7月22日放送の朝の報道番組「おはよう日本」(NHK総合)で紹介された「IT技術者不足」特集が、ネットで思わぬ反響を呼んでいる。
番組はスマートフォンやネット通販の普及で、IT技術者の需要が高まっていることを紹介。この分野の有効求人倍率は2倍にまでなっているが、各企業は人材採用が追いつかず、IT企業の実に87%が「IT技術者が不足している」と感じているという。
ベトナム人学生に興奮する社長「日本に呼んじゃおうよ!」
そんな中、注目を集めているのがベトナム人技術者だ。国内の通信産業で働くベトナム人は2012年は568人だったが、2014年は1061人と倍増しているという。
番組では、都内のITベンチャー企業の取り組みを紹介。この会社では昨年国内大学から4人採用しようとしたが、1人しか採れなかった。代表の男性は「大企業を志望してその後にベンチャーという構図がある。技術者を採るのが難しくなっている」と明かす。
そこで代わりに、日本語とITを学んできたベトナム人技術者2人を採用。待遇は日本人とほぼ同じ。入社1年目だが、広告のプログラミングを任されており活躍しているようだ。
現在、この会社ではベトナム現地での採用活動も実施。代表が学生の面接をして、即日内定を出しているという。
「日本に呼んじゃおうよ! なかなかいないよ、こんなの! めっちゃ仕事できるぞ!」
とノリノリの様子だった。ベトナムの大学では実践的なIT教育が行われており、人材市場として世界中のIT企業が注目しているという。勤勉で協調性に富む国民性もあり、日本企業との親和性も高いとのことだ。
薄給を追求する風潮に「そりゃ僕らの手取りは上がらないよな…」
番組では、IT技術者の不足は日本だけではなく世界的なもの、としていたが、この特集がネットで話題になると、ツイッターには日本の実態を知る人たちからの冷ややかな声が殺到。一時は「IT技術者」という言葉がYahoo!リアルタイム検索のランキング1位になった。
「IT技術者じゃなくてIT奴隷が足りないんだろ」
「昔は韓国人技術者、ちょっと前は中国人技術者、そして今はベトナムなので、要するに『技術者が足りない』のは『安く働いてくれるヤツがいない』って言葉なのがスケスケなのが凄く残念。そりゃ僕らの手取りは上がらないよな…」
大手ベンダーならともかく、下請けや孫請けでは激務薄給が珍しくないIT業界。リクナビNEXTが2012年に25~35歳のITエンジニアを対象に行なった調査では、平均年収は469万円と比較的高いものの、年収に不満があるという人は62%にもなった。
実際に、業界で3年間働いていたという人も「辞めて正解だった」と振り返る。長時間労働でも給料は一向に上がらず、「これで新規の人材が入って来るわけがないじゃん」と書いている。「IT技術者が足りないのは使い捨てにされてるから」という声もあった。
日本人技術者は憮然「待遇良ければ自然と増えますって」
IT技術者の不足を、介護士不足の問題と絡めて語る人も。求められるスキルと仕事量の割に待遇が悪いという声が聞かれる介護業界は、国内の志望者が減少。東南アジアからの人材を積極的に受け入れることで対応している。IT技術者不足も、構造的には同じだというのだ。
番組では取材を担当した記者が、
「国内でいかに人材を育成していくかということも大切。中長期的な視点に立った国の戦略も大事になる」
と語っていたが、実際に現場で働いているIT技術者からすると、「待遇良ければ自然と増えますって」というのが実感のようだ。
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