・レースでだけ一度も勝てなかったら、そのキャリアに僕はおおいに失望すると思う。だから今日、こうして優勝できたことが本当に嬉しいんだ」とレイホール二世は話した。
レイホールはシーズン2勝目、そしtキャリア3勝目をマークした。表彰台はこれで今季6回目。トップ5フィニッシュは8回を数える。ポイントリーダーのモントーヤは結局12位でフィニッシュ。レイホールは彼とのポイント差を一気に9点にまで縮めた。ポイント3位のディクソンは4位でのゴールとなり、レイホールとの差は25点に広がっている。
3位はサイモン・ペジナウ(チーム・ペンスキー)。ペンスキーでの1年目は苦しい戦いが続いているが、2回目の表彰台登壇を実現した。
5位はトニー・カナーン(チップ・ガナッシ・レーシング)。6位は最後尾スタートだったトリスタン・ボーティエ(デイル・コイン・レーシング)で、7~10位までもホンダ勢。合計7人と今季初めてホンダドライバーがトップ10で過半数を占めた。
その一方で佐藤琢磨(AJ・フォイト・レーシング)は残念な結果に終った。自身の100戦目は最下位の24位となってしまった。1回目のピットストップの後にルーキーのコレッティと接触してホイールガードなどを傷め、その交換に時間がかかったために2周遅れに陥った。最後のピットの前にはコースアウトがあり、マシンに更なるダメージが与えられたため、そこでレースを終えることとなった。
(Report by Masahiko Amano / Amano e Associati)