ロータスのロマン・グロージャンは、現在のF1タイヤはデグラデーションが低いため、数年前よりバトルがしづらくなっていると述べた。
2013年のピレリタイヤはデグラデーションが高く、耐久性が低く、走行中のタイヤバーストやデラミネーションのトラブルも続出した。
2014年にF1新エンジンレギュレーションが導入され、V8からターボV6ハイブリッドに変わる際に、ピレリはコンパウンドを硬くし、今年はマシンパフォーマンスの向上を予想してリヤのコンストラクションを強化した。
グロージャンは今のタイヤは、サーキットによっては緻密なタイヤマネジメントがさほど必要なく、その影響でオーバーテイクのチャンスが減り、ドライバーたちが自身の力を発揮して結果につなげるのが難しくなっていると主張した。
「2、3年前と今はずいぶん変わってしまった。以前はドライビングスタイルがタイヤのデグラデーションに大きく影響したが、今はそれほど影響がない」とグロージャン。
「タイヤに頭を悩ませ、自分の力でデグラデーションをコントロールできたころの方がよかった」
「あのころは、序盤にセーブしてライバルたちに対するアドバンテージを築き、オーバーテイクのチャンスにつなげることができた」
「前を走るドライバーにスナップが出ても、そういうときにはたいてい自分も同じ状態だからアドバンテージは全くない。誰もが(タイヤを)マックスの状態で使っているため、前のマシンに近づいてもアドバンテージは得られないんだ」
ピレリのF1契約が2016年末で切れるため、FIAは2017年以降のF1公式タイヤサプライヤーを募集、ミシュランがこれに応募したことが分かっている。ミシュランは今より耐久性の高いタイヤを使ってよりエキサイティングなレースを実現させると主張している。
ピレリはF1上層部の方針に従い、レースを活性化するためにあえて耐久性を落としたタイヤを用意するなどしてきたが、ミシュランはより耐久性の高いタイヤを使用するという前提で入札を行ったといわれている。
ミシュランのモータースポーツディレクター、パスカル・クワノンは「数周走るだけの目的でタイヤを使われるのは、タイヤ業界にとっていいことではない」「皆が目いっぱいプッシュできるようなタイヤを用意したい。それによってより優れたショーが見られるようになる」と発言している。
しかしグロージャンは今年のタイヤでは1回ストップで走り切ることも可能になっており、これ以上に耐久性を上げることが正しい方向性なのかどうか疑問に感じている。
「オーストリアがいい例だ。僕はレース序盤に(セルジオ・)ペレスの後ろを走っていた。僕はスーパーソフト、彼はソフトタイヤだった。つまりグリップの面で僕にアドバンテージがあったのに、オーバーテイクすることができなかった。近づこうとするたびにタイヤがオーバーヒートを起こしてグリップを失ってしまったからだ」
「つまり、前のマシンに近づきやすくするための対策を採ることに集中すべきなのだと思う」
「2012年と2013年にはデグラデーションが高く、グリップを失って不利な状況になりやすかった。後ろを走るマシンはそこからチャンスを見つけることができたんだ」
「でも今はかなり安定している。他のマシンの後ろを走っているとダウンフォースを失ってしまい、そうなるとスライドがひどくなり、グリップを失って、オーバーテイクが余計に難しくなる」