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4万人が完全燃焼! Acid Black Cherry「ABC Dream CUP 2015 LOVE」幕張公演レポート

2015年08月02日 11:11  リアルサウンド

リアルサウンド

Acid Black Cherry

 Acid Black Cherryの“4年に一度の大感謝”イベントである「ABC Dream CUP 2015 LOVE」が7月25日、千葉/幕張海浜公演内特設会場にて行われた。


 Acid Black Cherry(通称ABC)は、2007年に始動したJanne Da Arcのボーカルyasuのソロプロジェクト。「ABC Dream CUP 2015 LOVE」は愛知、千葉、大阪の3会場で延べ8万人が招待される大規模フリーライブ企画であり、一般開放エリアを含めると合計10万人が来場し、フリーライブとしての国内最多動員を記録した。千葉/幕張会場で行われたこの日はなんと35度の猛暑日。yasuの言葉を借りれば「丸焼けになりそう」な日差しの中、4万人を熱狂させるパフォーマンスを見せてくれた。


 「幕張—!ぶっ飛ばして行くよー!」というyasuの声で始まったこの日の一曲目は「黒い太陽」。間髪入れずに「罪と罰~神様のアリバイ~」が披露され、すでに真っ赤な顔をしたオーディエンスから熱気が立ち上る。「夏の野外はどうやっても汗をかくんで、みんなキレイでいようと思ったらアカンで!みんなまとめてオレが汚したるから!」というyasuのMCには、悲鳴にも似た歓声が上がった。この幕張会場は全長440メートルにも渡る縦長な会場だったこともあり、少しの時差とともにオーディエンスの声は怒号のようにステージに押し寄せる。


 そして今年2月にリリースされた、波乱の人生を送った一人の女性の一生に焦点を充てたコンセプトアルバム『L—エル—』から披露された「versus G」では、「飛べよ幕張!」というyasuの声とともに一斉にオーディエンスがジャンプ。「sins」ではうって変わってシリアスでドラマティックな世界へ会場を連れていく。中盤では「眠り姫」や「イエス」といったミディアムナンバーを、yasuが伸びのあるボーカルで聴かせてくれた。


 ABCは前述のようにyasuのソロプロジェクトで、レコーディングやライブでは様々なサポートメンバーが参加している。この日のサポートメンバーはYUKI(Gt/from DUSTAR-3 / Rayflower)、HIRO(Gt/from Libraian、La’cryma Chisti)、SHUSE(Ba/from †яi¢к、La’cryma Chisti)、淳士(Dr/from.SIAM SHADE、BULL ZEICHEN 88)という、90~00年代のビジュアル系黄金期を支え、今も現役で活動する実力派ミュージシャン達。yasuとサポートメンバーたちはステージ狭しと動き回り、花道を駆けていく。MCでも5人のチームワークの良さが発揮され、Twitterで募集した質問に全員で答えていくなど、軽快なトークが激しいライブと暑さでヘバリそうなオーディエンスを和ませた。


 ライブ後半戦もオーディエンスとステージはますます熱を帯びていく。「ちょっとまだみんな顔汚し足りないんじゃないかなと思ってー!」とyasuが煽り、激しいヘドバンが続く怒濤の展開に。「黒猫~Adult Black Cat~」ではyasuがフロートに乗り、会場後方にまで廻る演出も。「ピストル」「SPEEL MAGIC」とキラーチューンが立て続けに披露され、会場のボルテージも最高潮のうちに本編は終了した。


 アンコールでは花道前方に組まれたセットで「so…Good night.」「その日が来るまで」がアコースティクverで披露された。あまりの暑さと熱でドラムセットのシンバルが曲がってしまうというハプニングもありつつ、オーディエンスからは大合唱が起こり、ちょうど夕暮れ時を迎えた会場を優しい空気が包んでいく。yasuはこの先のアリーナツアーについて「僕は決して大きな会場でやるのが目的ではないんです」と語り、なるべくたくさんの人に自分たちの音楽を届けたいという想いを改めて口にした。


「アコースティックでしんみりして終わるのも、なんか違うかなと思うんで!アンコールぶっ飛ばしていこうと思います!」とまたまたyasuが叫び、「DRAGON CARNIVAL」「エストエム」を披露。会場中の観客の手があがり、メンバーもオーディエンスも一斉にヘドバン。会場を再び大熱狂に落とし込んで、この日のライブは終了した。


 今年で活動8周年を迎えたABCだが、これまでにリリースしたシングル・アルバムは全てオリコン上位にランクインし、9月からはアリーナツアーを控えるなど、ビジュアル系界隈のみならず音楽シーンにおいて大きな存在感を放っている。この日の会場を見ていても、客層の広さに驚いた。カップルや親子連れ、また男性の姿も目立つ。女性客の年齢層も幅広い。「オレらはビジュアル系だから」と、MCでもyasuは自らがビジュアル系であることを繰り返し強調するが、高い演奏クオリティー、明確な“ロックスター”的ステージパフォーマンス、そしてリスナーを選ばないポップな音楽性ーーそれらがABCを“全方位対応型”ビジュアル系アーティストに押し上げている。


 全都道府県ツアーなども行い、ファンの層を広げていく活動を続けるABCの姿勢はビジュアル系バンド界において際立っている。ファンへの感謝祭である今回のフリーライブもその姿勢の一環に他ならない。この丁寧なコミュニケーションこそがABCとファンとの絶対的な信頼感を築き、新しいリスナーがABCに出会うチャンスを常に作り続けていくのだろう。ステージを去る前、何度もオーディエンスに向かって「ちゃんと見ててくれてありがとうね!」と呼びかけていたyasu。合計10万人を熱狂させた夏を経て、ABCはこれからも全速で駆け抜けていくに違いない。


(文=岡野里衣子)