2015年08月02日 11:11 弁護士ドットコム
「4ヶ月前に社内の風紀を乱す行為をしました。社内で罰則(減給)処分を受けましたが、納得しない人たちから退職するよう脅迫されています」。そんな相談が、弁護士ドットコムの法律相談コーナーに寄せられた。
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投稿した女性は、既婚の上司と不倫関係になってしまい、残業中に「社内で風紀を乱す言動」をしたと告白する。しかし同僚たちが、社内に盗聴器をしかけていたため、2人の「風紀を乱す言動」は録音されてしまったそうだ。
その後、「社長経由で事実確認があり、在職し続けるかの意思確認をされました。在職したい旨を伝えると減給(上司は降格)、加えて社員全員の前で謝罪しました」という。ところが、その後も「音源をネタに退職するように脅迫してきました」。
社内で問題行動をした責任があるとしても、すでに減給処分を受けている。それなのに、同僚の要求に応じて、会社を辞めなければいけないのだろうか。そもそも、盗聴器を仕掛けるという同僚たちの行為に、法的な問題はないのか。男女トラブルに詳しい加藤寛崇弁護士に聞いた。
「いろいろ考えるべき問題がある相談内容ですね」。加藤弁護士はそう言いながら、「盗聴器」の問題について、次のように指摘した。
「同僚による盗聴が許されるかどうかですが、単に盗聴器を置いて盗聴したのであれば、犯罪にはなりません。盗聴行為のために他人の住居等に侵入すれば住居侵入罪になりますが、本件では会社内に仕掛けただけなので、犯罪には該当しないでしょう。
もっとも、犯罪に該当しなくても、プライバシー侵害として慰謝料を請求できる可能性があります。
具体的事情によりますが、夫婦間であっても、自宅に盗聴器を仕掛けた行為について、プライバシー侵害を理由に慰謝料請求を認めた例もあります。第三者による盗聴であれば、なおさらプライバシー侵害の問題が大きいとはいえます」
では、今回のケースではどうだろうか。
「本件で盗聴器が仕掛けられていたのは会社内であり、自宅などの私的空間ではありません。また、残業という労働時間内の出来事ですから、プライバシー侵害とは言い難いように思われます。
仮に、プライバシー等の人格権を侵害したとして慰謝料請求が認められても、大きな額にはならないでしょう。現実に不貞行為があったという点も、実際上はマイナスに影響するでしょう」
では、「退職するように脅迫してきた」という同僚の意にしたがう必要はあるのだろうか。
「退職する理由は何もありませんから、突っぱねれば良いのです。仮に同僚らが、音源を、相談者や上司の家族などにバラせば、それこそプライバシー侵害で慰謝料請求をすることもできます。
相手方が脅迫してきたのであれば、こちらがそういった言動を録音して証拠を確保し、慰謝料請求することも可能です。黙ってやられるのではなく、反撃することを考えるほうがいいでしょう」
加藤弁護士はこのように述べていた。
(弁護士ドットコムニュース)
【取材協力弁護士】
加藤 寛崇(かとう・ひろたか)弁護士
東京大学法学部卒。2008年弁護士登録(三重弁護士会)。労働者側で労働事件を扱うほか、離婚事件など家事事件も多数扱う。日本労働弁護団、東海労働弁護団に所属。
事務所名:三重合同法律事務所
事務所URL:http://miegodo.com/