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乃木坂46映画公開記念:運営・今野義雄氏と学生有志が激論 鳥居坂46についての言及も

2015年07月16日 23:30  リアルサウンド

リアルサウンド

運営・今野義雄氏と学生有志

 『悲しみの忘れ方 Documentary of 乃木坂46』の公開を記念して、『有名大学乃木坂46同好会×乃木坂46運営委員会委員長 今野義雄 討論会』が7月3日にアキバシアターで行われ、乃木坂46同好会の学生8名が、公開に先駆けて同作を鑑賞、今野氏に感想とそれぞれの見解をぶつけた。当日は、『月刊MdN』の編集長・本信光理氏をMCに迎え、活発な議論が行われた。


(関連:乃木坂46橋本奈々未は“事務所NG”だらけ? メンバーの極秘メモがお蔵入りに


 今回の記事では、同好会メンバーが映画を観た感想から、実際に思いついた小論文のテーマ、それに対する今野氏の反応をレポート形式で紹介するほか、同氏と本信氏によるメンバーのパーソナリティについての言及を掲載。さらに今野氏が初めて鳥居坂46に言及した同好会メンバーとのやり取りについても、詳細をお伝えする。


同好会メンバーによる映画の感想・小論文レポート

 冒頭、今野氏は今回のイベント開催意図について「私たちが乃木坂46を運営していて常に考えていることの1つに、メンバーと同じ世代の方々に支持されるチームにしたいということがあります」と語ると、続けて「彼女たちは皆さんより一歩早く社会に出て、壁にぶつかってそれを乗り越えようと頑張っていますが、皆さんもいずれ社会に出れば、その荒波に揉まれていくと思います。ですが、彼女たちの頑張りを知っているからこそ、壁にぶつかった時は彼女たちのことを思い出して頑張って貰えたら嬉しいです」とコメント。


 映画の感想については、登壇者が学生ということもあり、「乃木坂46に入る前は自分の意見を言えなかった子が、グループに入ることにより、前向きな性格になったのを感じた」や「橋本奈々未さんが『北海道から出るために、東京にしかない美術大学を受けた』ということに、同じ上京組として共感した」など、同世代の少女たちが世間の荒波に揉まれながら、過去の自分を“変えよう”とする様子に心打たれたものも多いようだった。本信氏も「この映画はあまり生々しくならない様に編集していると思うのですが、生駒さんがセンターから外された直後のシーンを見て『アイドルはなんて残酷なんだろう』と思いました。それが映画化されてエンターテイメントになるというのは、普通の人生を送っている人だったら精神的に参ってしまいそうです」と冷静に見解を述べた。


 また、学生からは「過呼吸でメンバーが倒れてしまうシーンが入っているAKB48のドキュメンタリー映画と比べると、少し身近な出来事に思えた」という意見が飛び出すと、今野氏は「この年代の女の子たちが集団で行動すると、衝突したり、過呼吸になってしまう子がいたりなど、舞台裏では(AKB48のドキュメンタリーと)同じ様なことは起こっていました。ただ、この映画では過去の出来事の記録以上に、それぞれのメンバーが何を背負っていたのかを描きたかったし、そこを観てほしかった」と、他グループが公開してきたドキュメンタリーとの差別化について語っていた。


 小論文のテーマについては、上智大学・岸上が発表した「人は悲しみを忘れられないのではないか」や早稲田大学・輿水の「捨てる勇気」といった映画に直接的に関係のあるものや、大塚家具の騒動を題材にした東京大学・林田の「身内争いから学ぶ、乃木坂46」など、トリッキーなものも飛び出した。なかでも、ユニークだったのは早稲田大学・花井が乃木坂46と同じく大ファンだという松岡修造氏が説いた“イワナを見てみろよ、イワナに余計な味付けはいらないんだよ。”という言葉に着想を得たという「乃木坂46と松岡修造の相似性」。花井が「メンバーもアイドルらしからぬ心の闇を抱えていたことに気づかされ驚きましたが、それが乃木坂46らしくもあり、自分と似ているところもあってもっと好きになりました。ありのままの姿でいることが大切なのではないか?」と持論を展開すると、今野氏は「この映画は観る人によっては、ネガティブな印象を与えかねないとすごく心配していたのですが、いま彼女が親近感を抱いてくださったという意見を聞いて安心した」と大学生ならではのおおらかな感性に感心する一幕も。しかし、いずれも設定の意図をヒアリングしていくと、メンバーの心や環境の変化、アイドルという職業への理解などを読み解こうとする姿勢は随所に垣間見られていた。


今野氏が語るメンバーのパーソナリティ
生駒里奈について

今野:一言でいうと「怪物」ですね。生駒が持っている多くの才能は規格外のものばかりで、踊っている生駒から漂ってくる“作品感”はとんでもないです。劇中には生駒がAKB48の『リクエストアワー』でファンに挨拶させて頂いたシーンを収めていますが、あの場で言った彼女の言葉は、その時の空気を感じて出て来た、彼女の本心から出たものなんです。生駒に自由に話をさせると、もう誰も敵がいませんね。


本信:そのシーンの前、楽屋でセリフを練習している様子も収録されていますが、これって普通は、ステージに上がって頑張って覚えた言葉を棒読みな感じで話すのが精一杯のはずなんです。でも、生駒さんはしっかりと自分の言葉に昇華していました。


西野七瀬について

今野:ルックスもそうですが、持っている世界観がとにかく“カワイイ”子。星野みなみの持っている“カワイイ”とは別の種類の、「カワイイの天才」なんです。西野は初期からものすごくレベルの高いことをやっているのに、引っ込み思案でなかなか自分を前に出せなかった。でも、『制服のマネキン』で、学業による活動休止から復帰した秋元真夏に追いやられる形で、立ち位置が後ろに下がってからというもの、ダンスのキレが鬼気迫る様な動きになったんです。何があったのか彼女に聞くと、「自分の感情をダンスに込めるしかなくなった」と答えていて、表現者として1ランク上がったことを実感しました。


橋本奈々未について

今野:どれが本物かわからない、様々な表情や価値観を持っている子。頭が良くてクールビューティー・冷静沈着というイメージを持つ方が多いですが、一方でものすごく子供っぽかったりもします。僕は、女優の道に進めば、色んな役を演じられる可能性があると思うのですが、彼女は色んなものを持っているからこそ、居場所を決めてしまうと不自由になってしまう恐れがある。だから、何にでもなれる可能性を持ったまま進んでもらったほうが、今は面白いと思っています。


白石麻衣について

今野:当初、とんでもなくキレイで、そこそこ何でもできるけど「いまひとつ突き抜けない」と決めつけていました。でも、活動を続けるなかで、「白石ってすごいんじゃないの?」と思える局面が次々と起こるんです。全メンバーの中で、一番確変が多かったメンバーだし、それはまだ僕の中で変化が大きかったのは白石ですね。だから、これからの成長にも大いに期待しています。


生田絵梨花について

本当の意味での天才で、欠けている部分がない。普通はこれだけパーフェクトだと、どうしても面白みに欠けるんですけど、そこもナチュラルなものを持っている。


アイドルドキュメンタリーとしての『悲しみの忘れ方 Documentary of 乃木坂46』
登壇者

東京大学乃木坂46同好会 林田 男(東京大学所属)
東京大学乃木坂46同好会 藤原 男(東京大学所属)
東京大学乃木坂46同好会 伊澤 男(一橋大学所属)
東京大学乃木坂46同好会 藤本 男(拓殖大学所属)
早稲田大学乃木坂46同好会 輿水 男(早稲田大学所属)
早稲田大学乃木坂46同好会 花井 女(早稲田大学所属)
上智乃木坂46研究会 岸上 男(上智大学所属)
上智乃木坂46研究会 竹本 男(上智大学所属)


本信:この作品は、新撮のメンバーインタビューをベースに過去の素材が挟み込まれていく様な構成の作品ですが、アイドルドキュメンタリーとしてみなさんはどう見ましたか?


藤原:AKB48のドキュメンタリー映画は、その場その場の出来事の積み重ねでできたものだと思います。本作は新たにインタビュー撮影したカットを入れることによって、映画のテーマである人の変化や成長を、メンバーの視点で観る事ができるので、彼女たちの成長や変化をわかりやすく観れました。


本信:それはいい面でもあり、別の面では説明的とも言えるよね。ドキュメンタリーは観る人によって解釈の余地があったりするのも楽しみ方のひとつだと思うのですが、この作品はとても構図がしっかりしています。


藤原:僕はこの映画の構成に、丸山監督の意図を感じました。目指しているゴールに向かって、観る側を一緒に連れて行くというか。


今野:もちろん、丸山監督には、そういう考えがあったと思います。僕個人としては、まだファンのみなさんに伝わっていないかもしれない、メンバーが背負っているストーリーに惹かれ、共感してもらえるのではないかと考えていました。というのも、乃木坂46のメンバーは、日本全国から東京に集まって来た女の子たちなので、故郷やいろいろなものを捨てて来た子もいるし、それぞれに物語があります。丸山監督は、1stシングルからずっとMVを撮ってくれていて、何でも相談できる相手なので、映画化の話より以前に「個人個人をクローズアップした映像作品を撮って欲しい」と提案したこともありました。


藤本:乃木坂46は元々AKB48の公式ライバルとして結成されていますが、僕はまだAKB48のライバルとして成り立つところまできていないのではないかと思っています。だからこそ、メンバーたちの言葉を綴っていく今回の手法で、現在進行形で成長している乃木坂46を映したと思いました。


本信:僕も、その部分が他のグループのドキュメンタリー映画と違うところだと感じました。また、この作品ではスキャンダル報道についても触れるなど、自分たちが普通に生活を送っていたら経験しないようなことまで描かれています。これが映画になって出ていくことについて、今野さんはどう考えましたか?


今野:私の若いころのヒーローは、様々な生き様を見せてくれたロックアーティストで、そんなロックアーティストに憧れて、自分は音楽の世界に入りました。でも、今の時代はアイドルがその力を持っていると思うんです。だって、今のアイドルたちは、自分たちの生き様を全部さらけ出して、とてつもない生命力で私たちにいろんなものを見せてくれるから。自分自身、こういうことを映画にするにあたって抵抗がないわけではありませんが、あのシーンを描くことで「アイドルにとってのファンの大きさ」を伝えたかった。スキャンダルの当事者である松村(沙友理)は、恐らく何度も辞めようと思っていたと思います。国際フォーラムで「自分に喋らせてください」と訴えてきたときも、正直僕は「この子はここで辞めてしまう」と悟っていました。でも、実際にファンの皆さんの前に立ったとき、「がんばれー!」と声援を送ってくださったおかげで、彼女は「頑張らなきゃ」と思ったんでしょうね。ファンの皆さんの存在に、メンバーがどんなに勇気を貰えているかということを、あのシーンで感じ取っていただけると嬉しいです。


本信:ありがとうございます。先日、鳥居坂46のオーディションについてニュースが掲載されました。そのため、オーディションについて伺いたいのですが、乃木坂46メンバーを選出した理由の一つに「ネガティブな面を持っていること」というバックボーン面での考慮はあったのでしょうか?


今野:僕は、乃木坂46を担当する以前、ずっとアーティストを手掛けてきました。だから、常に笑顔を振りまいて「私、やる気あります!」っていう子ほど、「本当かな?」と勘繰ってしまう部分があります。逆に、瞳の奥に曇りがみえるなら「その曇りはなんだろう」と惹かれることが多かったのかもしれません。


本信:劇中ではメンバーが「そんなにアイドルになりたいわけじゃなかった」と言ったりしていましたが、僕も人生の行き掛かり上、この仕事をしていることころもあるので、すごく共感できました(笑)。


今野:こちらとしては「入りたい気持ちで来てくれよ」って思うところもあるけど(笑)、本心で「やる気ないです」っていう子は、僕は興味ないです。その子にとって「やる気あります!」って言うだけがアピールの手段ではないというだけであって。質問を変えてみたり、問いかけの仕方を変えた時に心に、熱いものがある事がはっきり判る子でないといけないでしょうね。


本信:鳥居坂46にもそういう人を求めているのでしょうか?


今野:僕は鳥居坂46について、当初「こういう風にしたいな」という構想はあったのですが、秋元先生と話したときに「初めから決めつけるのはつまらないよ」という言葉を頂きました。なので、鳥居坂46は、どんな子に出会うのか次第で変わるのだと思います。僕たちのイメージに合う子を探すのではなく、何かを持っている子たちが集まったときに何を創れば良いかを考える、そういうグループの作り方を目指しています。


最後には、今野から学生へ向け「是非メンバーと同世代の皆さんに、いろいろな想いで彼女たちの魅力や映画の魅力を伝えて欲しい。今後も機会をみて、このような場を設けられるようにはしたいと思っています」といった言葉があり、同イベントは無事に終了した。(リアルサウンド編集部)