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万能札、Tチケット……コンサートチケットに変化の兆し 多機能化はどこまで進むか?

2015年07月16日 12:01  リアルサウンド

リアルサウンド

『京都大作戦2015』HPより

 コンサートチケットが、単なる入場券としての機能にとどまらず、さまざまな他サービスと連携する方向に“進化”しつつある。それは来場者にとってより便利で、主催者のリスクを軽減させるものになるかもしれない--そう予感させる、新たなコンサートチケットのスタイルがいくつか誕生しているので紹介したい。


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 まず、10-FEET主催のフェス『京都大作戦2015 ~いっ祭 がっ祭 感じな祭!~』で導入されたICカードチケット「万能札」だ。


 これは、今年開催されたB'zのZeppツアーで顔認証の来場システムを導入するなど、チケットのネットオークション対策に積極的に取り組んでいるテイパーズによるチケットシステム。記名式ICカードにより、チケットの転売を防ぐ効果がある。


 また、この「万能札」と呼ばれるカードは、入退場、荷物を預けるクローク、 イベントオフィシャルグッズの物販や飲食での支払いに対応しており、イベント全体を通して、まさに“万能”な機能を兼ね備えている。このICカードを機械にかざし、かんたんに入退場ができるのはもちろん、荷物を預ける際の手続きや本人認証をスムーズに行うことができ、電子マネーとして利用することで現金を持ち歩くことなくイベントを楽しんだりすることができる。


 万能札に備わった電子マネーのシステムは「リクルートかんたん支払い」と連携したサービスだ。電子マネー機能を利用する際には、事前にリクルートIDを使用してICカードにクレジットカード情報と4桁のパスワードを設定する。電子マネー利用時にパスワードを入力するため、カードを紛失した際の不正利用を防ぐことができる。さらに、貯まったリクルートポイントは電子マネー対応の販売スペースで買い物に利用することができるという。


 同システムの関係者に話を聞いたところ、初導入となった今回は全体の約3分の1の来場者が「万能札」の電子マネー機能を利用していたとのこと。『京都大作戦』のように、できるだけ荷物を減らしてモッシュピットで盛り上がりたいという来場者にとって、かなり魅力的なサービスといえるだろう。


 もう一例として、TSUTAYAの「Tカード」をチケット代わりに利用する「Tチケット」というサービスも2014年12月からスタートしている。カード会員が5,000万人を超えるというTカードがそのままチケットの役割を果たす。


 同サービスは現在、音楽のみならず、アミューズメントパーク、アート展、ホテル、スポーツなど、さまざまな業態の入場チケットとして導入されており、今後も導入数を増やしていく予定とのこと。


 Tカードも個人に紐づいたカードのため、チケットの転売を防ぐ効果がある。また、発券の必要がないため、チケット料金以外の手数料がかからないのも魅力のひとつだ。Tチケットは、Yahoo! JAPAN IDを使用してPCまたはスマートフォンから購入する仕組みとなっている。


 また、Tチケットを使って入場すると、Tポイントが貯まる。Tカードの電子マネー機能「Tマネー」をあわせて利用できるため、飲食や物販でTカードを導入している会場であれば、『京都大作戦』のように現金いらずでコンサートを一日楽しむことができるという。


 コンサートチケットのこのような動向に関して、先述の関係者は以下のように語った。


「顔認証のようなセキュリティ機能を求める声がアーティスト側からも増えているので、ICカード等を利用したチケットシステムは、より精度があがってくるのではないでしょうか。また、コンサート会場で使える独自のポイント制度や、スタンプラリーのような機能をもたせる企画も出ています。それ以外にも、スマートフォンの画面上にチケットが表示されるシステムなど次々と新しいスタイルが誕生しているように、それぞれの需要に合わせたかたちで、今後もチケットシステムは多様化していくのではないでしょうか」


 乗車券の分野では一足早く、SUICAやPASMOなどのICカードが、乗車カードとしての本来の役割を果たしながら電子マネーとして活用されている。コンサートチケットの場合は、一公演ごとに発券されることが一般的であるため、これまで多機能化が進んでこなかった面もあるが、セキュリティ面での強化や来場者の利便性向上などを理由として、特にフェスなどのイベントや大規模公演でこのような新たなチケットシステムの導入は増えていくのかもしれない。音楽の聴取スタイルが時代とともに変化しているように、チケットシステムにも今後新たな潮流が生まれそうだ。(久蔵千恵)