夏休み前最後の一戦となるハンガリーGPの予選は、メルセデスAMGのルイス・ハミルトンが5戦連続となるポールポジションを獲得。低速サーキットとして知られるハンガロリンクでもその速さをみせつけ、同じマシンを駆るチームメイトのニコ・ロズベルグをも圧倒しました。
今週末のハミルトンは、「週末に一貫してこれほど強力なパフォーマンスを示せたことは今までなかったと思う」と語っているとおり、金曜最初のフリー走行から全セッションを通じてトップタイムを記録。Q3でも、2番手のロズベルグに0.575秒もの大差をつけました。ハミルトンにとってこのハンガロリンクは、過去4勝を挙げている得意のサーキット。対するロズベルグは、予選の開始直後からアンダーステアの症状に悩まされていましたが、それがなかたったとしても、今回ハミルトンを倒すのは非常に難しかったのではないか……そう感じさせるほど、ハミルトンのパフォーマンスは高いレベルで仕上がっていると言えるでしょう。
こうなると、ポールポジションからスタートするハミルトンの優位は、揺るがないように思えます。先頭を走ることでペースをコントロールできるハミルトンは、タイヤを労ることもできます。フリー走行2回目(FP2)のロングランもほぼ互角のペースで、予選における最高速もその差が1km/hもないとなれば、ロズベルグが後方から突いたとしても、コース上でオーバーテイクは非常に困難。しかも、ハンガロリンクはただでさえ抜きにくいコースであります。つまり、チームメイトのアンダーカット(ライバルよりも先にピットインして新しいタイヤに交換し、新しいタイヤの性能を活かしてペースを上げ、ライバルよりも前に出ること)さえ封じておけば、勝利は彼の手中にあると言ってしまっても、過言ではありません。
とはいえ、予選でハミルトンに敗れたロズベルグは、「このセットアップがレースで助けになるはず。アンダーステアは、リヤタイヤを長持ちさせるはずだ」と、決勝に向けての自信を示しています。チームがふたりのドライバーの戦略を分けることはないでしょうが、万が一ハミルトンのスティント後半のペースが低下するようなことがあれば、ロズベルグにも勝利へのチャンスが見えてくるかもしれません。また、ロズベルグがスタートでハミルトンの前に出ることに成功すれば、ハミルトンとてそう簡単にオーバーテイクすることはできないでしょう。
予選3番手につけたのはフェラーリのセバスチャン・ベッテルです。ただしベッテルが気をつけておかなければならないのが、隣の4番グリッドに並んだレッドブルのダニエル・リカルドです。モナコ以来となる2列目グリッドを獲得したレッドブルのエースは、すでにお伝えしているようにFP2のロングランで素晴らしいペースを披露していました。そのペースはメルセデスをも上回る可能性を見せていたのです。
リカルドの予選での最高速は、全体の17番目(309.6km/h)。そのため、全開区間のあるセクター1のタイムは、全体の6番手と劣りました。しかし、よりツイスティなセクター2とセクター3ではそれぞれ3番手、4番手と、セクター1で失ったタイムを補っています。リカルド自身、コース特性とイギリスGPで投入したアップデートの両方が好調の原因と語っています。リカルドは金曜日にエンジンを派手にブローし、心配させましたが、そのエンジンは古いスペックものでした。土曜日に搭載した新スペックのパワーユニットにはトラブルの兆候は見られず、リカルド自身も不安を否定しています。なんと言っても、リカルドは昨年のハンガリーGPのウイナー。今季初表彰台はもちろん、あわよくばスタートでポジションを上げたり、他とは戦略を分けるなどして、メルセデスと優勝争いを繰り広げるようなシーンを期待したいところです。リカルドはほとんど使っていないソフトタイヤ(コースイン直後に赤旗が出たため、インラップでした使っていないモノ)を1セット残しているというのも強みです。
ところで、フェラーリは初日の走行結果からすれば、土曜日は調子を上げてきた感があります。初日、トラブルが続いたベッテルは、土曜日はほぼノートラブルで、前述の通り3番手グリッドを獲得。ライコネンは予選直前に水漏れのトラブルがあったものの、ライコネンいわく「マシンの挙動は良かった」とのことで5番グリッド。レースペースはレッドブルに劣っているのかもしれませんが、最高速のアドバンテージ(予選/ベッテル:313.9km/h、ライコネン:314.3km/h)を活かし、レッドブルの前を死守し、アンダーカットを封じて、表彰台を手にしたいところです。
一方、カナダ、オーストリアと表彰台を獲得し、前戦イギリスでも序盤のレースをリードしたウイリアムズ勢は、バルテリ・ボッタスが予選6番手、フェリペ・マッサも8番手と、最近のパフォーマンスは影を潜めまてしまいした。予選最高速トップを記録したマッサは、その恩恵を受けたセクター1こそ4番手タイムをマークしましたが、コーナーの連続するセクター2と3ではそれぞれ10番手、8番手に沈んでいます。マシンのダウンフォースの不足が顕著に現れていると言えましょう。FP2では、トロロッソにもロングランのペースが劣っていましたが、さてどこまで粘ることができるでしょうか?
最後に、今季初のQ3進出の期待がかかっていたマクラーレン・ホンダは、またしてもトラブルによって下位に沈みました。ペース的には後ろに並んだザウバー勢と戦えそうですが、前を行くフォース・インディアやロータス勢は最高速が速く、彼らを抜いてポイント圏内にたどり着くのは非常に厳しそうです。後半戦につなげる意味でも、完走を果たし、多くのデータを蓄積してほしいところです。
今季の前半戦を締めくくる第10戦ハンガリーGP決勝は、日本時間の今晩21時スタート。どうぞお見逃しなく。