2015年07月21日 11:21 弁護士ドットコム
選挙権の年齢が高校生を含む「18歳以上」に引き下げられることを受け、有権者としての教育をどうするのかがポイントになっている。自民党文部科学部会は7月上旬、学校教育のあり方に関する提言をまとめ、政治的中立性を確保するために、高校教員の政治活動を制限して、違反者が出た場合の罰則を設けるよう政府に求めた。
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報道によると、提言では「学校に政治的イデオロギーが持ち込まれたり、政治闘争の場になったりすることを断固として避けることが政治の責任」と指摘。教育公務員特別法を改正して罰則を設け、教職員組合の収支報告を義務づけるよう地方公務員法も改正して、「偏向を防ぐ具体的手だてを確立すべきだ」と主張している。
生徒たちに主権者としての自覚と、投票するための判断能力を養うことが求められる中で、教員の中立性をこれまで以上に求めることにどんな意味があるのだろうか。宮島繁成弁護士に聞いた。
「『教員の中立』や『政治的中立』の意味について、『特定の政党や政策の支持・不支持を強要しない』ということなら当然のことであり、比較的わかりやすいといえます。ただ、それ以上となると、かなり難しくなります」
たとえば、授業で、ある政策に対してA、B、Cの3つの意見があると紹介するとします。しかし、なぜその3つを選んだのか、選んだ時点ですでに中立かどうかの問題が発生します。『政治的中立』とは、多数説なのか、多数世論なのか、真ん中ぐらいなのか、それ以外なのかということです。もちろん、時の政府の見解=『政治的中立』とは限りません。
その上、その3つの意見を、同じ時間、同じ重さで説明するのもかなり困難です。このようなことになると、結局は、教員の中立、政治的中立とは何も教えないことになりかねません。あるいは、どこか遠い島の架空の政策を題材にするしかなくなります。しかし、現実の具体的な政策課題を題材としない主権者教育や政治教育にどれだけ効果があるのか疑問があります」
罰則を設けるということについては、どう考えればいいのだろうか。
「罰則を設けるということは、一般には犯罪として扱うということです。学校を捜索したり、プリントを押収したり、児童・生徒から事情聴取して、中立かどうかを警察が判断することになるのでしょうか。実際にはかなり難しいと思います」
宮島弁護士はこのように語っていた。
(弁護士ドットコムニュース)
【取材協力弁護士】
宮島 繁成(みやじま・しげなり)弁護士
日弁連子どもの権利委員会。いじめや学校の問題、法教育、スポーツ問題などに取り組んでいる。
事務所名:ひまわり総合法律事務所
事務所URL:http://www.himawarilaw.com