2015年07月22日 11:41 弁護士ドットコム
自宅の壁が壊れたのは、隣の空き地から伸びてきた「ツタ」のせいだから修理代を払って――。神戸市の男性が空き地の所有者にそんな請求をした裁判で、神戸地裁は男性の主張を認める判決を下した。
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神戸新聞によると、原告の男性は、隣の空き地に自生し、自宅の壁に張っていたツタをはがそうとしたところ、壁の塗装もはがれてしまったため、その修繕費を求めていた。神戸地裁は、空き地のツタが壁を壊したことを認定し、空き地の所有者に50万円の支払いを命じた。
一方で、原告の男性は「ツタが原因でムカデやハチも発生した」と迷惑料の支払いも求めていたが、裁判所は「男性も自ら根やツルを切除して被害を食い止めるべきだった」として、認めなかった。
一般的に、自宅の敷地に隣の土地から樹木の枝や、植物が伸びてきた場合、どう対応したらいいのか。勝手に取り除いても問題ないのだろうか。土地家屋の法律問題に詳しい足立敬太弁護士に聞いた。
「土地の所有権は境界線を境目に地上・地下及び空中に及びます(民法207条)。自分の土地に生えている草木の根や枝が越境して他人の土地に入り込めば、それは他人の土地の所有権侵害になります。
したがって、樹木や植物の所有者、すなわち、その土地の所有者がきちんと対処しなければなりません」
足立弁護士はこのように述べる。
「土地に生えている樹木の『枝』が隣地との境界線を越えている場合、越境された側は土地の所有者に対して、境界線を越えた部分を切り取るように請求できます(民法233条1項)」
侵害された側が、枝を切り取ってはいけないのだろうか。
「そうです。枝については、越境されているからといって、勝手に切り取ってはいけません。
しかし他方で、樹木の『根』が自分の土地に越境してきた場合は、その根を切り取ることができます(同条2項)。
つまり、自分の土地に生えているツタの根や枝が越境し他人の土地に入り込めば、それは他人の土地の所有権侵害になります。他人の建物を傷つけたのであれば、賠償責任は避けられません。
他方で、越境された側も、越境してきた枝を切り取るよう求めることや、根を自分で切り取ることができます。そうした自衛措置をとらずに放置して事態を大きくしてしまった場合には、過失相殺の対象となり、賠償額が減らされることもありえます。
今回は「ツタ」の根が伸びて来たので、切り取ること自体には問題ありません。賠償責任を含めて、神戸地裁の判決は至極妥当な論理で出されていると評価できます」
足立弁護士はこのように分析していた。
(弁護士ドットコムニュース)
【取材協力弁護士】
足立 敬太(あだち・けいた)弁護士
北海道・富良野在住。投資被害・消費者事件や農家・農作物関係の事件を中心に刑事弁護分野も取り扱う。分かりやすく丁寧な説明だと高評価多数。
事務所名:富良野・凛と法律事務所
事務所URL:http://www.furano-rinto.com/