トップへ

嵐、三代目JSB、セカオワ…海外作家とのコラボはなぜ増えている?

2015年07月28日 07:10  リアルサウンド

リアルサウンド

嵐。(C)タナカケンイチ

 J-POPシーンではここ数年、海外の音楽作家が人気アーティストに楽曲提供するケースが増えている。


 特に多いのがスウェーデンの音楽作家だ。同国は米国、英国に次いで世界第3位の“音楽輸出国”へと成長しており(参照:英国The Independence紙の記事)、テイラー・スウィフトなどを手掛けたマックス・マーティンや、アリアナ・グランデにマルーン5のクレジットに携わっているヨハン・カール・シュスターをはじめ、多数の作曲家が世界のアーティストへ楽曲提供を行っている。


 同国の音楽作家は嵐や三代目 J Soul Brothersなどの男性グループ、少女時代やKARAなどのK-POP勢の楽曲にクレジットされることが多い。ジャニーズ事務所もスウェーデンの音楽出版社に投資をするほどで、今では各グループの音楽的特徴を生み出すほど両者の関係は密となっている。(参考:嵐とAKB48、音楽的アプローチの違いは? チャート上位2曲を洋楽の視点で読み解く)。とくに嵐はスウェーデン人作家を登用する機会が年々増えており、彼らのシングル売上枚数ランキングを見ても、2位の「Calling」(作曲:Andreas Johansson/youwhich)、8位「ワイルド アット ハート」(作曲:Chris Janey/Junior Jokinen)、9位「迷宮ラブソング」(作曲:iiiSAK/Dyce Taylor)、10位「Love Rainbow」(作曲:iiiSAK/Dyce Taylor)と、10枚中4枚の表題曲をスウェーデンの作家陣が手掛けているのだ。


 なぜスウェーデンの音楽作家は日本の音楽業界で重宝されるのだろうか。まず挙げられるのは、スウェーデン人作家が各国の音楽マーケットに対して適応力があり、J-POP向けの楽曲を書くことに長けていることだ。


 作詞家・zopp氏は「2003年にリリースされたKinKi Kidsの『薄荷キャンディー』は、曲をスウェーデンの作家陣が書いて、歌詞は松本隆さんが手がけており、このあたりから海外作家とのコライトやプロデュースが始まった」と振り返った上で、当初スウェーデンの作家たちは「Aメロ、Aメロ、サビという楽曲構成」を書くことが多かったが、日本の編曲家たちがBメロを加えて曲を仕上げていくのを見て、J-POPの楽曲構造を学習して「自発的にBメロを作るようになってきた」と解説している。(参照:リアルサウンド連載『作詞家zopp「ヒット曲のテクニカル分析」』


 また、J-POPのマーケットが、動画サイトなどの登場やインターネットの普及で、以前よりも早く海外の時流を取り入れようとしているのもポイントだ。たとえばSEKAI NO OWARIはアメリカのダン・ジ・オートメイタ―をプロデューサーに迎えた「ANTI-HERO」で本格的な世界進出を予感させ、三代目 J Soul Brothersは、オランダのEDMプロデューサー・アフロジャックが手掛けた最新曲『Summer Madness』でさらなるブレイクを視野に入れている。


 今後、日本のポップミュージックを媒介にして、例えばマックス・マーティンのようなスター作家が現れるのか、それとも国内の作家勢が巻き返しを図るのか。作家同士の競争によるクオリティの底上げに期待したい。(向原康太)