フランス人は、プライベートは大事にするけれど会社の仕事はきちんとやらない。そんなイメージを抱く人も多いでしょう。米タイヤ製造大手のCEOが、2013年に仏政府から経営難に陥った工場を買収してほしいと打診された際にも、
「バカバカしい。フランス人は1日3時間しか働かないじゃないですか」
と断ったという逸話があります。しかし経済のグローバル化の進展に伴い、フランス人の「短時間労働」の神話も終焉を迎えている――。英BBCがそんな記事を掲載しています。(文:遠藤由香里)
半数以上が「週35時間」の制限を超えて残業している
フランスの労働時間は、法律で週35時間に制限されています。ウィークデー5日でこれを割ると、1日7時間。前出のCEOはこの時間の使い方について、次のような内訳であると述べています。
「休憩と昼休みに1時間、おしゃべりに3時間、仕事に3時間費やす。フランスの労働組合員に面と向かってこれを指摘したら、それがフランスの働き方だと言われた」
フランス人の働き方については、記事でも「ランチをゆっくりと食べ、南の島で長いバカンスを楽しんでいるイメージがあるのでは?」としています。しかし最近では、他のヨーロッパの国々と同じくらい働くようになっているとのこと。
「9時頃から19時30分くらいまで働いています。週に45~50時間ですね」
パリの建設会社で働くオリバー氏は、そう明かします。週35時間は「ここからは時間外労働だ」と伝える境界ラインにすぎなくなっているのだそうです。
これまで弁護士などの専門職ではない一般社員は、35時間労働を厳格に制限されてきたはずですが、2010年の調査ではフルタイム勤務者の50%が残業をしており、現在ではより多くの人が週35時間を超える労働をしていると見られています。
スペイン人も「パソコンの前でランチ」するというが・・・
この傾向はスペインも同様です。長い昼食を取りシエスタを楽しんでいるのも、いまやイメージに過ぎないと言います。マドリードで働くパブロ・マルチネス氏は、8時から18時30分まで働いているそうです。
「世界のマーケットについていこうとして、スペインも変わってしまいましたよ。パソコンの前でランチを食べることも珍しくない。私が働き始めた20年前は、そんなことはなかったのにね」
実のところ、ヨーロッパの労働時間は国ごとにそれほど違いがあるわけではありません。平均週41時間で、最短が39時間(ノルウェー)、最長が43時間(オーストリア)と小さい幅の中に収まっています。
ただしこの統計では、「休憩と昼休みに1時間、おしゃべりに3時間」といった時間の使い方の質については分析されていません。フランス人は、本当にちゃんと働くようになったのでしょうか?
(参照)Busting the myth of France's 35-hour workweek(BBC)
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