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乃木坂46『太陽ノック』は売れるべくして売れた AKB48代表曲に通じる”ヒットの法則”とは?

2015年08月02日 13:11  リアルサウンド

リアルサウンド

乃木坂46『太陽ノック(Type-A)』(SMR)

参考:2015年7月20日~2015年7月26日のCDシングル週間ランキング(2015年08月03日付)(ORICON STYLE)


 今週のオリコンシングルランキングは、1位に乃木坂46『太陽ノック』、2位にアンジュルム『七転び八起き/臥薪嘗胆/魔法使いサリー』、3位に水樹奈々『Exterminate』、4位にEXILE SHOKICHI『Don’t Stop the Music』、5位にSCANDAL『Stamp!』という並びとなった。


参考:乃木坂46、12thシングルで生駒里奈がセンターに 「この夏が勝負。これで年末の紅白が決まる」


 今週はなんといっても生駒里奈がセンターに復帰した乃木坂46『太陽ノック』のヒットが大きなトピックだろう。セールスは60万枚を超え、グループ史上最大の売り上げを記録。2位以下を大きく引き離している。


 ダウンロードやエアプレイや動画再生数などを加味した複合チャートの「Billboard Japan Hot 100」においても、やはり乃木坂46「太陽ノック」が1位だ。(こちらの2位は水樹奈々「Exterminate」、3位は三代目J Soul Brothers「Summer Madness」、4位はAAA「LOVER」、5位はカーリー・レイ・ジェプセン「アイ・リアリー・ライク・ユー」となっている)。


 というわけで、今回の記事では乃木坂46『太陽ノック』について分析していこう。まず明らかなのは、この曲は乃木坂46というグループにとって一つのマイルストーンとなるべく作られた楽曲である、ということだ。作曲を手掛けているのは2012年2月にリリースされたデビュー曲「ぐるぐるカーテン」を手掛けた黒須克彦。その曲でセンターに抜擢された生駒里奈が、AKB48兼任を経てグループに戻ってきたタイミングで2年半ぶりにセンターをつとめる、ということになる。「新たなスタート」を意識させる陣容となっているわけだ。


 そして、2015年は乃木坂46にとっても「第一章」を終えた大事なタイミングでもある。1月には1stアルバム『透明な色』をリリース。7月には初のドキュメンタリー映画『悲しみの忘れ方 Documentary of 乃木坂46』が公開された。新プロジェクトとして「鳥居坂46」が発足することも発表されている。


 つまり、「AKB48の公式ライバル」としてスタートした乃木坂46の初期のストーリーは終わりを告げ、ここからは「王道」を引き受け自らが憧れられるスターとしての新しい物語が始まる、というわけなのだろう。黒須克彦の起用にはそういう意味合いも感じられる。


 というわけで、この「太陽ノック」。ここのところ続いてきたシリアスな路線からは一転、「ガールズルール」「夏のFree&Easy」に続くアップテンポな“夏曲”ということで、オーヴァードライヴ・ギターとピアノを配した爽快感重視の曲調となっている。


 そして、この「太陽ノック」とAKB48「ヘビーローテーション」を比較すると、共通するいくつかの「ヒットの仕掛け」を見出すことができる。


 一つ目は、サビ頭のメロディの動き方。「ヘビーローテーション」の「♪I Want You~」も、「太陽ノック」の「♪太陽ノック~」も、サビ前の小節から始まってサビの1拍目に向かっていく「弱起(アウフタクト)」のメロディが使われ、それがサビ内で何度も繰り返されれている。


 もう一つは、サビで歌われる言葉の母音。「ヘビーローテーション」の「I Want You~」「I Need You」では繰り返し「あ」が用いられ、「太陽ノック」でも「太陽ノック」「誘っているよ」「何か始める」「熱くなれる季節に」と、「た」「さ」「な」「あ」というア行の言葉が多用されている。ア行の母音は、口を大きく広げて発声するゆえに、開放的な言葉の響きになる。それゆえ、こうした明るい曲調に載せてア行の母音を用いた歌詞を歌うというのは、AKB48だけでなく数々のJ-POPのヒット曲に共通する一つの法則となっている。


 ほかにも、BPM160~170代のアップテンポな曲調、メジャーコードのギターリフなど、サウンド面での共通点も多い。


 AKB48の代表曲の一つとなった「ヘビーローテーション」と同じく、やはり乃木坂46の代表曲の一つになるべく歌詞にもメロディにヒットの仕掛けを惜しげもなく使ったのが「太陽ノック」という曲だ。


 売れるべくして売れた、ということなのだと思う。(柴 那典)