2015年07月10日 19:01 弁護士ドットコム
2020年の東京オリンピックのメイン会場になる「新国立競技場」の総工費を2520億円とする計画が、事業主体の日本スポーツ振興センター(JSC)が開いた有識者会議で了承された。それを受け、作家の森まゆみ氏らが共同代表を務める市民団体「神宮外苑と国立競技場を未来へ手わたす会」は7月10日、インターネット署名サイト「Change.org」で、現在の建設案に抗議する緊急声明を発表した。
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声明では、「1,000兆円の赤字を抱えるわが国で、震災被災者、原発避難者がいまだ20万人も故郷や家を失ってさまよっているこの国で、現行計画に突入すれば、亡国の事業といわざるを得ない」と新国立競技場の建設計画を批判。「国民の代表機関である国会で、有識者会議の各委員を証人喚問し、国民全体の利益に関わるこの問題をどう判断したのか、論議がつくされることを望む」としている。
「神宮外苑と国立競技場を未来へ手わたす会」はChange.orgで、新国立競技場の建設計画の見直しを求める署名活動を行い、これまでに3万7000人の賛同者を集めている。
声明の全文は以下のとおり。
調査によれば、市民の76%が現行のデザインに反対(ダイヤモンド・オンライン)。85パーセントが2,520億円という総工費に納得していない(Yahoo!ニュース)。
日本スポーツ振興センター(JSC)は、さる7月7日、有識者会議をひらき、新国立競技場を現行通り進めることの了承を得た。しかし、有識者会議は単なる諮問委員会であり、結果に責任を持つわけではない。
国際コンクールでザハ案を選んだ建築家の安藤忠雄氏は会議を欠席、日本音楽著作権協会長で作曲家の都倉俊一氏は「屋根がないと外国人アーティストと長期契約が結べない」といい、日本サッカー協会名誉会長の小倉純二氏は、サッカーのW杯招致のためにも「8万人常設は必要」と求め、それぞれが業界のエゴを代表しただけだった。
すでに、1年半以上前から当会は、建設費、維持費、工期、技術的困難、計画決定プロセスの疑惑、環境負荷などの問題を指摘し、見直しを求めてきた。1,000兆円の赤字を抱えるわが国で、震災被災者、原発避難者がいまだ20万人も故郷や家を失ってさまよっているこの国で、現行計画に突入すれば、亡国の事業といわざるを得ない。そして、私たちは、神宮外苑というかけがえのない緑地と景観を失う。このままでは、2020年の東京オリンピックは、多くの市民の支持を得られないだろう。
文部科学省、JSC、有識者たちは、現行計画が「国際公約」だというが、国際オリンピック委員会(IOC)は「変更できる」という。IOCのアジェンダ(行動計画)にそった持続可能な社会を世界に示すことこそが、国際公約である。1年のうち50日間しか使うことができず、年間40億円の維持費と1,000億円以上の大規模改修費が発生するホワイト・エレファント(無用の長物)の出現は、次世代のためにも避けなければならない。
36,000人の賛同者の名において、私たちは、このおろかな計画を承認しない。
都税による500億円の負担、都有地の供出、都営霞ヶ丘アパートの住民の追い出しも認めない。
有識者会議は国民を代表していない。
私たちは国民の代表機関である国会で、有識者会議の各委員を証人喚問し、国民全体の利益に関わるこの問題をどう判断したのか、論議がつくされることを望む。
2015年7月9日
神宮外苑と国立競技場を未来へ手わたす会
(弁護士ドットコムニュース)