2015年07月20日 13:11 弁護士ドットコム
バイト先のタバコの煙に悩んでいる――。そんな相談が、Q&Aサイトに寄せられた。投稿者は10代で、タバコが大の苦手。だが、バイト先の焼肉屋は、分煙をしておらず、個人経営のため店舗も狭い。喫煙者が来店すると、部屋の隅にいても煙を吸ってしまうような状態だという。
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投稿者は、タバコの煙を吸うと、気持ち悪くて吐きそうになってしまう。タオルを口元にあてたり、マスクをしたりしたいが、「お客さんに対して失礼ですよね」と気にしている。投稿者に対しては、「さっさと辞めるのが一番」と退職を勧める声もあったが、一方で、店側に空気清浄機を設置するなどの対策をとってもらうよう勧める声もあった。
飲食店で働くアルバイトスタッフが、店側に「タバコの煙」の改善を要求することはできるのだろうか。労働問題に詳しい中村新弁護士に聞いた。
「雇い主(使用者)には、労働者が安全に労働に従事できるように配慮する義務(安全配慮義務)があります(労働契約法5条)。
今回のケースは、法的には、受動喫煙対策を講じないことが『安全配慮義務の不履行』に当たるのではないか、という形で問題となります」
中村弁護士はこのように述べる。
「近年、受動喫煙についての問題意識が高まっています。
適切な喫煙対策を講じなかったことを理由として、使用者の安全配慮義務違反を認めた裁判例も出ています(江戸川区・受動喫煙損害賠償事件 東京地裁2004.7.12判決)。
このような時代背景を受けて、現在は分煙あるいは禁煙とする職場が大半となっています」
今回の投稿者のケースをどうみればいいのだろうか。
「店内を禁煙にすると顧客離れにつながるおそれがあるなら、全面禁煙などの措置まで強制することは、店側の営業の自由を侵害する可能性もあります。
なかなか調整が難しい事例だと思います。
喫煙自由の飲食店で接客に当たることを投稿者が認識して入店したのかどうか、という点も、店側の安全配慮義務違反を問う場合には問題となるでしょう。
法的には評価が難しい事例ですが、空気清浄機の設置などで事態が改善される可能性はあるかもしれません。
そのような可能性があるのであれば、使用者側に大きな負担を強いるわけではないですし、顧客離れにつながる可能性も低いことから、店側が積極的に配慮することが望ましいと思います」
中村弁護士はこのように述べていた。
(弁護士ドットコムニュース)
【取材協力弁護士】
中村 新(なかむら・あらた)弁護士
2003年、弁護士登録(東京弁護士会)。現在、東京弁護士会労働法制特別委員会委員、東京労働局あっせん委員。労働法規・労務管理に関する使用者側へのアドバイス(労働紛争の事前予防)に注力している。交通事故・企業の倒産処理(破産管財を含む)などにも力を入れている
事務所名:中村新法律事務所
事務所URL:http://nakamura-law.net/