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足立区、全国的に増加する30~40代の自殺率減らす独自の作戦

2015年07月24日 00:00  週刊女性PRIME

週刊女性PRIME

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東京都足立区。全国では30~40代の自殺率が増加傾向にある中、同区は減少傾向にある。自殺対策の特徴は、18歳から39歳を対象にした区独自の若年者健診があること。 「40歳以上の糖尿病が目立ったんです。罹患する前に生活習慣を改善してもらえるよう、若年層も健康診断を受けられるようにしました」 と同区担当者。 健診項目で「2週間以上、眠れていないか」と聞く。自殺する前に、うつ病などの精神疾患にかかっていることがあるからだ。 ’14年度に健診を受けた区民は1749人。主婦や会社員、フリーターも多い。区民であればどの健保加入者でもよい。不眠を訴えたのは21人。うち16人を医療機関につなぐことができた。 「眠れないかどうかは本人だけでなく、家族全体を聞きます。夫が不眠の場合は失業ということもあるし、子どもの場合は、不登校ということもありうるから」(同区担当者) 不眠を訴えた人がいた場合、担当地区の保健師とつなぐ。 「区のスタンスは"まさか"ではなく"もしや"です。自殺は誰にも起きうる。遺族に話を聞くと、"まさかうちの人が……"と言います。"もしや"と考えることが大切です」(同区担当者) 同区は、配布用のポケットティッシュやパンフレットで「あなたの大切な人は悩んでいませんか」などと呼びかける。周囲の気づきが、命を救う第一歩になるかもしれないと考えているからだ。昨年から区教育委員会と連携して区立中学校に出向く。区内全37校を回る計画だ。 訴えるのは「命を大切に」ではなく、「自分の命を大切に」というメッセージ。 「自己肯定感が低い子どもに、単純に"命を大切に"と言ってもダメ。"ここまで生き抜いたあなたは大切な存在だ"と伝えています」(同) 同時に、相談窓口の電話番号を載せたカードを渡す。 《苦しい時は信頼できる大人に話そう。まずは3人に話してみよう。または、あなたも悩みを聞いたら、信頼できる大人につなげよう。そして、どこにも話せないなら私たちに相談して》 自殺は孤独の病─。こんな取り組みがもっと広がればいい。 〈取材・文/ジャーナリスト 渋井哲也(しぶい・てつや) ●1969年生まれ。長野日報の新聞記者を経てフリーに。若者のネット・コミュニケーションや生きづらさ、学校問題、自殺などを取材〉*『週刊女性』8月4日号掲載分より記事を抜粋しています