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sympathyが秘めるナチュラルな魅力とは? 「4人で気持ちを分かち合いながら音楽をやっている」

2015年07月15日 20:10  リアルサウンド

リアルサウンド

sympathy

 出会いは地元・高知の高校の軽音楽部。RADWIMPS、SCANDALのカバー曲で参加した初ライブのコンテストでいきなり優勝し、オリジナル曲を作りつつライブ活動をスタート。高校卒業後に発表した1stミニアルバム『カーテンコールの街』で注目を集め、この夏、2ndミニアルバム『トランス状態』をビクターの新レーベル“CONNECTONE”からリリース……何だか素敵すぎるストーリーだが、この女の子4人組には音楽ファンを惹きつけるナチュラルな魅力が確かに備わっているようだ。


 まずは本作『トランス状態』の「女子高生やめたい」と「さよなら王子様」を聴いてみてほしい。無意識のオルタナ感覚とでも呼ぶべきバンドアンサンブル、フックの効いたメロディ、そして、揺れる感情をキュートに描いたリリック。sympathyという名前が示す通り、このバンドの音楽からは、年齢・性別を超えた共感を呼び起こす不思議な力が伝わってくるのだ。


 今回はボーカルの柴田ゆう、ギタリストの田口かやなにインタビュー。バンドの成り立ちと本作「トランス状態」の制作、バンドの将来像などについて聞いた。ふんわりと柔らかく、でも、ときどきビシッと鋭いコメントを交えるふたりの雰囲気を含めて楽しんでほしい。(森朋之)


・「『あの娘のプラネタリウム』ができたときは『やっと終わったー!』っていう感じだった」(柴田)


ーー2ndミニアルバム『トランス状態』、とても魅力的でした。


柴田・田口:ありがとうございます。


ーー個人的には90年代後半あたりのオルタナ感が自然に入っているのがツボだったんですが…。


柴田・田口:……。


ーーって言われても困りますよね。


柴田・田口:ハハハハハ!


ーー(笑)まず、どんなふうにバンドが結成されたのか教えてもらえますか?


柴田:えーと、高校の部活が軽音部だったんです。田口はドラムの子(門舛ともか)、私はベースの子(今井なつき)といっしょだったから、この4人でバンドを組もうかってことになって。最初はRADWIMPSとかSCANDALのコピーをやりました。


ーーRADWIMPSの曲、難しくなかった?


田口:1曲、「がんばったらできそうだな」っていう曲があって。


柴田:「セプテンバーさん」なんですけど、コードとかリードギターとかも「練習しやすいかもよ」って友達や先輩に言われて。それとSCANDALの「少女S」ですね。


ーーオリジナル曲はいつくらいから作ってたんですか?


田口:高校1年生の終わりの時期に、初めて出たライブで賞をもらったのがきっかけですね。


柴田:OSMという音楽学校が主宰する大会みたいなのがあって、私たちは四国からエントリーしたんですけど、さっき言った2曲(「セプテンバーさん」「少女S」)で参加したら、たまたま優勝しちゃって。


田口:その特典としてオムニバスCDに参加できることになって、そのためにオリジナル曲が必要で…。


ーー作らないといけない状況になった、と。


田口:そうです(笑)。


柴田:追い込まれてましたね~。「やらなきゃ終わらない!」みたいな感じで。


ーー宿題ですね(笑)。


柴田:ホントに宿題でした(笑)。そのとき作ったのが、今回のミニアルバムにも入っている「あの娘のプラネタリウム」なんですよ。まず、みんなで歌詞を考えて、それを曲にしていって。


田口:初めてだったから、どう書いていいかもわからなかったんですよね。ビジョンみたいなものもなく、みんなで思い付くことをどんどん言い合って…。だから、こんなに空想的な曲になったのかも。


柴田:楽しそうな曲ですよね。


ーー追い込まれながら作ったとは思えないですね(笑)。その後もオリジナル曲は作り続けたんですか?


柴田:「あの娘のプラネタリウム」ができたときは「やっと終わったー!」っていう感じだったんですけど、地元のライブハウスの方から「オリジナル曲だけでライブやってみない」って声をかけてもらって、1週間で4曲くらい作ったんですよ。2曲目以降は私か田口がおおまかな歌詞やメロディの流れを考えて、それをもとにしてベース、ドラムを付けていくことが多いですね。あとは門舛か今井が歌詞を持ってきて、それをイジりながら曲にしていくこともあります。


——高校を卒業した年の夏に1stミニアルバム『カーテンコールの街』をリリースしていますが、バンドでがんばろうと決意したのはいつ頃なんですか?


柴田:けっこう最近ですね。


田口:デビューとか契約の話をいただいてからだと思います。


柴田:それまではまったく考えてなかったので。「バンドをやっていこう」っていう漠然とした気持ちはありましたけど、何か(具体的な行動を)していたわけではないんですよ。CDをどこかに送るとか、ライブを月に何本やるとか、そういうこともぜんぜんやってないし。だから、いまの状況はビックリですね。ホントに恵まれてるなって思います。


・「もっと強くなりたいし、もっと成長したい」(田口)


——メンバーのみなさんも“遠距離”(大学進学などに伴い、田口と門舛は高知、柴田は東京、今井は滋賀に在住)だし、まだ過渡期なのかもしれないですね。今回のアルバム「トランス状態」にも、そんな揺れてる状況が反映されていると思います。「女子高生やめたい」もそうですが、“もうやめたい”というニュアンスのフレーズがいろんなところに入っていて。


柴田:そうですね。高校生活が終わったこともそうですけど、“やめたい”とか“やめたくない”とか、いろんなことに対して“どっちつかず”なことが多かったし、そういうことをモヤモヤと考えてることもあって。


田口:「このままじゃいられない」っていう気持ちがあるんですよね。もっと強くなりたいし、もっと成長したいっていう。でも、どこかで「ずっと許されていたい」という感じもあるんですよね。


柴田:「女子高生やめたい」はホントにそんな感じですね。殻を破りたいんだけど、「このままがいい」という気持ちもあるっていう。ただ、そこを意識して作っていたわけではないんですよ。「言われてみれば」っていう感じで。


——いまの状態が自然と曲に反映されていた、と。「さよなら王子様」にも「いい子になるのももうやめた」という歌詞がありますね。


田口:これは歌詞が先なんですよ。


柴田:ドラムの門舛が文章を書いてきて、それをもとに田口が歌詞にして。


田口:私なりに言葉を書き換えて曲にしたんですけど、“王子様”というワード自体、私からは絶対に出てこないので。そういう言葉がストレートに出てくるのはいいなって思いましたね。


——田口さんはいつか王子様が…と夢見るタイプではない?


田口:そうですね(笑)。


柴田:あはは。門舛が文章を考えてこなかったら、こういう曲はできてないですね。


——柴田さん、田口さんが中心になりつつ、メンバー全員で作ってるんですね。アレンジに関してはどうですか? たとえば「女子高生やめたい」はイントロがなくて、歌と演奏が同時に始まりますが、「イントロつけようよ」という話にはならなかった?


柴田:「あとで考えよう」って言ってたんですけど、思い付かなかったんです(笑)。


田口:で、「イントロはないほうがいいね」って。


柴田:いきなり始まるほうが、刹那的でいいかなって。聴いてる人は「え?」ってなると思うし、お気に入りです。


——「泣いちゃった」はポエトリーリーディング風に始まる、弾き語りのナンバー。これも思い切ったアレンジですよね。


柴田:弾き語りのイメージしか浮かばなかったんです。無理にバンドっぽくしなくてもいいかなって思たし、このアレンジ一択っていう感じでしたね。


田口:他のメンバーも「アコギがいいね」って。


柴田:音楽のことで意見が分かることはほとんどないんですよ。


——音楽以外では?


田口:ときどきぶつかります(笑)。


柴田:みんな似てるところがあるから、そこでぶつかることはありますね(笑)。でも、すごく仲がいいんですよ。メンバーはめちゃくちゃ大事な友達だし、卒業してこっち(東京)に来たときも、会う人がぜんぜんいなくてどうしよう?って感じだったんですよ。いまもこまめに連絡を取ってますね。


——曲作りはどうやってるんですか?


柴田:グループLINEですね! みんなで「曲を作るぞ!」というときはSkypeでやりとりしたり。


田口:動画を送ることもありますね。


・「自分たちが満足できる曲ができたときは、すごく楽しい」(柴田)


——将来的にはメンバー全員、東京に来る予定なんですか?


柴田:みんなが東京に来るんだったら、近くに住もうねって言ってますけどね。


田口:ただ、(大学)卒業後はどうなるかわからないですからね。そこも模索中です。


——sympathyというバンド名の由来は?


田口:結成してすぐに考えたんですけど、なかなか決まらなかったんです。で、英語の辞書を持ってきて「パッと開いたところで、いいと思う単語にしよう」ってことになって。それを3回くらいやって“sympathy”になりました。


柴田:綴りもかわいいし、これがいいなって。


——確かに“sympathy”って、デザイン的にもかわいいかも。


柴田:途中、改名しようって話も出たんですけどね(笑)。


田口:めんどくさいから、そのままになりました(笑)。“sympathy”には“共鳴”とか“苦しみを分かち合う”という意味もあって。私たちは4人で気持ちを分かち合いながら音楽をやっているし、すごくいいなって思いますね。誰が歌詞を書いてきても、すぐにみんなで共有して“わかる!”ってなるので。


——これからはバンドとリスナーの共鳴も増えていくだろうし。良いバンド名じゃないですか。


田口:そんな気がしてきました(笑)。


柴田:ジンワリと感じてきましたね(笑)。


——この先、どんなバンドになっていきたいですか?


柴田:まず、楽しくライブをやれるようになりたいですね! 毎回、「初めてライブをやる」くらいに緊張してるので。


田口:あとは(キャッチコピーの)“超絶無名バンド”から脱したいです。まずは“超絶”をなくしたいですね。


——そうすると“無名バンド”になっちゃいますよ。


柴田:“無名”を取って、“超絶バンド”のほうがいいかも。凄そうじゃない?


田口:そうだね(笑)。


——(笑)バンドをやっていて、いちばん楽しいのってどんなとき?


柴田:私はスタジオで新曲を演奏してるときですね。自分たちが満足できる曲ができたときは、すごく楽しいです。


田口:みんなで「こうしたらいいんじゃない?」って作ってるときも楽しいですね。


——ホントに仲がいいんですね。


田口:東京に来たときは4人で柴田の家に泊まるんですけど、それもすごく楽しいんですよ。


柴田:大盛り上がりです(笑)。みんなが寝ている様を見ているのが、すごくおもしろいんですよー。


田口:(笑)。


柴田:車で移動してるだけでも楽しいし。


——ツアーやったら最高じゃないですか。


柴田:それは高校のときからずっと言ってますね。みんなで車に乗ってツアーして……それをやるためにバンドを続けたところもあるかも。


田口:そうだね。順番が逆だけど(笑)。


柴田:“メンバー大好き”みたいになっちゃいましたね(笑)。


(取材・文=森朋之/撮影=竹内洋平)