2015年07月28日 11:41 弁護士ドットコム
岡山市が固定資産税と都市計画税の算定を誤り、市内の男性から48年にわたって、過大に税金を徴収していたことが明らかになった。岡山市の7月23日の発表によると、1968年~2015年度の約170万円分が過大に課税されていた。
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報道によると、岡山市内でアパートを経営している60代男性が所有する住宅用地について、課税額に影響する「敷地の間口」を実際より広く評価するなど、最大で年間約5万円を過大に徴収していた。
岡山市はミスを認めたうえで、男性に約120万円を返還するとしているが、今回のような税金の過大徴収があった場合の「返還ルール」はどうなっているのだろうか。税にくわしい山内良輝弁護士に聞いた。
「固定資産税の課税ミスは、岡山市だけではなく、全国的にも少なくありません」
山内弁護士はこのように述べる。どうして、そのような状況になっているのか。
「いくつか原因があります。
まず、固定資産税の課税は、総務省の『固定資産評価基準』にもとづいて行われます。ところが、土地の間口や奥行きなどの要素によって、課税の仕方が異なってくるなど、『固定資産評価基準』の解釈運用が大変に難しいのです。
また、固定資産税を担当しているのは、市役所の固定資産税課ですが、人事異動によって、職員が市役所の中をぐるぐる移動するため、なかなか課税部門の専門性が深まらないこともあります」
課税ミスがわかった場合、過大に納めた分を返してもらうルールはどうなっているのだろうか。
「固定資産税の課税ミスが発覚した場合、過大課税分(過誤納金)を返還してもらうためのルールがいくつかあります。
最も典型的なものは、地方税法の規定にもとづいて、自治体に過誤納金の返還を求める方法です。しかし、この手続きは、自治体が課税ミスを認めていることが前提です。しかも、5年の消滅時効がありますので、5年を超えた分の返還を求めることはできません」
ほかには、どんなルールがあるのだろうか。
「さきほどのルールを補完するものとして、各自治体が設けている『過誤納金返還条例』にもとづいて、過誤納金の返還を求める方法があります。
この手続きであれば、5年を超えた分も返還を求めることができます。
しかし、こちらも、自治体が課税ミスを認めていることが前提です。しかも、条例を設けている自治体とそうでない自治体があります。条例を設けていない自治体では使うことができません」
もし、自治体が課税ミスを認めていなかったり、自治体に「条例」がない場合はどうすればよいのだろうか。
「そのような場合は、裁判所に自治体の課税ミスを認めてもらわなければ、過誤納金を返還してもらうことはできません。専門性の高い訴訟なので、その分野に強い弁護士に相談するとよいでしょう」
このように述べたうえで、山内弁護士は次のようにアドバイスを付け加えていた。
「課税ミスはなかなか発覚する機会がないので、過去何十年にもわたって課税ミスが続いていたという事例が少なくありません。
一般の方の防衛策としては、5年に1回ぐらい、または近いうちに相続が予想されるような時期に、固定資産税に強い税理士に『この土地、建物の課税は正しいですか?』などと相談してみるとよいでしょう」
(弁護士ドットコムニュース)
【取材協力弁護士】
山内 良輝(やまうち・よしてる)弁護士
10年の検事経験を経て、弁護士に転身。特捜時代に多くの脱税事件を手がけた経験を生かし、弁護士時代も脱税事件の弁護や税金の取りすぎに対する税務訴訟を多く手がける。大学教員も務める福岡の町弁(町の弁護士)。通称「山弁」。
事務所名:和智法律事務所