2015年07月24日 11:21 弁護士ドットコム
愛媛県八幡浜市のアパートから、乳児とみられる5遺体が見つかった事件で、アパートの住人の30代女性が7月中旬、死体遺棄の疑いで愛媛県警に逮捕された。報道によると、女性は警察の調べに「2006年ごろから5人を産み、遺棄した」と供述しているという。
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女性の逮捕容疑は、生後まもない女児の死体を自宅押入れに遺棄した疑い。その後、女性の供述にもとづいて、県警がアパートを調べたところ、1階の物置場から、新たに乳児とみられる4遺体が見つかった。
女性は複数の乳児について、「息ができないように口をふさいだ」などと供述しているという。現在は、死体遺棄罪の容疑で身柄を拘束されているが、今後、それ以外の罪に広がる可能性はあるのだろうか。刑事事件にくわしい神尾尊礼弁護士に聞いた。
「『立証できれば』という限定付きですが、殺人罪に問われる可能性があります」
神尾弁護士はこう切り出した。殺人罪となるには、どんな点が立証される必要があるのか。
「どう殺害したか、死因は何か、殺意はあったかといった点を立証できるかが捜査の中心になっていきます。
たとえば、『口をふさいだ』と供述しているので、遺体に窒息の所見がないか調べます。
ただ、死後かなり経過した遺体も含まれているようですので、5遺体すべてに殺人罪が適用されるというのは考えにくいと思われます」
もし、殺人罪とならなかった場合は、どうなるのだろう。
「これも条件付ではありますが、保護責任者遺棄致死罪に問われる可能性があります。
殺人罪と保護責任者遺棄致死罪の境界はあいまいですが、状況からみて『殺意がある』とまでは断言できない場合には、保護責任者遺棄致死罪の適用を検討します。
もっとも、病死などの可能性を排除しなければなりませんので、やはり立証の問題は残ります。
現実的には、死後時間が経過している遺体については死体遺棄罪に留め、あまり経過していない遺体に関してのみ、殺人罪または保護責任者遺棄致死罪(立証が困難であれば死体遺棄罪)に問う形になると思われます」
「当然ですが、子は親の所有物ではありません。立証できる範囲で、適切な刑罰を科すべきです。
ただ、殺人罪や保護責任者遺棄致死罪に問われた場合、裁判員裁判となります。経験上、遺棄された遺体をみるのは、なかなか辛いものがあります。
最近は、証拠整理の中で、裁判員への配慮がされるようになってきていますし、実際弁護人から裁判所に働きかけるときもあります。本件でも、適切な量刑を決める上で、本当に必要な証拠はどこまでかを、十分に検討する必要があるでしょう」
神尾弁護士はこのように述べていた。
(弁護士ドットコムニュース)
【取材協力弁護士】
神尾 尊礼(かみお・たかひろ)弁護士
東京大学法学部・法科大学院卒。2007年弁護士登録。埼玉弁護士会。刑事事件から家事事件、一般民事事件や企業法務まで幅広く担当し、「何かあったら何でもとりあえず相談できる」事務所を目指している。
事務所名:彩の街法律事務所
事務所URL:http://www.sainomachi-lo.com