ホンダが次にトークンを使用した改良型パワーユニットを投入するのは、8月下旬に開催される第11戦ベルギーGPとなる可能性が高い。
ホンダの新井総責任者はイギリスGP後に、これを示唆していた。
「後半戦に入ったら我々も巻き返したい。それには後半戦へ向けて(パワーユニットを)少しアップデートしなければならない。特にスパとモンツァは(パワーユニットに)相当負荷がかかるサーキットですから、いまの状態で戦うのは厳しいでしょう」
一部ヨーロッパのメディアでは、次戦ハンガリーGPにも3つのトークンを使用して、改良を加えたICE(内燃機関)を投入するのではないかという報道があるが、新井総責任者が「ハンガロリンクでは低中速コーナーでの車体のセットアップをきちんとやって、スパで(パワーユニットの)バージョンを上げたい」と語っていることから、次戦ハンガリーでトークン使用のパワーユニットを投入する可能性は低いだろう。
7月10日に承認されたパワーユニット規則の変更により、ホンダは今季1ドライバーあたり5基を使用できるようになった。しかし、すでにフェルナンド・アロンソは5基目、ジェンソン・バトンは6基目のコンポーネント使用によるペナルティを受けており、今後のペナルティが免除となるのかどうか新規則の適用にあたって詳細は確認できていない。もしハンガリーで新しいICEを投入してグリッド降格が課されるとすれば、抜きどころの少ないハンガロリンクで入賞は難しくなる。このような状況を考えると、パワーユニットに対する負荷が比較的低いハンガリーで、トークン使用のアップデートを投入するとは考えにくい。
ホンダはカナダGPで2台そろってトラブルによってリタイアしたが、それらの問題は点火プラグの改良と排気管の材質を見直すことで改善したと見られている。新井総責任者も「カナダで出たトラブルには対応して、もう出ないと思っている」と語った。イギリスGPでアロンソのマシンに搭載したICEは、カナダGPのレースで使用したICEに信頼面での改善を施したものだったと考えられている。
イギリスGPで1周目にクラッシュしたバトンが気になるところだが、バトンのICEは直近のグランプリだけでもカナダとオーストリアで使ったものが2基残っており、たとえイギリスGPで全損していたとしても問題ないだろう。
それではホンダが次にトークンを使用するのは、どのコンポーネントになるのか。すでにカナダGPでホンダはふたつのトークンを使用、新井総責任者は記者会見で「ターボチャージャーとMGU-Hに使用した」という趣旨のコメントを発している。そうなると、次に考えられるのはICEかMGU-K。エンジンのパフォーマンスアップに直結するのは本体の改良であることを考えると、ICEの可能性が高い。
ただし新井総責任者は次のようにも語っている。
「全部(トークンを)使うかどうかは未定。入れる順番がある。そこは、もう少し考えたい」
ホンダが今季使うことができるトークンは、残り7つ。それを2回に分けて使用する予定とすれば、先にICEに使うのか、あるいはMGU-Kに使うのか、夏休み期間中の開発の進捗状況によって決まるものと考えられる。ベルギーGPに投入される新コンポーネントがICEとは限らないと思われるのは、新井総責任者のこんな言葉からもうかがえる。
「ベルギーは(エネルギーの配分が)難しい。あれだけ1周が長くて上り坂とストレートが続くレイアウトだと(回生エネルギーは)どこかでなくなってしまう」
またコンポーネントのローテーションを考えても、ベルギーGPに新しいICEを投入するのは得策ではないと見方もある。ベルギーGPとイタリアGP、ふたつの超高速サーキットで使用したパワーユニットを日本GPでも使用するのは物理的に厳しい。そうなると、ベルギーGPで1~3トークンを使用した新しいMGU-Kを投入し、日本GPで4~6トークンを使用した新しいICEを投入──という可能性が考えられる。
いずれにしても、重要なことはいつ、何を入れるかよりも、ホンダの開発状況そのものだ。
「さくら研究所のメンバーは、出力を上げるために毎日頑張って仕事している。いま取り組んでいる内容をきちんとアップデートにつなげられれば、それなりのパフォーマンスを発揮させて、いい戦いができるはず」
2015年のF1シーズンは、まだ10戦残っている。
(尾張正博)