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アカシック・理姫、クリス松村に真剣相談「たぶん、二重人格みたいな感じだと思います」

2015年07月26日 17:41  リアルサウンド

リアルサウンド

左:クリス松村 右:アカシック・理姫(写真=竹内洋平)

 ミニアルバム『DANGEROUS くノ一』でメジャーデビューを果たしたアカシックの理姫(Vo)、ポップミュージック・マニアとして知られるクリス松村の異色対談が実現! アカシックの音楽性、理姫のキャラクターについてのダメ出し(?)から、ふたりが愛する80年代のアイドルソング、そして、理姫の将来のビジョンまで、奔放すぎるトークをお楽しみください!


(参考:アカシック、クアトロ初ワンマンでバンドコンセプト明かす 「『男と女の日常とラブ』を追い求めてる」


■「そもそも私は統一感のない女」(理姫)


クリス松村:(『DANGEROUS くノ一』の)ジャケットを見たとき、なんてお下品なんだろうと思ったのよ。二丁目好みの写真だなって。


理姫:ハハハハハ! でも、そうですよね。


クリス松村:ただ、お下劣だけどすごいインパクトがあったんですよね。で、曲を聴いたときにまず思ったのは、写真と声のイメージがあまりにも違うなってこと。もっとブラックミュージック系のソウルフルな感じなのかと思ってたら、ぜんぜん違う声じゃない? 1曲目の「CGギャル」はイマ風のロックンロールなんだけど、ぎっしり詰まった歌詞をすごいスピードで歌っていて。それがすごくいいなと思ったから、私の連載(雑誌『週刊ザテレビジョン』で連載中の『クリス松村のJ-POP講座「ベストヒットクリス!」』)でも紹介したんだけどね。


理姫:わ、ありがとうございます!


クリス松村:でもさ、ジャケットは、どうしてこういう写真になったの?


理姫:撮影してくれた写真家の方とかアートワークの方と相談しながら決めたんですけど、インディーズのときから「アカシック=女」っていうイメージがあったと思うんですよね。女のめんどくさいところ、気持ち悪いところも含めて。


クリス松村:そこをぜんぶ見せちゃってるんだ。


理姫:アカシックとしては、これでも隠しつつやってると思ってるんですよ。世の中には女のドギツイ部分をそのまま歌詞に突っ込んでる人もいるけど、私はそういうのはイヤで。だから、ゲスい言葉をカットすることもあるんです。


クリス松村:驚かれるような歌詞も書けるんだけど、あえて抑えてるってことね。


理姫:はい。話題性だけになるのもイヤだし、衝撃的な発言とかもしたくなくて。できるだけキレイな言葉を使うことは心がけてますね。でも、「女」っていうイメージがあるのは確かなので、ジャケットではそこを強調していこうって。


クリス松村:あと、アルバムの前半と後半でぜんぜん違う世界になるじゃない? レコードでいうと1曲目(「CGギャル」)から5曲目(「ベイビーミソカツ」)までがA面で、6曲目(「真夜中のクローンラベル」)から9曲目(「さめざめ」)までがB面だと思うんだけど、A面は「CGギャル」みたいないまどきのロックンロールだったり、「香港ママ」(チャイニーズ・テイストのダンスチューン)みたいな曲もあって。B面はまったく雰囲気が違ってるでしょ。


理姫:そうですね。いまの分け方でいうと、B面は私の素の部分がより出てるかも。


クリス松村:あ、そうなのね。このアルバムを聴いたときね、理姫さん自身はどっちの世界が好みなんだろう?と思って。


理姫:あ~。そもそも私は統一感のない……。


クリス松村:女なのね。


理姫:そうなんです(笑)。このアルバムの曲を並べたときも、統一感のなさに戸惑ってたくらいなので。ぜんぶ好きなんですけどね。


■「本物とお会いして、すごく独特のものを持ってらっしゃるのがわかった」(クリス松村)


クリス松村:じゃあさ、次は2枚組にしたら? 南義孝さんのデビューアルバム「摩天楼ヒロイン」はA面が「ヒーローサイド」、B面が「ヒロインサイド」という分け方だったんだけど、そういう感じで。


理姫:あ、いいですね!


クリス松村:やりたいことがあるんだったら、全部やったほうがいいからね。この9曲にしたのはどうして?


理姫:いまのタイミングで、この9曲をどうにかしてリリースしたかったんです。


クリス松村:吐き出してしまいたかったのか。じゃあ、次のビジョンもあったの?


理姫:具体的な話し合いはしてないんですけど、それぞれのメンバーの頭のなかには「次はこうしよう」っていうのがあったと思います。


クリス松村:バンドメンバーの言うことを聞くってことね。誰がリーダーなの?


理姫:ギターの奥脇達也ですね。


クリス松村:その人は他のメンバーの意見を聞くの?


理姫:リーダーはじつは自分の意見に自信がなくて、すぐに人の意見を聞きたがるんですよ(笑)。でも、すごくガンコなんですけど。


クリス松村:作詞は理姫さんなんでしょ? だったら、そのリーダーのことも歌詞にすればいいじゃない。優柔不断な男の歌(笑)。


理姫:え? 彼のために作詞したくないんで……。


クリス松村:いいんですか、そんなこと言って(笑)。でも、ボーカリストが前に出てたほうが、バンドは魅力的だからね。理姫さんとは今日が初対面だけど、本物とお会いして、すごく独特のものを持ってらっしゃるのがわかった。


理姫:あ、そうですか?


クリス松村:だってさ、今日のファッション(白のガーリーなドレス風ワンピース)といい、真っ赤なルージュといい、青いマニキュアといい……。このチグハグさは何なの?


理姫:(笑)このマニキュアは、昨日のライブ(7月12日に行われた渋谷クラブクアトロのワンマンライブ)のときに塗ってもらったんです。昨日のファッションに合わせたんですけど、気に入ったから、今日の服とは関係なく、このまま来ちゃいました。


クリス松村:ああ、そう……。そういう人なんだ。女としては、ちょっと微妙だけどね(笑)。


■「やりたい世界を人に話しても、ずっと『万人ウケしないよ』って言われてきた」(理姫)


理姫:ハハハハハ! 私、地元が横浜なんですけど、おネエの方がやっているお店に飲みに行ったときに同じこと言われました。「あなたは可愛くないわけじゃないのに。口の色と爪の色を直したら、もっとモテるわよ」って。


クリス松村:それがこのファッションに表れてるのよ。曲のこともそう。やりたいことがいっぱいあるのは良いことなんだけど、あまりにもチグハグすぎるとね……。バンドにもいろいろあるじゃない? たとえば「夏のイメージが強すぎて、そこから脱するのが大変」とか。でも、1回イメージがつかないと、どこにも遊びに行けないんだよね。


理姫:あ、なるほど。


クリス松村:やりたいことがたくさんあって、どんどん変わっていくのもおもしろいんだけど、一般の人はどれかひとつが欲しいのよ。


理姫:それもよくわかります。メンバーともよく話すんですよね。「アカシックらしさって、何なんだろう?」って。


クリス松村:駄菓子屋みたいな感じだからね、いまは。理姫さん自身はどの曲が好きなの?


理姫:「オールドミス」と「さめざめ」ですね。


クリス松村:ほら、だから「B面」でしょ。


理姫:そうですね。でも、私のやりたい世界を人に話しても、ずっと「それは万人ウケしないよ」って言われてきたので……。


クリス松村:そんなことないわよ。私も「オールドミス」と「さめざめ」が好きだもん。


理姫:ホントですかー。


クリス松村:キレイなバラードとかも合いそうな声だよね。松田聖子さんの「SWEET MEMORIES」とか、歌ってみたらどう?


理姫:すごい! 私、松田聖子さん大好きなんです~。


クリス松村:やっぱり。松田聖子さんの匂いがするもの。


理姫:嬉しい! 「ガラスの林檎」も歌ってみたいんですよ。


■「女の子ってホントの自分と人に見せる自分が違うでしょ?」(クリス松村)


クリス松村:「SWEET MEMORIES」のA面の曲ね。アカシックの世界とはぜんぜん違うけど、どうして聖子さんが好きなの? 憧れ?


理姫:バイトしてたお店の店長さんが松田聖子さんの大ファンで、ずっとDVDを流してたんですよ。それが本当に素晴らしくて、カラオケでも歌うようになって。憧れもあるかもしれないですね。真実かどうか知らないですけど、聖子さんのエピソードを聞くと、男の人を踏み台にしてるようなイメージがあって……。


クリス松村:女の人が憧れるようなことをやったのは確かだと思うけどね。そのことによって男の子のファンは激減したけど、それ以上の女性ファンが付いたわけだから。じゃあ、歌手になりたいと思ったきっかけの曲は何?


理姫:えーと、モーニング娘。かな。


クリス松村:え、ぜんぶアイドルじゃない!


理姫:中学2年のときにモー娘。が全盛期で、クラスの女の子はみんな入りたかったんですよ。


クリス松村:誰に憧れてた?


理姫:なっち(安倍なつみ)です。


クリス松村:イメージが真逆じゃないの! なっちは清純派だからね。特に「ふるさと」のときは。


理姫:そう、「ふるさと」! いい曲ですよねー。私、清純派が好きなんですよ。


クリス松村:やってることと言ってることが違うわね(笑)。


理姫:(笑)たぶん、二重人格みたいな感じだと思います。


クリス松村:そうなんだ(笑)。じゃあさ、「松田聖子さん、なっちになりたい自分」と「いまの自分」の掛け合いの歌詞ってどう?


理姫:いいですね! それについては言葉がいっぱい出てきそう。


クリス松村:タイトルは「二重人格」。


理姫:重くないですか?


クリス松村:大丈夫よ。だって、女の子ってホントの自分と人に見せる自分が違うでしょ? あなたはそれを歌にできる人だと思う。


理姫:わ、ホントですか? 


クリス松村:日々思っていることを書けば、いい歌詞になりそうじゃない? ふだん何をやってることが多いの?


理姫:食事ですかね。お酒も好きなので。


クリス松村:まだ若いから、朝まで飲んだりしてるの?


理姫:朝どころじゃないです。スケジュールが入っていればセーブしますけど、9時、10時くらいまで飲んでますね。


クリス松村:うわー、絶対に友達になれないタイプ。だったら、お酒をキレイに飲んでるようなイメージの歌詞も書けそうね。それをシティポップにするのよ。もしくは、理姫さんに合いそうな曲をカバーするの。


理姫:じゃあ「エモーション」がいい! 最近すごく好きなんですよ。


クリス松村:「エモーション」なんて、山ほどあるじゃない。あ、もしかして中原めいこさん?


理姫:そうです! それもお酒の席でお客さんがカラオケで歌っているのを聞いたんですけど、すごくいい曲だなって。その時代の歌謡曲に詳しいわけではないんですけど、とにかく好きな世界なんですよね。(中森)明菜ちゃんがよみうりランドでやったコンサート(1989年、よみうりランドEASTで行われた『AKINA EAST LIVE INDEX-XXII』)のDVDもすごく良いし。


クリス松村:それまでに出ていたシングルを全部歌ったコンサートね。「BLONDE」「LIAR」「I MISSED “THE SHOCK”」なんかも歌ってみたらいいかも。


理姫:「I MISSED “THE SHOCK”」は歌ったことあります! すごく難しかったですね~。


クリス松村:そうでしょ。


■「つまり、J-POP全体が幼くなってるのよ」(クリス松村)


理姫:でも、ホントに好きですね。いまのアイドルよりも、あの頃のアイドルの映像を見てるほうが楽しい。


クリス松村:どんなところに魅力を感じてるの? 今後の理姫さんにとっても重要なポイントになるかもしれないわよ。


理姫:そうですね……。ただ一生懸命に歌って踊るとか、若さだけではなくて、実力がすごいじゃないですか。


クリス松村:そうね。いまのアイドルは大勢のグループだけど、あの頃のアイドルはひとりでしっかり個性を出してたから。もうひとつポイントがあるんだけど、理姫さんは大人になりたくないタイプ? それとも早く大人になりたいほう?


理姫:大人になりたいです。35歳くらいがいいなって。


クリス松村:それが理姫さんの大人のイメージなのね。でもさ、ジュディ・オングが「魅せられて」を歌ったのは20代のときなの。(山口)百恵さんなんて21歳で引退してるんだから。


理姫:その映像も見ましたー。


クリス松村:つまり、J-POP全体が幼くなってるのよ。だから、あなたがやりたい世界を表現するためには、だいぶ遠くまで旅をしなくちゃダメかもね。


理姫:なるほど……。自分の人生を考えたときに、バンドがずっとついてくるとは思ってないんですよね。


クリス松村:え、そうなの?!


理姫:これはたぶんメンバー全員が思ってるんですけど、一生できるバンドじゃないと思うんですよ。「3年くらいやりたいことをやって、バッとやめる」みたいな話もしてたし。


クリス松村:困った対談になっちゃったわね(笑)。でも、昔から良いバンドっていうのは、それくらいの情熱でやってたと思いますよ。そう考えれば、アカシックの姿勢はすごくいいと思う。長く続ければいいってもんでもないしね。そうなると、やっぱりやりたいことをやるべきね。「CGギャル」みたいなロックンロールもいいと思うけど、ああいう感じの曲って、いますごく多いじゃない? 


理姫:そうですね。


クリス松村:そこから抜きん出るためにはどうしたらいいかって考えると、やっぱりフロントマンが魅力的であることが大事だと思うんですよね。私としては、理姫さんの個性、声を活かすのがいちばんいいと思う。いまのあなたの雰囲気、いまのあなたの声というのはいまだけのものだから、自分がやりたいことをやったほうがいいわよ。


理姫:そういうことはたまに考えますね。一か八か、自分のやりたいことをバシッと出したほうがいいんじゃないかって。


クリス松村:可愛く主張すれば大丈夫じゃない? でも、いまは厳しいからね……。ちなみに理姫さん自身は、将来的にどうしていきたいと思ってるの?


理姫:私は……幸せな結婚。


クリス松村:はっ? 結婚?!


理姫:結婚はしたいですねー。


クリス松村:でもね、あなた。結婚するとしたら、自主制作でも音楽を続けられるくらいの財力を持っている人じゃないとダメよ。


理:あ、素敵!


クリス松村:当たり前じゃない! 「レコード会社が出してくれなくても、俺が金を出してやるから、好きなようにやれよ」って言える男じゃないと。


理姫:かっこいいー。


クリス松村:恋愛と結婚は別だからね。妄想じゃなくて、そういう主張をぜんぶ歌詞にして出しちゃったら? それこそがアーティストの魅力なんだから。


理姫:それを私がやるとけっこう暗くなると思いますよ。


クリス松村:いいじゃない。浅川マキさんみたいなアーティストだっているんだから。そう考えると可能性は無限ね。


理姫:ありがとうございます。


クリス松村:歌詞はすごく大事なんだけど、いまの若い人たちって、言葉を理解できない子も多いじゃない? 松本隆さんの歌詞だって「意味がわからない」って言い出したり。


理姫:わかります。それは私もすごくイヤ。


クリス松村:残念というか……もったいないでしょ? 松本さんの歌詞を読んで「何で好きなのに別れるのか、意味がわからない」とか……。もちろんそれは一例だけど、そういう人たちも相手にしなくちゃいけないわけだから。


理姫:いやーそこには寄り添えないですね。


クリス松村:じゃあさ、逆に阿久悠さんくらい難しい歌詞を目指してみたら? 私なんか「この歌詞って、どういう意味なんだろう?」って何十年も考えたりしてるんだから。


理姫:それも昭和歌謡の魅力のひとつですよね。何十年も聴き続けて、それでもわからないところがある歌詞って、すごいと思うし。いまって、歌詞を読んだりすることも少ないと思うんですよ。それも切ないんですよね。


クリス松村:あら、けっこうわかってるじゃない。古風なところがあるんでしょうね、きっと。


理姫:そうなんですよー。


クリス松村:(笑)。でも、アカシックにとって、いまはすごく重要な時期ですよね。『DANGEROUS くノ一』はいろんな可能性を見せたアルバムだから、次がどうなるのか楽しみです。


理姫:がんばります! 今日はすごく勉強になりました。何だか占いしてもらったみたい(笑)。(森朋之)