2015年07月28日 15:11 弁護士ドットコム
三重県四日市市の東名阪自動車道で7月中旬、高速バスが大型ダンプカーに衝突・横転して、バスの乗客など23人が重軽傷を負う事故が起きた。事故を起こしたバスの運転手は「11日連続」の勤務だったという。
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報道によると、バスの運転手は岡山県倉敷市内の観光会社に所属していた。7月3日に休暇を取ったあと、7月4日~6日と7月7日~9日はそれぞれ2泊3日の観光ツアーのバスに乗務。10日夜からは、岡山~千葉間の高速バスに乘っていた。昼間はホテルなどで休んでいたという。
11日連続の勤務について、観光会社は「休憩時間も十分に確保しており、違法性はないと考えている」「点呼の際、本人から体調不良の訴えもなかった」と説明したそうだ。はたして、本当に法的に問題ないのだろうか。竹之内洋人弁護士に聞いた。
「労働基準法上では、休日は『4週に4日以上与えればよい』ことになっています。
また、手順を踏めば、変形労働時間制として『週40時間を超える労働時間』を定めることもできます。さらに、労使協定があれば、『時間外・休日労働』をさせることもできます。
結局のところ、11日連続の勤務をさせることを禁じる法的規制はない、というのが現状です」
竹之内弁護士はこのように述べる。ルールそのものに欠陥があるとはいえないのだろうか。
「連続勤務は疲労を蓄積させますから、労働者の健康を害するおそれがあります。また、今回のような大きな事故につながるおそれもあります。
過労死がなくならないのも、過重労働を許す労働基準法の規制が緩すぎるからともいえます。現行の規制を事実上さらに緩める労働基準法改正案が今国会に提出されていますが、もっての外のことだと考えています」
バスの運転手は人の命をあずかる職業だといえる。特別な規制はないのだろうか。
「バスの運転手については、厚労省の行政指導により労働時間の限度が示されています。
しかし、それでも『4週間の労働時間は<286時間まで>可能』『勤務間の休憩時間の限度は<8時間>』『休日労働の限度は2週に1回』というものです。
あまりにも緩すぎると思います。人の命と健康を守るため、労働時間規制は強化されるべきでしょう」
竹之内弁護士はこのように述べていた。
(弁護士ドットコムニュース)
【取材協力弁護士】
竹之内 洋人(たけのうち・ひろと)弁護士
札幌弁護士会、日本労働弁護団員、元日本弁護士連合会労働法制委員会委員
事務所名:公園通り法律事務所
事務所URL:http://www.pslaw.jp/