「土曜日に不運だったぶん日曜日は、すべていい方向に転んだ」
ホンダの新井康久総責任者は、そう言ってハンガリーGPを述懐しはじめた。
レースはスタートから荒れ模様。「土曜日の夜に雨が降り、天候も一転して涼しくなったので、難しいレースになるだろう」と新井総責任者が予想していたとおりになった。そんな状況でも、2台のマクラーレン・ホンダはセットアップが決まっていたため、序盤からポイントを狙える位置でレースを展開。ほとんどのドライバーが1回目のピットストップを終えた22周目には、フェルナンド・アロンソが10番手に上がってきた。
まったくトラブルがなかったわけではない。2回目のピットストップ直前に、右リヤタイヤの空気圧が下がるという事態がアロンソを襲った。幸いピットインのタイミングが近づいていたので大きな影響はなく、36周目にタイヤ交換して事なきを得る。2回目のピットストップを終えた時点で、アロンソ10番手、ジェンソン・バトン12番手。依然2台そろって入賞圏内を射程にとらえていた。
「2回目のピットストップでミディアムに交換したあとは、そのタイヤで最後まで走り切る予定でいた」(新井総責任者)というマクラーレン・ホンダ。チェッカーフラッグまでバトンは34周、アロンソは33周。だが、ここでアロンソを再び不運が襲う。
ニコ・ヒュルケンベルグがクラッシュして9番手に上がった直後、今度は右リヤタイヤのブレーキダクトに捨てバイザーが入り込んだ。ブレーキ温度が急上昇したアロンソは、ピットインするしかなかった。幸運だったのは、ちょうどセーフティカーが入っていたため、ポジションをふたつ落としただけで、バトンの後ろ11番手で戻れたことだった。
49周目にレースが再開すると、アロンソはミディアムタイヤで走り続けるバトンを、すぐさまオーバーテイク。55周目にはトロロッソのカルロス・サインツJr.を抜き去り、さらに他車の脱落などにも助けられたアロンソは今季マクラーレン・ホンダのベストリザルトとなる5位でチェッカー。バトンも9位に入り、初めてふたりそろっての入賞を達成した。
「予選から考えれば、非常に良い結果。今日のレースでパワーユニット側は、なんの制限も加えずにすべてを出し切った。システム的には何も問題なかった。パワーユニットだけでなく、車体側も3日間でものすごく進歩し、方向性に間違いはないということが確認できた。レースペースでは、かなり上に近づいたと思う」
新井総責任者はF1復帰後、初のダブル入賞に笑みを見せたが、その笑顔も長くは続かなかった。
「これからF1は約4週間の休みに入るが、夏休み明けにはパワーユニットに厳しいスパが待っている。ベルギーGPに向けて準備をしっかり行わなければならないので、のんびりしているわけにはいかない。忙しい夏休みになると思う。きっちりパワーユニットを仕上げて、後半戦に臨みたい」
まだまだ課題は多いが、前半戦を良いかたちで締めくくったマクラーレン・ホンダ。後半戦での進化を楽しみにしたい。
(尾張正博)