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電気柵「感電死事故」 安全策を講じなかった「設置者」が罪に問われる可能性は?

2015年07月28日 12:51  弁護士ドットコム

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静岡県西伊豆町の仁科川支流で7月中旬、動物よけの「電気柵」の近くにいた7人が感電し、2人が死亡するという事故が起きた。電気柵は、設置者の男性が自作したものだったが、安全対策が不十分だったようだ。静岡県警は、柵を設置した70代の男性が、電圧を上げていた可能性があるとみて、重過失致死傷容疑の適用も視野に捜査を進めている。


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報道によると、原因となった獣害対策の電気柵は市販品ではなく、電気柵を設置した男性が部品を組み合わせて自分で作った。電気柵は、土手の対岸の納屋内にある家庭用電源の100ボルトのコンセントにつながっていた。さらに、昇圧器が取り付けられていて、440ボルトまで電圧が引き上げられていた。



電気事業法では、30ボルト以上の電源を使用する電気柵には、漏電遮断装置を設置することが義務付けられているが、こうした装置は付いていなかった。安全対策がとられていなかったことで、被害が大きくなった可能性がある。



今回の事故で、柵を設置した男性が罪に問われる可能性はあるのだろうか。刑事事件に詳しい伊藤諭弁護士に聞いた。



●注意義務違反があったのか?


「この男性に罪に問われるような『不注意』があったといえるかどうかが、ポイントになります」



伊藤弁護士はこのように述べる。どんな場合に不注意があったといえるだろうか。



「ここでいう不注意とは、この人に注意義務があり、それを怠ったことをいいます。注意義務とは、人が死ぬという結果を予見するべき義務と、それを回避する行動をとる義務のことです。こうした見地から、男性の不注意を判断することになります。



そして、その不注意の程度が大きい場合、つまり、わずかな注意を払えば危険を察知することができ、結果発生を回避できただろうとと認められる場合は、『重大な過失』に該当し、重過失致死罪が適用されることになります」



●今後の捜査のポイントは?


「今後の捜査としては、こうした結果を予見することができたのか、またそれを回避する行動をとっていたのかといった点が捜査の中心になります。



もっとも、一般に高電圧の電気柵を設置すれば、それに人が触れて感電して死亡する結果については容易に予測できるでしょうし、漏電等により感電する可能性もありうるでしょう。



こうした結果を回避するために、電圧を調整したり、電流が流れる時間をごく短時間に制限したりといった行為が考えられます。電気事業法に定める漏電遮断装置も結果回避の手段ですが、設置されていたという報道はありません。



報道を前提に考えると、重過失致死罪の適用は十分ありうると考えられます」



伊藤弁護士はこのように分析していた。


(弁護士ドットコムニュース)



【取材協力弁護士】
伊藤 諭(いとう・さとし)弁護士
1976年生。2002年、弁護士登録。横浜弁護士会所属(川崎支部)。中小企業に関する法律相談、交通事故、倒産事件、離婚・相続等の家事事件、高齢者の財産管理(成年後見など)、刑事事件などを手がける。趣味はマラソン。
事務所名:市役所通り法律事務所
事務所URL:http://www.s-dori-law.com/