複数の仕事を同時に進めることは、忙しい人にはよくあること。しかし、そのような仕事の仕方=「マルチタスク」は脳によくない、という研究結果があるようです。
米Entrepreneurの記事に、「シングルタスク」の著者デヴォラ・ザック氏の意見が紹介されています。ザック氏いわく、そもそも「脳は同時に2つのことを考えることができない」のだそうです。
「みなさんがマルチタスクと呼んでいるものは、神経科学者の言うところのタスク・スイッチングです。(2つを同時に考えているのではなく)複数のタスクを短時間で行き来しているのです」
タスクの切り替えは「脳を収縮させてしまう」
彼女は、タスク・スイッチングは生産性を4割低下させるだけでなく、脳が収縮する原因になると指摘します。タスクを切り替えようとすると「脳がオーバーロードし、大脳皮質が収縮する」といいます。
一方でシングルタスクだと、脳が自然な状態で働きます。「自然」とは、頭と身体をひとところに置き、ひとつのことに集中できている状態。例えば会議に出ているとき、「会議が終わったらあれをやらなければ」と考えてしまうのではなく、頭も身体もその場に集中することを指しています。
気を散らすことなくひとつのことに集中すれば、効率が上がるのは確かですし、タスクの切り替えで脳を収縮させてしまうのであれば、シングルタスクにするに越したことはありません。シングルタスクを実現する方法として、記事では以下が挙げられていました。
1つめの方法は、他のことに邪魔されないよう「フェンスを立てる」こと。何か別に気になることが生まれてしまうと、ひとつのことに集中するのは難しくなるからです。
例えば電話会議でスクリーンを見ている時に、メールの受信を知らせるポップアップが出たら気になって見てしまいます。それを避けるため、電話会議の際にはポップアップ機能をオフにするなど、邪魔されないような対策をあらかじめしておくことです。
ひとりになって考えをまとめる時間は重要
2つめは「タスクをまとめる」こと。これは特にメールに有効な方法です。どんどん入ってくるメールのせいで一日があっという間に過ぎ去ったという経験はあるのでは。メールに関するタスクをまとめ、受信箱を見る回数を(例えば朝、昼、退社前の1日3回に)限定することです。
3つめは「思い浮かぶことをコントロールする」こと。業務中に他のことが思い浮かぶのは、誰にでもあることです。シングルタスクだからといって、思い浮かばないようにするのではありません。ちょっと横において置けるようするために、付箋に書き留めて、今のタスクにすぐ戻りましょう。
4つめは「振り返りの時間を作り出す」こと。ハーバードビジネススクールの研究によると、毎日最低15分の振り返りをした人は生産性が平均23%上昇したそうです。いつも忙しく考えてオーバーロードしている脳を休ませるために、ひとりになって考えをまとめる時間が有効です。
これらは仕事ができる人であれば、すでにやっていることでしょう。このように簡単そうでいて徹底するのは難しい小さな取り組みの積み重ねが、仕事の質に違いを生み出すのかもしれません。(文:遠藤由香里)
(参照)Forget Multitasking. Real Productivity Comes From Singletasking.(Entrepreneur)
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