7月30日、はてな匿名ダイアリーに「そろそろ共働き夫婦の家族アニメができないものか」というエントリーが投稿され、ネットで話題となっている。
投稿者は、日本の国民的アニメの作品を並べ、「クレヨンしんちゃん」の家も「サザエさん」の家も「ちびまる子ちゃん」の家も、「みんな母親が専業主婦だ」と指摘。このような設定のアニメが放送される弊害について、こう苦言を呈している。
「パパが外で稼いできて、ママが家事と子育てするべき、という思想を、テレビでふりまくのは、もういい加減にやめたらどうだろうか」
サザエさんが「育休明けに職場復帰」しないと不満
投稿者が特に槍玉にあげたのは「サザエさん」。家族は通勤至便な世田谷区の嫁(サザエさん)の実家の一戸建てに同居し、母親(フネ)は50代でバリバリ動ける状態。しかしサザエさんは「育休が明けたら職場に復帰」もしないと、投稿者は不満げだ。
一家にふたりの専業主婦がいる状態は、いまとなってはかなり珍しい。これには他のユーザーから、「家族アニメなのに両親ともいなかったら家族アニメにならない、ってだけでは?」と作品づくりが難しくなるという指摘がある一方で、
「現実にそういう家庭が増えている中で、そこを上手くさばければ、新しいものができそう。 挑戦するヤツはいないのかな?」
と投稿者に共感する人もいた。
とはいえ長谷川町子氏が「サザエさん」を新聞に連載し始めたのは、終戦直後の1946年。テレビアニメは高度成長期真っ只中の1969年に始まっている。作者はすでに死去しており、設定を現代に合わせるのは現実的ではない。
同じように、「クレヨンしんちゃん」の臼井儀人氏は1958年生まれ、「ちびまる子ちゃん」のさくらももこ氏は1965年生まれで、作者が高度成長期に育った影響が作品にも色濃く出ている。彼らが「思想」をふりまいていると責めるのは、酷というものだろう。
先進的な設定だった「クッキングパパ」
ただ、人気アニメと現代の社会的状況が、かけ離れてしまっているのは事実。それが視聴者である子どもに影響を与えているという指摘もある。
「実際、『うちのママはどうしてまるちゃんやしんちゃんの家みたいにずっと家にいてくれないのか』って子供はいるんだよな」
コメントでは、男性が子育てをする「うさぎドロップ」や、両親が共働きの「崖の上のポニョ」など、投稿者の指摘に合いそうなアニメを探す人たちもいた。
しかし前者は独身者が主人公、後者の父親は船乗りで家事を分担する様子もない。共働きで、男性が家事をするアニメはないものか。最も投稿者の意見に合致しそうなものとしてあがったのは、うえやまとち氏の「クッキングパパ」だ。
主人公の荒岩一味は、商社に勤めるサラリーマン。妻の虹子は新聞社勤務で、家庭の料理はおもに夫が担当している。手際よく仕上げる彼の料理が、登場人物たちの悩みを解決してくれるというのが定番の流れだ。
料理だけではなく家族の話も描かれており、放映時間帯も19時から。まさに「共働き夫婦の家族アニメ」。テレビアニメは1992年から3年間放映されたが、コミックの連載が85年から始まっていることを考えると、先進的な設定のマンガだったといえるだろう。
さりげない家事のシーンが増えないか
この点について、うえやま氏にはそのような意識がなく、コミックの連載開始当時は「単純に料理好きなお父さんが描きたかった」と対談で答えている。
「自分としてはかっこいい父親像を提案しているだけで、時代の先をいっているような意識はまったくありませんでした」
「クッキングパパ」は料理が得意なお父さんが主人公であり、普通の父親に同じようなキャラクターを求めても難しい。例えばフレックスタイムで働く男性が、朝の目玉焼きを作って妻や子どもの出勤を見送るような、さりげない家事のシーンが登場するアニメがもっと増えてもいいのかもしれない。
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