2015年07月15日 11:41 弁護士ドットコム
夏の夕暮れ、飲食店のテラス席で冷えたビールを飲む時間は、一日の疲れが癒える至福のときだ。しかし、テラス席の近隣に住む住民にとってはどうだろう。「うるさくてたまりません」という投稿が、弁護士ドットコムの法律相談コーナーに寄せられた。
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相談者によると、その店は昨年、女性のマンションの向かい側にオープンしたという。店は暖かい季節になると、店の外にテーブルや椅子を並べ、客を座らせるそうだ。近所には夜通し、酔っ払った客たちの大きな笑い声や、皿やグラスのガチャガチャとした音が響きわたる。しかもウェブサイトなどに記載される営業時間を超え、早朝の4時や5時になるまで客たちが騒いでいるのだという。
店には直接クレームを言ったし、警察からも指導してもらった。しかし店側はいっこうに改める様子はない。こうした場合、近隣住人がとれる策は、どんなものがあるだろうか。そもそも、路地にテーブルや椅子を並べることに問題はないのだろうか。柴田幸正弁護士にきいた。
「騒音については、一般的な生活をする上で我慢の範囲と言えるかどうかが問題となります。これを『受忍限度』といいます。
対応として、まず考えられるのは、自分一人で動くのではなく、マンションの他の住民の方とも協力して、迷惑行為を止めるように申し入れるということです。
相手も客商売です。個人だけでクレームを言うよりも、多くの住民が迷惑していることを店に知ってもらうほうが、効力はあるでしょう。周囲の評判を気にして、迷惑行為を止めるかもしれません」
それでも改善が見込めない場合はどうだろう。
「交渉ではらちがあかないという場合、迷惑行為の差止めを求める仮処分を申し立てるということが考えられます。あるいは、平穏に生活する権利としての『人格権』などに基づいて、迷惑行為の差止めを求める訴訟を提起するという、裁判所を使った手段が考えられます。
こうした手続の途中で、店側が自主的に迷惑行為をやめてくれることも、ある程度は期待できるでしょう。
また、夜中の店の騒音によって、たとえば睡眠障害など体に変調をきたしてしまった、などという場合は、店に対して不法行為に基づく損害賠償を請求することもできるでしょう」
裁判所を使った手続の際に、気を付けておくべきことはあるだろうか。
「いずれの手続においても、先に述べた『受忍限度』の範囲かどうかが問題となります。本人が不快と感じたとしても、いつでも差止め請求や損害賠償請求が認められるというわけにはいきません。
また、損害賠償請求の場合は、迷惑行為と損害との因果関係をどのように説明できるかが重要と言えます。
裁判所を使う手続では、一定の裏付けが必要になりますので、迷惑行為の現場を写真やビデオで撮影しておくと、裁判所への説得材料として有効と言えます」
そもそも、店の外にテーブルや椅子を置くことは、問題ないのだろうか。
「路地が公道であれば、道路交通法に基づく道路占用許可を所轄の警察署に申請し、許可を得なければなりません。許可を得ない者に対しては罰則もあります。
公道で、道路占用許可もない場合は、警察署に通報して、撤去を命ずるように求めるようにするのが良いでしょう。
でも、公道だからといって住民が勝手にテーブルや椅子を撤去すると、かえって店側との間で無用な紛争を招く可能性もあるので、やめておいたほうが賢明でしょう」
柴田弁護士はこのように話していた。
(弁護士ドットコムニュース)
【取材協力弁護士】
柴田 幸正(しばた・ゆきまさ)弁護士
2008年登録、愛知県弁護士会所属。地元の瀬戸市で、個人向けの交渉・訴訟事件、中小企業向けの顧問業務などを取り扱っている。近隣トラブルのほか、労働事件や交通事故事件も多く手がけている。メディア出演歴「クイズプレゼンバラエティーQさま!!」など。
事務所名:柴田幸正法律事務所
事務所URL:http://shibatayukimasa-law.p-kit.com/