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Kis-My-Ft2、結成10周年で訪れた勝負の時 異例のジャニーズはどう攻める?

2015年07月12日 08:11  リアルサウンド

リアルサウンド

 Kis-My-Ft2の4枚目のアルバム『KIS-MY-WORLD』は、デビュー4周年の軌跡と今を、音楽と映像で収めたトータル性の高い作品に仕上がった。ヒットシングル・タイアップ曲に加えて、新曲も数多く収録している。


 まるで舞台のオープニングのような雰囲気で、聴く人をキスマイワールドへいざなってくれる「Overture」で幕を開ける本作は、MVでは2年5ヶ月ぶりとなるローラスケートを披露した新曲「Brand New World」へと続く。これぞ、クールなキスマイという王道サウンドで、コンサートで盛り上がるイメージをふくらませるファンも多いことだろう。


参考:キスマイ『KIS-MY-WORLD』初動セールス30万枚突破! 王道的な内容で自己最多記録を更新


 そして「Kiss魂」、「Another Future」などのシングル曲が続き、前作からの約1年の衰えることのない勢いを振り返ることができるのだ。そして攻めの1曲「FOLLOW」や、甘いバラード「君にあえるから」、「if」と、キスマイの表現力に磨きがかかっていることも実感できるラインナップへと繋がっていく。


 また、注目すべきは計4組のメンバーユニット曲。親友同士の藤ヶ谷太輔×横尾渉は「わんダフォー」を子どもたちと一緒に歌っている。手をつないでマイクに向かうメイキング映像にも癒やされる。面倒見が良くメンバーから「キスマイの母」と言われる横尾がお母さん、そしてやさしく見守る藤ヶ谷がお父さんにも見える微笑ましさが魅力だ。


 ツンデレ仲良しコンビの玉森裕太×宮田俊哉が歌うのは「BE LOVE」。爽やかな恋愛ソングかと思いきや、タイトルを“BL”と略すユーモアも隠れており、マイペースな玉森とほのぼのとした宮田の友愛ソングにほっこりする。


 末っ子&イタズラっ子ペアの千賀健永×二階堂高嗣は、日頃“舞祭組”として活動している3枚目キャラ返上のキメキメな1曲「Double Up」を披露。千賀の耳馴染みの良い歌声に二階堂の力強いラップが華を添えた。


 そして、キスマイの絶対的シンメといえば北山宏光×藤ヶ谷。歌唱力が試されるスローテンポのバラード「証」を、しっとりと歌い上げる。安定した世界観に「この二人の声を聞かないと終われない」という気持ちにさせてくれる。


 約1年前に発売されたアルバム『Kis-My-Journey』では、まだメンバー間の格差は大きく、北山、藤ヶ谷、玉森のソロ曲と、北山×藤ヶ谷コンビの楽曲はあるものの、後列4人による“舞祭組”の楽曲はたった1曲のみだった。しかし今回のアルバムでは、全メンバーそれぞれのキャラクターが立つようにユニット曲が用意されていて、この1年で舞祭組メンバーがどれだけ躍進したかが伺える。前列の3人だけにスポットを当てるのではなく、全員が個性を発揮して高め合っていくのが、いまの彼らのスタンスなのだろう。


 さらに、LIVE CD(初回生産限定盤A)やRemix CD(初回生産限定盤B)も初収録されており、映像でも新曲MVのマルチアングル映像、メイキング、振り付け講座、ドキュメント企画、トーク企画、そして4月に行なわれたリリースイベントのダイジェストなど、まさにいまのキスマイを、これでもかと詰め込んだような作品に仕上がっている。


 今年の夏はデビュー4周年であり、結成10周年という記念すべきタイミング。「ローラスケートができる」という基準で集められたメンバー。実際に滑れるということが重要なのではなく「できるか?」と聞かれたときに「できる」と答えられるところが大切だったのだろう。ジャニーズでチャンスを掴むというのはそういうことだと、インタビューで語る彼らの思い出話から伺える。そこから「なんでもできる」というイメージが定着したのかもしれない。


 デビュー直後からせんべいを1000枚食べきったり、10mの飛び込み台に挑戦させられたりと、体を張ったサバイバル企画にも「できます」とトライしてきた。また、ブサイクさを検証されるレギュラー番組『キスマイBUSAIKU!?』で人気が急上昇。恋愛観や美意識などをあえて徹底的に叩かせることで、親しみを持たれるようになった。そこから、新たなユニット『舞祭組』も誕生し、グループ内格差を逆手にとった面白さという新境地も開拓。キスマイの歴史は、ジャニーズとしてはあまりにも異例な動きだった。


 今作の先行CMでは「そろそろ、攻めてもいいですか?」というコピーが添えられていたが、舞祭組メンバーもそれぞれが人気者となり、グループとしてのスケールが格段に上がったいまは、彼らにとってまさに攻め時なのだろう。舞祭組のプロデュースを手掛けた際にSMAPの中居正広は、そのユニット活動について「絶対にあとからプラスになってグループに返ってくるから!」と豪語していたが、いまがその時なのだ。今後も7人の活躍から目が離せない。(佐藤結衣)