2015年7月13日放送の「未来世紀ジパング」(テレビ東京)は、ジャーナリストの池上彰氏がドイツを訪れ、ドイツ人の働き方の特徴について紹介していた。
ドイツは日本より労働時間が25%短く、「1時間当たりの労働生産性」は45%高い計算に。池上氏は「歴史も文化も異なるのだから違うのは当たり前。全部を見習うわけにはいかない」としつつ、「極めて合理的な考え方をするなど学ぶことはある」と話していた。
スーパーは日曜閉店。市民は「慣れているから」
日曜日のミュンヘン市内は、スーパーやドラッグストアなどが軒並み閉まっている。ドイツでは「閉店法」で日曜日の営業が禁止され、平日も8時から20時までと制限されている。街の男性に不便はないのかと訊いてみると、こんな答えが返ってきた。
「週末に店が閉まる習慣に慣れているからね。しっかり働いて、しっかり休む。これは当然でしょう」
ドイツ生まれのスポーツブランド「アディダス」に勤めるフィリップ・シュティーフさんは、朝6時からスポーツジムへ向かう。ハードエクササイズを楽しそうにこなし、「汗を流していい1日のスタートだね」と語る。
職場はフレックスタイム制で、8時半ごろ本社に出勤。業務はサッカー代表チームのサポートだ。出社するなりパソコンに向かい、コールセンターのようなヘッドセットを装着。電話でどんどん仕事を進めて行くフィリップさん。
「メールは打つのに時間がかかるし、行き違いも多いんだ。直接話すのが早くて正確だよ」
と効率化の秘訣を明かす。日本では電話の方が非効率だと批判されることも少なくないので、意外なやり方だった。
決断すべき人がきちんと決断し、実行者に指示を出す体制になっていれば、無駄な会議の時間が減るかもしれない。もっとも、日本人は一方的に指示されることをなぜか嫌うので、形だけでもみんなで決めたことにしたがるのだが・・・。
それで仕事は回るのか? 上司は「回ります、回します」
番組は、世界79か国から集まっている社員たちに「ドイツ人の働き方」について聞いたところ、こんな答えが返ってきた。
「ドイツ人は、きっちりしているね。コーヒー休憩が10分といえば、本当に10分。イタリア人は、10分で帰ってくることはまずない。結果、オフィスに長くいることになるんだ」(イタリア人社員)
「スペインでは、会社を遅く出ることが良しとされていたりするわ。たとえ仕事がなかったとしてもね。でもここでは、働く時は働く。自分の裁量に任されているわね」(スペイン人社員)
フィリップさんの上司は、日本人の重田さん。フィリップさんが3か月の長期休暇に入るため、引き継ぎ会議を行っていた。ドイツでは決して珍しいことではないという。
それで仕事は回るのか訊ねると「回ります、回します」と重田さん。自分が休暇の時には周囲が引き継ぐので、お互い様だという。ドイツでは年間で最低24日間の有給休暇を社員に与えなくてはいけないと法律で決まっており、後ろめたさは全くない。
重田さんは「雇用契約にある自分の権利です」と話すが、「日本だと、1週間以上だと若干後ろめたさを感じることもありますけど」と笑った。
仕事の質や密度、結果の導き方に違い
フィリップさんはきっちり8時間で業務を終了し、午後5時半に退社。香港での勤務経験もある重田さんは、日本や香港に比べるとドイツ人たちは働かないなと思っていたこともあるそうだ。しかしドイツに来てみると、働いていないわけではなかった。
「時間帯、質や密度が違っているだけで、同じ結果は出している。結果の導き方が違うのかな」
VTRを見たゲストの坂下千里子さんは、「日本なら3か月休暇取ったらクビじゃない?」と驚いていた。なお高い生産性を求められるマイナス面として、ドイツでは「燃え尽き症候群」も問題になっているそうだ。とはいえ、確かに見習うべき点は多い。
おそらくこの段階に来るまで、会社と労働者との長年にわたる戦いがあったのだろう。そのうえで、単純に国や企業が労働者の権利を守るだけでなく、全体として生産性が上がっているところに感心した。(ライター:okei)
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