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「ビアンキのクラッシュは前代未聞」 FIAが新データ公表

2015年07月24日 09:00  AUTOSPORT web

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2014年日本GP ジュール・ビアンキ(マルシャ)
昨年日本GPでのジュール・ビアンキのクラッシュに関し、新しいデータが公表された。これによりアクシデントの詳細が明らかになった。

 ビアンキは決勝のウエットコンディションでコースアウト、エイドリアン・スーティルのザウバー車を撤去するために出ていたクレーン車に衝突した。頭部に重傷を負ったビアンキは意識が戻らないまま9カ月にわたって治療を受けてきたが、7月17日にこの世を去った。

 安全性向上のため、FIAは事故の調査を行い、ワールド・アクシデント・データベース(WADB)に調査結果を公表した。ドイツのAuto Motor Und Sportの報道によると、マシンがクレーンの下に入り込むという不運のためにビアンキは重傷を負う結果になったと結論づけられている。

 Motorsport.comは、ビアンキは213km/hでコントロールを失い、わずか2.61秒後にクレーンに126km/hで衝突したと伝えている。マシンはクレーンに55度の角度で衝突、ノーズがクレーン後部の下に刺さった。衝撃は58.8Gだがマシンがクレーン下部に入り込んだことでより重大な結果につながった。
 当初はビアンキのイヤープラグから彼が衝突時に92Gの衝撃を受けたと推測されたが、その後の調査で実際には254Gの衝撃だったとAuto Motor Und Sportは報じている。しかしFIAはこれを認めていないともいわれている。


 FIA安全委員会の副会長であるアンディ・メラーは、 Auto Motor Und Sportに対して次のように語っている。
「マルシャの一部がクレーンのステムの下に刺さり、クレーンの底面から押しつぶされるようになったのが問題だった」
「それがブレーキのように急減速させる働きをし、その過程でヘルメットとクレーンが接触した。このような事故は見たことがない」

 安全委員会責任者のピーター・ライトは、「真相を解明して今後のクラッシュ防止に努めるため、FIAにはビアンキの事故に関する調査を行う責任があった」と述べている。
「いまだに、事故が起こってからそこから学ばなければならないという事態がしばしば起こる。今回のビアンキの事故もそのひとつだ。以前は想像できないシナリオだった。そのためこの事故をきわめて詳細な部分に至るまで調査することが重要だった」
「分析にここまで時間をかけ、努力を注ぎ込んだのは初めてのことだ」

 ドライバーの安全性向上のためクローズドコクピット導入という案も検討されているが、ライトはビアンキの事故の場合、それでも悪い結果を防ぐことはできなかったと考えている。
「マシンがルーフで当たって止まり、頭部がクレーンに当たらずに済んだだろうが、ルーフに衝突して同じ結果になっただろう」

 ビアンキの事故の後、FIAはすぐさま調査を開始し、安全性向上のための対策を検討、その結果、2015年からバーチャル・セーフティカー(VSC)システムが導入された。

 ハンガリーGPではビアンキを追悼し1分間の黙とうが行われることが決まっている。