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ファン参加型のMVはなぜ増えた? キュウソ、androp、忘れらんねえよらの作品から考えてみた

2015年08月02日 15:11  リアルサウンド

リアルサウンド

キュウソネコカミ『チェンジ ザ ワールド(初回限定盤)』(ビクターエンタテインメント)

 新曲のリリース前後に公開されるMVには、有名映画監督が手掛けたストーリー仕立ての作品や、海外でのロケ撮影を行なった作品、アニメーションやCGを駆使した作品など、様々な工夫が凝らされたものがある。そんな中、SEKAI NO OWARIをはじめとする近年ブレイクしたバンドの多くは、ファンからエキストラを募ってMVを制作し、YouTubeなどに公開していることが少なくない。


参考:チャットモンチー、LoVendoЯ、tricot……独自のプレイが光る女性ギタリスト6選


 たとえば、先日『ミュージックステーション』(テレビ朝日系)に初出演を果たしたキュウソネコカミは、これまで数々のMVでファンをエキストラとして招いている。「ファントムバイブレーション」「ビビった」「OS」のMVでは、主にライブシーンの撮影にファンが出演し、彼らの演奏を盛り上げた。MV中でライブシーンを再現するのは、そのアーティストのパフォーマンスの雰囲気が最も伝わりやすく、結果としてライブの集客にも繋がるだろう。MVが公開される際、出演したファンがSNSツールなどで自ら告知することは、そのままMVの拡散にもなる。


 また、こうしたMVによってファンが新曲を“予習”できるのも、大きなメリットだ。曲中の振り付けや曲の楽しみ方を前もって知ることで、ファンはライブ会場で盛り上がりやすくなる。


 andropの三ツ矢サイダーのCM曲として使用されている「Yeah!Yeah!Yeah!」のMVでは、エキストラを一般から募集。完成されたMVのエンドロールには参加者の名前がクレジットされていた。同MVでは、ファン同士の交流が描かれており、バンドが“リスナー間の繋がり”を大切にしていることがわかる作品に仕上がっている。また、ファンの笑顔は、そのアーティストの魅力を伝えるうえで大きな説得力を持つだろう。


 忘れらんねえよの「バンドやろうぜ」では、エキストラ出演としてファンを登場させているのではなく、テーマに合わせた動画を一般人から募集してひとつのMVを作り上げている。バンド結成のきっかけとなったチャットモンチーも同映像に出演しており、彼らを支えてきた人々に対する感謝の気持ちが伺える作品となっている。


 tricotの「Break」も同じような構成で作られているが、多国籍の人々が出演しているという点が印象的だ。この作品からは、tricotが数々の海外フェス出演を経て、多様な国の人から支持されているアーティストであることが伝わるのではないだろうか。


 現在、多くのリスナーが新しいアーティストを知るきっかけのひとつとなっているYouTube。インターネットの発達やライブ市場の活況によって、アーティストとリスナーの距離が近づいている昨今、ファンとともに作り上げていくMVは、フレンドリーかつ効果的なプロモーション方法として、さらに増えていくのかもしれない。(大和田茉椰)