日本では100万人を超える人が、うつ病の治療を受けているといいます。症状を正確に自覚できないことも多いですが、「うつ病のサイン」を見逃さないためにスマートフォンを活用しようという研究があるようです。
米ノースウエスタン大学が行った実験では、スマートフォンのアプリを使って被験者の日課や運動量、携帯電話の使用量などのデータを2週間取得。分析した結果、86.5%の精度でうつ病の患者を見抜くことができました。(文:遠藤由香里)
フェイスブックの「友達の数」から社会状況をチェック
実験を行ったノースウエスタン大学の研究者は、スマートフォンから得られたデータとうつ傾向の重症度には、強い相関が見られたと述べています。
「この方法を使って、発症リスクがある人たちを継続的にモニタリングすることもできるでしょう。患者の負担はほとんどありませんし、必要なときにタイミングよく治療を受けてもらうことが可能となります」
研究者たちは、うつ病は「行動」と「気持ち」に影響するが、いずれもスマートフォンで測ることができると期待を示します。持ち歩くものである点がポイントで、継続的なデータを得ることで、うつ病患者に対して長期に渡って的確なケアをできると考えられています
一方、スマートフォンに「監視」されるのをよく思わない意見もあります。実験に使った「Purple Robot」というアプリは、アンドロイドの情報にフルアクセスが可能なもの。利用者の身体情報や社会状況(フェイスブックの友達の数など)、スマホの使用頻度などを収集するものですが、個人情報保護の観点で不安があります。
記事では、アップルが健康管理アプリ「ヘルスキット」をリリースしたときにも倫理問題が話題となったことに言及し、データから個人を特定されることがないだろうかと問題提起。スマートフォンによる健康管理が主流になるためには、クリアすべき倫理的・技術的問題が多くあると述べています。
(参照)Would You Want Your Phone to Monitor Your Mental Health?(Cheat Sheet)
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