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人件費削減目的で社長が「会社を休め」と命令。これって違法?【小町の法律相談】

2015年07月31日 12:01  弁護士ドットコム

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零細の下請け会社の正社員。給与は時給制です。最近、社長から「この日とこの日休んで」と命令されるケースが出てきました。


社長は何かと人件費を削減したいようで「疲れるから休んでいいよ」などとごまかそうとしますが、どうみても給料を払いたくないだけなのが見え見えです。勝手に休日数を決められると、雇用先として信用できないし、私の生活もかかってくるので不安になります。


雇用者が「年次休暇だ!だから休め!」と勝手に決めることは法的に可能なのでしょうか。


(この記事はYOMIURI ONLINE「大手小町」とのタイアップ企画です。質問は大手小町の掲示板「発言小町」に寄せられた投稿をもとに、大手小町編集部が再構成したものです。トピ「社長が勝手に休暇を取らせようとしてきます」はこちらhttp://komachi.yomiuri.co.jp/t/2015/0712/721217.htm)


A. 勝手に休日を増やして、その分の賃金を支払わないことは認められません

労働契約や就業規則で決められている休日を、使用者(会社側)が勝手に変更したり、一方的に休日を増やしたりして、その分の賃金を支払わないということは法的に認められません。


使用者の責任で休業となった場合には、労働者が休んだ分について、賃金の全額を請求できます。


ご相談の事例のように、人件費削減を口実として勝手に休日を決められたという場合は、使用者の責任で休業となったものといえますので、使用者は賃金全額の支払い義務があります。


もっとも、実際に経営が困難に陥っていて、労働者を休ませないと成り立たないような状況で、そのことに使用者に責任がない場合や、就業規則や労働契約で休業の場合の賃金について別途定めている場合には、例外的に、使用者に賃金の全額までは請求することはできません。


ただし、そのような場合であっても、天変地異などの不可抗力でやむなく休業となったという特殊な場合でない限り、労働基準法では使用者は平均賃金の60%以上の休業手当を払わなければならないとされています。


なお、この労基法の規定について、「どんな休業でも平均賃金の6割を払えば済む」と誤解している使用者が散見されます。


あくまでも、所定の労働日における所定の賃金は全額支払われなければならない、という大原則を押さえてください。




【取材協力弁護士】
今泉 義竜(いまいずみ・よしたつ)弁護士
2008年、弁護士登録。日本労働弁護団事務局次長。青年法律家協会修習生委員会事務局長。労働者側の労働事件、交通事故、離婚・相続、証券取引被害などの一般民事事件のほか、刑事事件、生活保護申請援助などに取り組む。首都圏青年ユニオン顧問弁護団、ブラック企業被害対策弁護団、B型肝炎訴訟の弁護団のメンバー。
事務所名:東京法律事務所
事務所URL:http://www.tokyolaw.gr.jp/