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フロー・ライダーは“隠れトレンドセッター”だった? 5つの“ダー!”から検証

2015年07月17日 18:31  リアルサウンド

リアルサウンド

フロー・ライダー。

 記念すべき10曲目の全米トップ10となったシングル 「G.D.F.R.」をはじめ、今夏にピッタリのアッパー・チューン「Once In A Lifetime」や、クリス・ブラウンを迎えた「Here It Is」など、すでに配信でヒットを記録している7曲を収録。さらには映画『ワイルド・スピード SKY MISSION』で効果的に挿入される前述「G.D.F.R.」のリミックスも追加したフロー・ライダーの最新作『My House』のジャパン・エディションが、先頃発売となった。


 ヒップホップとダンス・ミュージックを絶妙なさじ加減でクロスオーヴァーさせたサウンドと、唯一無二の速射砲を彷彿とさせる印象的なフロウ。そして、底抜けに明るいパーティ・ソングとポジティブなメッセージで世界を魅了するラッパーと言えば、そうフロー・ライダーその人。


 そんな〈ヒップホップ界ナンバーワンのテンアゲMC〉と呼び声高いワイルド野郎が、実は流行を仕掛ける“隠れトレンドセッター”だったという事実はご存知だろうか? 本稿では「フロー・ライダーの隠れトレンドセッターぶりを検証してみるんダー!」といったテイでワイルドに進めていきたい。


・「一発屋なんて言わないで~実はとっても息が長いんダー~」


 映画『ステップ・アップ2:ザ・ストリート』(2007年)のサントラに収録された、T・ペインをフックに起用した激キャッチーなデビュー・シングル「Low」(邦題「今夜はロウ☆ロウ☆ロウ」)をご記憶だろうか。デビュー曲ながら全米シングル・チャート10週連続1位という記録を打ち立て、1週間47万ダウンロードの全米新記録を樹立した作品だ。そのあまりにもセンセーショナルなデビューゆえ、フロー・ライダーのことを“ワンヒット・ワンダー(一発屋)”と見る向きが多かったのも事実。しかし、それを一蹴するかのように「Elevator feat. Timbaland」「In The Ayer feat. will.i.am」のスマッシュ・ヒットを立て続けに生み、デビュー・アルバム『Mail On Sunday』(08年)は、見事アルバム・チャート初登場3位に食い込んだ。


 翌年09年にはセカンド・アルバム『R.O.O.T.S.』(邦題『俺のルーツ』)を発表。ファースト・シングル「Right Round」は、1週間で64万ダウンロードと自身の持つ全米記録を軽く更新、6週連続でチャート1位に輝いた。その後シングルカットされた「Sugar feat. Wynter」「Jump feat. Nelly Furtado」も安定のヒットを放ち、もはやその人気は不動のものとなった。



・「来たる〈ヒップホップ×EDMムーヴメント〉~俺だって一肌脱いでるんダー~」


 世界最大級の音楽フェス『ULTRA MUSIC FESTIVAL』が、昨年日本初上陸を果たしたように、ここ日本でも定着した感のあるEDM。近年は世界中どこのチャートをも席巻するEDMだが、アメリカにおけるムーヴメントの先駆けとなったのは、ブラック・アイド・ピーズ「I Gotta Feeling」(09年)といって過言ではない。プロデュースを担ったのは、ご存知デヴィッド・ゲッタで、フロー・ライダーは彼をプロデューサーに招いた「Club Can't Handle Me」(2010年)でタッグを組み、EDMムーヴメントの底上げに大いに貢献した(その結果、長い歴史を持ちながらも、ある種、保守的であったビルボード・チャートに、いくつものEDM楽曲がランクインしたことは、革新的な出来事であった)。


 その後、クリス・ブラウン「Yeah 3x」(2010年)、リアーナ「We Found Love」(2011年)、ニッキー・ミナージュ「Starships」(2012年)などがメガヒットを放っていることからも、EDMムーヴメントが一過性のものではなく、カルチャーとして根付いたことがわかるだろう。そんなカルチャーの形成にフロー・ライダーも、しっかりと一肌脱いでいるのだ。


・「ビジネスの才覚を発揮~副業も当然ダー~」


 そんなトレンドセッターのフロー・ライダーに欠かせないのが、筋肉。筋骨隆々を維持する彼は、『Wild Ones』がリリースされた2012年7月、月刊『マッスル・アンド・フィットネス』日本版の表紙に登場。同誌は発行国のアメリカをはじめ世界40カ国で出版されている世界最大級のメジャー・フィットネス雑誌で、科学的根拠に基づいたトレーニング法や、正しい食事の摂り方などの情報が網羅されている。フロー・ライダーは自ら〈FLO FIT〉なるパーソナル・フィットネスのプログラムを考案し、そのノウハウを収録したエクササイズDVDを発表している。


 日本でも、TRFが結成20周年を記念して発売したエクササイズDVD『EZ DO DANCERCIZE』が大ヒットを記録したり、近年はボディメイク&ダイエットが大流行中。フロー・ライダーは、そんな流行がやってくる前から、自らが師範となってファンの健康を慮っていたのだ。


・「メジャーリーグでもメジャー級~イチローにも愛されてるんダー~」


 2015年からメジャーリーグのマイアミ・マーリンズに在籍するイチロー。マイアミはフロリダの主要都市であり、フロー・ライダーの出身地であるキャロル・シティーとは目と鼻の先だ。だが、それよりも遥か以前、彼とフロー・ライダーはすでに邂逅していた。


 そのきっかけとなったのが、シアトル・マリナーズに在籍していた08年に「In The Ayer」を、翌09年シーズンには「Jump」を打席入場のテーマ曲に採用していたから。それを光栄に感じたフロー・ライダーは同曲のイントロとサビを〈イチロー応援仕様リリック〉に変更したイチロー・バージョンを制作し、ライブでシアトルを訪れた際にイチローとご対面。完成したての「Jump (Let's Go Ichiro Remix)」を手渡すと、イチローからはお返しにサイン入りバットが贈られた。イチローが日米で〈安打製造機〉と呼ばれる裏には、フロー・ライダーの曲のパワーが一役買っていたのだ。


・「EXILEにMay J.、鼠先輩とも共演~多彩なメンツと共演済みダー~」


 イチローに応援ソングを贈呈したかと思えば、今度は「The Next door - Indestructible」でEXILEと共演。さらにアルバム『Wild Ones』(2012年)の日本盤では、ジェニファー・ロペスとの共演曲「Sweet Spot」のサビをMay J.が担当、新世代の音楽プロデューサー、tofubeatsがリミックスを手掛けた「Let It Roll (tofubeats Remix)」を収録するなど、多彩な面々と共演を果たしてきた。また、異色のコラボでは鼠先輩と「Low」のリメイク(リ迷ク?)「今夜はポウ☆ポウ☆ポウ」などもあり、フロー・ライダーの親日家っぷりには頭が上がらない。


 トレンドに敏感であり、国籍や世代、性別までも超えた支持を集め続けるフロー・ライダー。最新作「My House」に引き続きリリースされる『The Perfect 10』と題されたアルバムでは、どんなトレンドセッターっぷりを見せてくれるのか。その日が来るまで今作を聴いて、今年の夏をアツく過ごすんダー!(三田村 優)