2015年08月02日 10:31 弁護士ドットコム
「人生一度。不倫をしましょう」。こんな刺激的なキャッチフレーズを掲げる既婚者向け出会い系サイト「アシュレイ・マディソン」が7月中旬、ハッカーの攻撃にあって、会員情報が流出した。
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報道によると、アシュレイ・マディソンの運営会社は会員情報の内容や規模を明らかにしていないが、ハッカー側はほとんどの会員の氏名や住所、クレジットカード情報などを入手したとみられる。ハッカー側はサイト閉鎖を求めており、運営会社が応じなければ、情報を公開すると脅迫しているという。
カナダ発のアシュレイ・マディソンには、世界48カ国の約3800万人が登録し、日本にも約180万人の会員がいるとされる。今回のようなケースで、運営会社に法的な責任は生じるのだろうか。たとえば、情報流出がきっかけで、会員の「不倫」が配偶者にバレて離婚に至った場合、運営会社は賠償責任を負うのか。齋藤裕弁護士に聞いた。
「そもそも、『不倫をしようとしていた』という情報は、プライバシーとして保護されるものだと考えます」
齋藤弁護士はこう切り出した。どうしてそういえるのだろうか。
「プライバシーについては、さまざまな定義がなされます。たとえば、東京地裁2006年5月23日判決は『他人に知られたくない私的な事柄をみだりに公表されないという利益』としています。
この定義から考えると、アシュレイ・マディソンが管理していた会員情報は、プライバシーとして保護される情報だといえます。
アシュレイ・マディソンあるいはそのシステムを管理していた会社は、顧客情報がプライバシー情報である以上、これが漏えいしないように、安全対策を講ずべき義務を負っていたと考えられます」
アシュレイ・マディソンがそのような安全対策を講じていなかったとしたら、どうなるのだろうか。
「仮に、アシュレイ・マディソンが通常要求されるレベルの対策を講じていなかった場合、プライバシー侵害の不法行為等を理由とした損害賠償義務を負う可能性があります」
もし、情報漏えいによって、配偶者に不倫がバレて、会員が離婚に至った場合、アシュレイ・マディソンに責任は生じるのか。
「そのような場合ですが、そもそも不倫自体が離婚事由になり得るものです。顧客もそのことを知りつつ不倫をしているわけですから、離婚をしたことの損害について賠償請求することは難しいでしょう」
齋藤弁護士はこのように述べていた。
(弁護士ドットコムニュース)
【取材協力弁護士】
齋藤 裕(さいとう・ゆたか)弁護士
刑事、民事、家事を幅広く取り扱う。サラ金・クレジット、個人情報保護・情報公開に強く、武富士役員損害賠償訴訟、トンネルじん肺根絶訴訟、ほくほく線訴訟などを担当。共著に『個人情報トラブル相談ハンドブック』(新日本法規)など。
事務所名:新潟合同法律事務所
事務所URL:http://www.niigatagoudou-lo.jp/