2015年07月27日 20:31 弁護士ドットコム
外務省は6月、国際結婚が破綻して、別の国に暮らすことになった親子の面会交流に「テレビ電話」システムを導入した。通話を第三者がモニタリングし、面会する親から不適切な言葉があったら通信を遮断することもできるという。
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この新システムは、配偶者間暴力(DV)を受けて離婚し、日本に帰国した親子などを想定している。モニタリングすることで、新たな被害への心配を軽減する仕組みだ。自宅のパソコンやスマートフォンで利用できるという。
日本では、離婚理由にDVがあった場合などに、写真や手紙を手渡すだけの「間接交流」という方法がとられてきた。国際結婚カップルだけでなく、国内の元夫婦にも、この「テレビ電話面会システム」は有効ではないか。離婚問題にくわしい小田紗織弁護士に話をきいた。
「面会交流は、子と離れて暮らす『親の権利』という側面と、子どもの人格の円満な発達に不可欠な両親の愛育を求める『子の権利』としてのふたつの側面があります。テレビ電話による親子面会の方法は、写真を送るだけといった『間接交流』よりは、『交流』の体をなしています。ですから、良い方法だと、個人的には思います」
もし、国内の元夫婦に導入するとしたら、どんな形をとることができるだろう。
「面会交流は、協議や調停でお互いの合意がありさえすれば、どのような方法でも大丈夫です。ですから、テレビ電話による面会方法も含めて、元夫婦が柔軟に決めることができます。
親と子が直接面会する場合は、ある程度の時間を要することが想定されます。子と、監護養育している親、監護養育していない親のそれぞれの都合を調整しなければならないため、月1回程度のペースの面会交流を決める場合が多いです。もし、これをテレビ電話で面会できるようにすれば、離れて暮らす親子にとって、時間や費用、さらには心理的負担が軽減し、より面会交流が実現しやすくなり、有効だと思います」
テレビ電話の面会を第三者がモニタリングする仕組みも、簡単にできるだろうか。
「技術的には簡単でしょう。けれど、行政などの第三者が介入するシステムとして導入することは、難しいのではないでしょうか。
外務省が導入した国際結婚破たん後のテレビ電話による親子面会システムは、ハーグ条約と、これを実施するための国内法に基づいて構築されたものです。
親子からの援助申請があれば、外務省は彼らの面会交流を支援しなければならないという背景があります。また、面会交流の件数も国内の面会交流案件に比較して格段に少ないことから、第三者が通話をモニタリングするといったきめ細やかな対応が可能なのだと思います。
これを国内の膨大な数の面会交流案件にも使えるようにシステム化することは、その根拠(法制度)、管轄、モニタリングする人材の確保、費用、モニタリングとプライバシーの問題など、様々なハードルがあるでしょう」
小田弁護士はこのように話していた。
(弁護士ドットコムニュース)
【取材協力弁護士】
小田 紗織(おだ・さおり)弁護士
法科大学院1期生。「こんな弁護士がいてもいい」というスローガンのもと、気さくで身近な弁護士を目指し活躍中。
事務所名:神戸マリン綜合法律事務所
事務所URL:http://www.kobemarin.com/