都市部の若者が地方に移住して働くIターン就職が注目される中、メガネの一大生産地として知られる福井県鯖江市が「ゆるい移住」プロジェクトを始める。若者にとりあえず移住してもらい、田舎暮らしを体験させるのが趣旨だが、一体どんなものなのか。
公式サイトによると、対象となるのは福井県出身者を除く20歳から35歳くらいまでの若者。2015年10月から16年3月まで数週間から最大で半年間、市内に体験移住をする。期間中の住居は市が提供し、家賃は無料だ。
3LDKの住居を用意「まずは気軽に住んでみる」
若者がわざわざ地方に移住する場合、起業や農業など立派な目的を持っていることが多い。しかし同プロジェクトでは、何かを押し付けることは一切しない。
「まずは気軽に住んでみて、市の職員や地域の市民・団体などと自由に関わり合いながら、田舎のまちをゆるく体験してもらえることを目指しています」
まずは無目的に「とりあえず田舎の暮らしを満喫してみたい」ということでもOKだ。体験移住開始後は、月1回の定例ワークショップのほか、地元企業や団体との交流会も開催される。そこで、短期のアルバイトや仕事の相談をすることもできるという。
ただし移住と簡単にいっても、先立つものがないとなかなか難しい。そこでプロジェクトでは、市が管理する住宅を期間中無料で提供する
75平米、3LDKの住宅2戸に5~10人の参加者が住む。家電や家具を調達するところから始め、部屋に何人でどう使うのか、食事はどうするのか、といった事柄を相談しながら協力して生活することになる。
「都会で就職をしてうまくいかなかった人にも」
鯖江市は福井県中央に位置する人口6万8000人ほどの町。メガネフレームの一大生産地として知られ、国内でのシェアは96%にもなる。近年は「データシティ鯖江」を掲げ、行政データの公開や公衆無線LANの整備など先進的な取り組みも行ってきた。
同市政策経営部地方創生戦略室の担当者によると、同プロジェクトは昨年、同市出身で「ニート株式会社」や「ゆるい就職」などで知られる若新雄純・慶應義塾大学特任助教から提案を受ける形でスタートした。女子高生が町興しをする「鯖江市JK課」も若新氏のアイデアだ。
「大学を出て都会で就職をしたけども、うまくいかずに退職したり、時間に追われたりしている人もいると思います。そういう人に鯖江の町や人に触れながら、自分の人生についてゆっくり考えてもらえれば」(担当者)
移住の目的を特に定めないのも、幅広い人に応募してもらいたいからだ。同市は福井県内で唯一人口が増加傾向にあり、東洋経済が毎年発表している「住みよさランキング」(2015年)でも7位に入った。
「定住となるとハードルは高いですが、まずは鯖江を気に入っていただければ。外部の人から見て、鯖江市の良いところと悪いところも教えて欲しいですね。町興しの参考にします」
希望者には地場産業の仕事も紹介
希望者には、メガネや漆器などの地場産業に関連した仕事などを紹介する。一方で、「パソコン1つあればどこでも収入を得ることができる人にも適しているかと思います」と話していた。
移住に先立ち、8月9日に東京、10日に大阪で説明会を実施。9月5~6日に鯖江市で1泊2日の事前合宿を行い、住宅の内見や市内の見学を行う。そこでプロジェクトへの参加を判断し、10月から実際に移住する。定員は5~10人を予定しており、応募状況によっては選考・選抜を行うとのことだ。
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