1960年代の学生運動のなかで、共産主義革命を標榜し火炎瓶や鉄パイプで機動隊と激しい衝突を繰り返した「中核派」。最近その中核派に、若者が続々と加わっているという。テレビ東京は中核派の拠点である「前進社」の建物内部を取材し、2015年7月10日の「NEWSアンサー」で放送した。
今年に入ってから霞が関などで「打倒安倍政権」を掲げたデモを何度も行っている中核派。デモに参加した多くが20代の若者だった。彼らに話を聞くと、「原発問題や戦争問題に関心を持って活動をはじめた」「社会問題に興味はあった。教育基本法が変わる時に初めて国会前(デモ)に来て。今も続けてます」と真面目な様子で語る。
公安警察の顔写真を壁に貼り出す
拠点である「前進社」(東京・江戸川区)のビルには20~70代の約100人の構成員が居住し、警視庁公安部から24時間監視されている。古めかしいビルの階段を上がると、事務所内には6つのモニターと男性が。警察や右翼の動きを常に監視しているという。
廊下の壁には、活動中に撮影した公安刑事の顔写真を張り出され、警察の動きをいち早く察知する体勢をとっている。
食堂も備えており、3食とも構成員が当番制で自炊。この日の夕食は1食400円。案内した構成員の男性(36歳)によると、生活費は自費で、機関紙である「前進」の発行に携わったりアルバイトをしたり。活動費は全国の賛同者からのカンパだ。
現役の大学生(22歳)は、中核派に入ったきっかけを東日本大震災だと語る。
「3.11以後、大学が原発や国策に協力してきたことが暴かれてきて、良くないと思った。現実にキャンパスでビラがまけないとか戦争反対の声を上げられないという事実を知って、これはおかしいなと(思った)」
「革命のために人を殺めるか」との質問に「まあそうですね」
26歳の女性構成員は「自分たちの命をかけてでも立ち上がる運動の中に、次の社会の展望があると思っている」と真剣な表情で語った。どこにでもいそうな普通の若い女性だったが、取材者が「革命のためなら政府や国の人の命を殺めることもあるのか」と問うと、少し考えながらもこう答えた。
「まあ、そうですね…ほんとに、倒すか倒されるかだと思うんですよ」
中核派はほぼ毎日、都内の大学前でビラ配りをしている。社会に不満をもつ若者たちを取り込もうと勧誘に力を入れ、ビラやデモを見て中核派に入る若者も増えている。
社会学者の開沼博氏はその背景に、ないがしろにされた若者の状況もあると指摘。「暴力を使わなくてもよい社会を作れるという道筋を示せるか」とした上で、こう提言した。
「どういうふうに政治的な意見や不満を述べる場や、自分自身の個人的な不満を満たす場を作っていくかが重要だと思います」
構成員に見られる純粋さ、真面目さと幼さ
警察や公安調査庁は、中核派を「国家を暴力的に破壊・解体することを目指している団体」と規定。定期的に前進社を家宅捜索し、監視を強めている。番組は最後にこうまとめた。
「若者たちが考えるのは『良い社会にしたい』という純粋な理想ですが、それが過激な思想に走ってしまうのは、根底に貧困や不安があるからだと専門家は言います。ただ、理想のためには暴力も辞さないという考えは、絶対に許されるものではありません。そういった若者の不満とどのように向き合っていくべきか、考えることが大切なのではないでしょうか」
26歳の女性の発言は確かに不穏だが、続く言葉は切られて聞くことはできなかった。前進社を案内した男性構成員は、火炎瓶製造について訊かれると「いまは作っていない」としながらも、
「こういうふうに使っているとか、ちょっと言えないですけど」
などと不用意な発言。36歳の年齢のわりには幼さを感じ、やはり危ういと思う。しかし、インタビューを見ているとほとんどの若者が真面目に社会問題を考え、「悪いことには抗議したい」という気持ちを持っているように見えた。
もちろん、純粋さや幼さがいちばん危険なのかもしれない。とはいえデモで主張はしても事件を起こしたわけではない。「過激派」のレッテルを貼り「頭のおかしい人間たちだから話を聞くな」と大人が彼らの声を無視すれば、それこそもっと過激に走っていくかもしれないと非常に心配になった。(ライター:okei)
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