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F1ハンガリーGP金曜フリー走行分析:打倒メルセデス筆頭にレッドブル急浮上。強力なロングランペース

2015年07月25日 14:10  AUTOSPORT web

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2015年F1第10戦ハンガリーGP ルイス・ハミルトン(メルセデスAMG)とダニエル・リカルド(レッドブル)
ドイツGPが中止されたこともあって、イギリスGPから3週間のインターバルを挟んでの開催となるハンガリーGP。その舞台となるハンガロリンクは、F1を開催する常設サーキットの中では、最も低速の部類です。そのため、絶対的なパワーよりも、ドライバビリティ(運転のしやすさ)の高さが求められます。結果として、他のグランプリとは、勢力図が変わることも少なくありません。現に今年のハンガリーGPも、初日のフリー走行(FP)の結果を見る限り、これまでのグランプリとはその勢力図が少し違っているようです。

 FP1でもFP2でも、トップタイムを記録したのはいつもの通り、メルセデスAMGでした。W06はそのパワーもさることながら、マシンバランスが優れており、どんなコースでも速さを見せます。ここハンガロリンクでも、それは同じ。今回も銀色のマシンが優勝候補筆頭であることは、間違いのないところでしょう。

 いつもと違うのは、そのメルセデスAMGを追いかけるチームです。今季序盤はフェラーリがその役を担い、ここ数戦はウイリアムズがその役目を引き継いだという印象でした。しかし、今回のハンガリーGPでメルセデスAMGを追うのは、どうやらレッドブルということになりそうです。

 今季のレッドブルは、パワーユニットとの“マッチング”が上手くいかず、なかなか良い結果を出せずにいました。チームと、パワーユニットの供給もとであるルノーとの間には、舌戦まで巻き起こったほど。つい数年前までチャンピオン争いに加わり、昨年も3勝しているチームが、今季ここまで表彰台もゼロ。ただ、前述したとおり、パワーよりもマシンのバランスに優れていることが求められるここハンガリーでは、メルセデスAMGを追う存在に一気に急浮上してきました。しかも、ロングランのペースでは、メルセデスAMGを上回っている可能性すらあります。

 レッドブルのふたり、ダニエル・リカルドとダニール・クビアトは、FP2でソフトタイヤを履いてロングランを開始しました。その際、リカルドは1分28秒台前半で走り始めると同等のタイムを4周にわたって並べ、クビアトは1分28秒台後半で走り始めると、徐々にペースを上げて4周目には1分28秒台前半に入れ、それを2周続けています。このFP2、メルセデスAMGのルイス・ハミルトンもニコ・ロズベルグも、ロングランで1分28秒5を切ったのは、それぞれ1度ずつ。レッドブルのペースが優れていたのは、間違いないところです。リカルドも「燃料が軽い状態でも多い状態でも好調だ」と語り、自信を見せます。

 ただ、彼らには大きな不安要素があります。リカルドは前述のとおり1分28秒台前半という素晴らしいラップを4周にわたって記録した後、派手にエンジンをブローアップ。エンジン交換は必須でしょう。「古いエンジンを使っていたから、ペナルティの心配はない」とリカルドは語っていますが、トラブルが出たのは事実。信頼性の問題は、レッドブルにとっての脅威と言わざるを得ません。これはクビアトにも言えることで、せっかく見えた光明も、潰えてしまうかも。まぁ、こればかりはレースが終わってみないと分からないことですが……。

 ところで、メルセデスAMGのロズベルグは、セッション終盤にミディアムタイヤを履いて6周の連続走行を行っています。このミディアムでのペースは、ソフトタイヤでのロングランとほぼ同等でした。しかし、ハンガリーGPに持ち込まれたソフトタイヤとミディアムタイヤのペース差は、本来ならば1周あたり1~2秒程度と非常に大きいはず。つまり、メルセデスAMGがソフトタイヤでロングランを行った際には、多くの燃料を搭載していたことが想像できます。これは、レッドブル陣営も警戒するところ。実際には、さらに良いペースを隠し持っているのは、おそらく間違いないでしょう。

 いずれにしても、FP2の結果を見る限り、メルセデスAMGにレッドブルが急接近しているのは事実。今季ここまで苦労してきたレッドブルが、最強のメルセデスAMGをどこまで苦しめることができるのか? そこが、ハンガリーGPの最大の注目ポイントになりそうです。

 この2チームに続くのがフェラーリということになりそうです。フェラーリはキミ・ライコネンとセバスチャン・ベッテルで、走行プランを分けてFP2に臨みました。ライコネンはソフトタイヤを履いてロングランを行いましたが、1分28秒台後半に入れるのがやっと。前述の2チームからは若干離された位置にいると言えそうです。今回ばかりは、打倒メルセデスAMGの役目は、レッドブルに譲らざるを得ないでしょう。なお、ベッテルはミディアムタイヤでロングラン。こちらは1分29秒台後半と、ソフトを履いたライコネンよりも1秒程度遅いモノであり、しっかりとソフトタイヤとミディアムタイヤの差が現れていそうです。

 ただ、フェラーリにとって最大のネックは、頻発するトラブルです。ライコネンは原因不明のフロントウイング脱落に見舞われ、ベッテルは電気系統の問題に悩まされました。決勝で同様の問題を起こさないために、土曜日中にその原因を把握しておくことが、今後に向けて重要なことになるでしょう。

 これに続くのはトロロッソ。カルロス・サインツJr.はソフトタイヤで、ライコネンから1周あたり0.25秒程度遅れるペースです。表彰台とはいきませんが、しっかり走りきれれば、入賞は堅いというところでしょう。マックス・フェルスタッペンは電気系統のトラブルに見舞われましたが、マシンバランスには好感触を得ているようで、サインツJr.同様上位入賞の可能性は高いと言えそうです。

 ウイリアムズの2台はこの後方。こちらはソフトタイヤでのロングランで1分29秒を切ることができず、フェラーリからも1周あたりさらに0.5秒遅いペース。今回は入賞が精一杯というところでしょう。ウイリアムズは昨年から、最高速では秀でているものの、このハンガロリンクのように中低速のコーナーが続くコースを苦手とする傾向にあります。おそらくダウンフォースが低く、それが今回顕著に現れているのだと思われます。ダウンフォースの低さは、前戦イギリスGPでのウエットコンディション時に、大きくペースダウンしたことからも読み取ることができます。

 マクラーレン・ホンダがこの後ろで、ザウバーと接近戦を繰り広げるということになりそう。ロータスは今回、非常に苦戦しているようで、マクラーレンやザウバーにも劣る位置にいます。おそらく、彼らが入賞を争うのは厳しそうです。また、FP1でクルマが横転するクラッシュを喫してしまい、FP2への出走を見送ったフォース・インディアが、トラブルを解決して土曜日以降走ることができるかどうか? 走ることができるとしたら、どのポジションに加わってくるのか? これも、土曜日に見ておきたいポイントのひとつです。FP1の結果を見る限りでは、トロロッソと同様の位置に来そうですが。

 メルセデスAMG対レッドブルという構図になりそうなハンガリーGP。持ち込まれた2種類のタイヤ間のペース差も大きく、どういう戦略を選択するのかという点も、非常に重要と思われます。また、金曜日もそうでしたが、土曜日、日曜日ともに、非常に暑くなると思われています。ドライバーにとってはもちろん、マシン、タイヤにも厳しいレースとなることでしょう。さて、どんなレースになりますか? まずは予選結果にご注目。ハンガロリンクは抜きにくく、スターティンググリッド順もとても重要ですから。
(F1速報)