アイオワ・スピードウェイで開催されたベライゾン・インディカー・シリーズ第13戦は、アンドレッティ・オートスポートのライアン・ハンター-レイが今季初優勝を飾った。佐藤琢磨(AJ・フォイト・レーシング)はリタイアに終わっている。
全長0.894マイル、最大バンク14度のアイオワ・スピードウェイでの300周レースを制したのは、予選9位のライアン・ハンター-レイ(アンドレッティ・オートスポート)だった。これでアイオワ戦3勝目、そして、昨年に続く2連勝だ。彼が走るチーム、アンドレッティ・オートスポートは、実にアイオワ6連勝! 9戦7勝と驚くべき相性の良さを誇っている。
ホンダのエアロ・キット開発を手がけたアンドレッティ・オートスポートだが、今年は開幕戦から苦戦が続いていた。2012年チャンピオンのハンター-レイは、12レースでトップ10フィニッシュが3回、トップ5はたった1回という惨憺たる成績でアイオワでの第13戦を迎えていた。
しかしハンター-レイは、得意のショートオーバルでシーズン初勝利を挙げた。残り24周で切られた最後のリスタートをトップで迎えた彼は、プッシュし続けて逆転を狙っていたジョセフ・ニューガーデン(CFHレーシング)に0.5046秒の差をつけてゴールへと飛び込んだ。これで今シーズンのインディーカー・シリーズは13戦で9人目のウイナー誕生となった。
ホンダにとっては今年4勝目。そして、ライバル相手に真っ向勝負をフルディスタンスで戦い抜いての勝利は、これが初めてになった(フォンタナでもホンダは勝利しており、それは素晴らしい戦いの末のものだったが、シリーズ主催者のインディカーによるダウンフォース量の設定が的確でなかった、本来あるべき姿のレースではなかった)。
ニューガーデンはアイオワで2年続けてハンター-レイに続くゴール・・・2年連続の2位となった。2位以下を3秒以上も引き離す力強いレースを戦っていたが、今季3勝目を惜しいところで逃した。ピットタイミングを違えた面々がトップグループを作った際、トラフィックの中を走らざるを得ない状況となり、そこでハンター-レイの先行を許した。そして、一端前に出るとハンター-レイは強かった。
難しいレースを戦い抜いて3位フィニッシュしたのはルーキーのセイジ・カラム(チップ・ガナッシ・レーシング)だった。もちろんキャリアベスト、そして初めての表彰台だ。レース後に彼はエド・カーペンター(CFHレーシング)らと口論するシーンもあったが、「全力で勝つために戦っている。ギリギリの勝負をしている。今後もプロとしてハードに戦うのみだ」と強気のポリシーを掲げていた。
4位はグレアム・レイホール(レイホール・レターマン・ラニガン・レーシング)。2周遅れを挽回しての4位は素晴らしい結果だ。遅れを採ることになった原因はシフター・トラブルにあった。ピットでのエンジンストールなどがあったのだ。しかし、トラブルをだましだまし走り続け、最後のリスタートの後にはカルロス・ムニョス(アンドレッティ・オートスポート)をパスしてみせた。33点を加算したレイホールは、スコット・ディクソン(チップ・ガナッシ・レーシング)を抜いてランキング2位に浮上した。
そのディクソンはマシントラブルをガレージで修理。レースに戻って18位でゴールした。ポイントリーダーのファン・パブロ・モントーヤ(チーム・ペンスキー)は序盤にしてサスペンション破損によりクラッシュし、リタイアを喫した。それでも彼はまだ42点のリードを持っている。
「チームにとって大きな勝利だ。今年はずっと苦労して来ていたから」とハンター-レイ。序盤はオーバーステアで大変だったが、最後はレールの上を走っているかのように安定したマシンになっていた。ピットでのセッティング調整が的確だったということだ」。
ニューガーデンは、「本当にエキサイティングで楽しいレースだったが、2位でのゴールとなったのは悔しい。勝てるクルマになっていたと思う」と悔しがっていた。
佐藤琢磨(AJ・フォイト・レーシング)は、ハンドリングが定まり切らない苦しいレースを強いられた。1周の遅れを取り戻し、終盤のポジションアップを狙ってバトルを続けていた彼は、土壇場になってとうとう安心して走らせることのできるマシンに仕上げることに成功した。ところが、もうゴールまで40周というところで突然サスペンションが壊れ、ターン1の壁に突っ込んだ。モントーヤと同じトラブルだった。アイオワのコースはマシンにとって過酷なのだ。
「タイヤの空気圧など、コンディションに合わせ込むのが本当に難しいレースでした。ダウンフォースを少なく設定していた。そこが今日のコンディションに合っていなかった。好きで得意なアイオワでのレースだっただけに、今日のパフォーマンス、そして結果は悔しい」とも彼は話した。
これで今シーズンも残すところ3戦だけとなった。次戦はロードコースのミッド・オハイオだ。
(Report by Masahiko Amano / Amano e Associati)