トップへ

「判例百選」ネットで無断転載した男性逮捕――出版社「有斐閣」と刑法学者が告訴

2015年07月28日 18:21  弁護士ドットコム

弁護士ドットコム

記事画像

六法や判例集など法律の専門書で知られる老舗出版社「有斐閣」(ゆうひかく)はこのほど、自社が発行する判例集『判例百選』シリーズがインターネット上に無断転載されていたと発表した。有斐閣は著作者の協力を得て刑事告訴し、警視庁が容疑者を逮捕したという。


【関連記事:ビジネスホテルの「1人部屋」を「ラブホ」代わりに――カップルが使うのは違法?】



判例百選シリーズは、憲法や民法など主要な法律に関する代表的な「判例」の概要を簡潔に紹介するとともに、その判例について大学教授らが解説した文章をまとめた判例解説書。法学部生や法科大学院生など、法律を学ぶ人にとって必読といえる人気シリーズだ。



有斐閣によると、2012年ころから、判例百選シリーズのほとんどが「法学天」というウェブサイトに無断で複製・掲載されていたという。「これら行為を断じて許すことはできない」と考えた有斐閣は、著作者の一人で、著名な刑法学者である山口厚・早稲田大学法学学術院教授の協力を得て、著作権侵害行為で刑事告訴した。告訴を受け、今年4月12日に、関西在住の男性が著作権侵害の容疑で逮捕されたという。



有斐閣は7月上旬、ウェブサイトに今回の経緯を説明する文書を掲載。「このような著作権侵害行為が行われたことは誠に遺憾であり、学術文化の健全な発展と著作権者の正当な利益を害する行為に対しては、今後も厳正かつ断固たる姿勢で臨んでまいる所存です」と記している。



有斐閣の担当者は、弁護士ドットコムニュースの取材に対して、「法律に則った形でデータを利用してもらうのは全くかまわない。だが、今回は、著作権を侵害する形で行われていた。著作者に対して失礼だし、我々も経済的な損失を受けていた。こうした対応を取らざるを得なかった」とコメントした。



損害賠償など民事上の責任追及をするかどうかについては、「現時点では決まっていない」としている。


(弁護士ドットコムニュース)