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セカオワの新曲「ANTI-HERO」は世界のスタンダードになる? リズムを刷新した渾身の一曲を分析

2015年07月18日 17:11  リアルサウンド

リアルサウンド

SEKAI NO OWARI オフィシャルサイト

 SEKAI NO OWARIが、7月29日にリリースするシングル『ANTI-HERO』より、表題曲のMVを公開した。


(参考:SEKAI NO OWARI、新アルバムが初週24万枚突破! 驚異的セールスの背景は?


 同曲は、映画の前編である『進撃の巨人 ATTACK ON TITAN』に書き下ろされた主題歌であり、ゴリラズやカサビアンのサウンドプロデュースを手掛けてきたダン・ジ・オートメイターとともに作り上げた楽曲。前作にあたるアルバム『Tree』からは大きく路線を変更し、R&Bやヒップホップの要素を取り入れた、海外シーン向けのサウンド構造に仕上がっている。同楽曲について、音楽ジャーナリストの柴那典氏は、発表段階で「『流行ものではないスタンダードな楽曲を制作する』という意思の表れ」と語っていたが、楽曲についてはこう分析する。


「セカオワは自身をキャラクターナイズする戦略を持ったバンドで、ダン・ジ・オートメイターのプロデュースワークの中ではやはりゴリラズのあり方に通じるものがあります。というのもあって、曲調も『Clint Eastwood』に近いものを感じます。エレクトロ・ポップとヒップホップが融合したサウンド感がハマっているし、ダン・ジ・オートメイター自身もセカオワを“3次元のゴリラズ”と解釈した音作りをしているのではないでしょうか。ダークなメロディと90年代ヒップホップのビート感をうまくミックスさせた同曲は、まさしく海外向けの『スタンダード』だといえます」


 また、リズムアプローチにも大きな変化がみられるという。


「初期のセカオワは、リズムのプロダクションに足腰の弱い部分がやや見受けられました。しかし、それに彼ら自身も気づいていたからこそ、『炎と森のカーニバル』で花火の音、『ピエロ』で心臓の音をサンプリングしてドラムの代わりにするなど、リズムへの概念をあえてずらしたのが『Tree』までの彼らでした。そして『Dragon Night』『ANTI-HERO』というここ最近のタームでは、世界レベルのプロデューサーとタッグを組むことにより、本格的なグルーヴを取り入れ、強靭な足腰を手に入れることに成功しました。海外進出も見えてきたこのタイミングで、課題を克服できたことは大きいですね」


 歌詞に関しては、これまでの共通したテーマを英語詞にしつつ、深みは増していると同氏は語る。


「同曲は、ヒーローと悪役を題材にして、善と悪は二元論で語れないということを示しています。セカオワはこれまで“戦争と平和”や“正義と悪”というテーマで楽曲を多く手がけており、直近だと『Love the warz』がその系譜にあたるといえますね。ただ、『Love the warz』に比べても、ここまでドープなサウンドだと、歌詞にも深みが増して説得力が生まれる。軸や核心は変わっていないのに、見せ方が一段も二段もバージョンアップしたことがはっきりとわかります」


 最後に同氏は、Fukaseの歌い方について、現状のポップシーンを絡めてこう述べた。


「今回、Fukaseはネイティブレベルの英語の発音を目指し、ケイティ・ペリーやブリトニー・スピアーズ、アウル・シティーなどを手がけるボーカル・プロデューサー、エミリー・ライトとともに徹底的にボーカルトレーニングに励んだそうです。その結果がはっきりと歌に表れています。現在、海外でも活躍しているバンドの2強であるセカオワとONE OK ROCKは、ともに英語の発音がネイティブレベルで『日本のポップシーンで英詞を歌うなら、今はここまで洗練させないとダメなんだ』ということを証明したのではないでしょうか」


 世界仕様の楽曲で、国内と海外のリスナーに射程距離を広げたSEKAI NO OWARI。この楽曲を機に、ワールドワイドなバンドへと成長することを期待したい。(リアルサウンド編集部)