2015年07月21日 15:51 弁護士ドットコム
兵庫県明石市が主催した花火大会の見物客が、歩道橋上で雪崩をうって転倒し、11人が死亡、247人が負傷する大惨事となった「明石歩道橋事故」から14年。事故が起きたのと同じ日にあたる7月21日、被害者の遺族たちが最高裁に「公正な判決」を求める要請書を提出し、東京・霞が関の司法記者クラブで会見を開いた。
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いま最高裁の第3小法廷では、当時の兵庫県警明石署副署長で、雑踏警備本部の副本部長だった榊和晄(かずあき)被告人の刑事責任を問う裁判が審理されている。1審の神戸地裁は、副署長の過失を認定せず「事実上無罪」としつつ、時効により「免訴」とする判決を下した。控訴審も1審を支持したため、検察官役をつとめる指定弁護士が最高裁に上告している。
遺族が提出した要望書は「事故当日の不注意を問うだけでは雑踏事故を防ぐことはできない。警備計画立案に関与し、当日も警備本部で指揮に当たっていた副署長の責任が問われなければならない」「副署長の刑事責任を問わないことは正義に反する」と主張。「刑事責任を安易に免除する判決は、再発防止の観点からもおよそ受け入れられない」「控訴審判決を厳正に見直し、再度審理を尽くした上で公正な判決を求める」としている。
当時9歳の長女と7歳の長男を亡くした有馬正春さん(56)は記者会見で次のように訴えた。
「民事・刑事の裁判を戦ってきて、いままでの判決にはある程度、納得できた。ところが、今回の強制起訴裁判だけは、どうしても納得がいきません。
私も当日、現場にいて、歩道橋の中にとじこめられて、その苦しい中で体験したことと、裁判で出てくる一部の警察官の証言が全然違う。
一部の警察官の言っていることだけが採用されて、我々遺族の証言が採用されないという、おかしなことになっています」
2歳の次男を亡くした下村誠治さん(57)は「事故が起きた14年前から、時間は止まったままです。今日もそうですが、暑くなると身体に蘇ってきます。うちの子は、僕の手の中で硬直をしていきました。その感覚は一生忘れることもないし、つい先ほどのことのように、ずっと身体にしみついたままです」と事件を振り返った。
事件をめぐっては、警備計画のずさんさや、歩道橋上の過密状態を放置するなど、現場対応のまずさが指摘され、雑踏警備本部長だった明石署長(故人)・副署長を含む12人が書類送検された。
しかし、明石市の担当者3人、警備会社の責任者と明石署の現場責任者の5人が、業務上過失致死傷罪で有罪判決を受ける一方で、署長と副署長については、神戸地検が不起訴を決定。副署長は、検察審査会で4回の「起訴相当」議決を経て、初めての「強制起訴」となり、2010年4月から裁判が行われている。
(弁護士ドットコムニュース)